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『WAVES/ウェイブス』『透明人間』映画星取り【7月号映画コラム②】

まだまだ不安の尽きない今だからこそ心温まりたい、だけど初夏なので寒気も味わいたい。そんな矛盾を両立すべく、今回は青春映画とサイコホラーを取り上げます。
(星の数は0~5で、☆☆☆☆☆~★★★★★で表記)

<今回の評者>

渡辺麻紀(映画ライター)
わたなべ・まき●大分県出身。映画ライター。雑誌やWEB、アプリ等でインタビューやレビューを掲載。押井守監督による『誰も語らなかったジブリを語ろう』『シネマの神は細部に宿る』『人生のツボ』等のインタビュー&執筆を担当した。
近況:最近のお気に入りはウィル・フェレルのNetflix映画『ユーロビジョン歌合戦』! 笑わせて頂きました。
折田千鶴子(映画ライター)
おりた・ちづこ●栃木県生まれ。映画ライター、映画評論家。「TV Bros.」のほか、雑誌、ウェブ、映画パンフレットなどで映画レビュー、インタビュー記事、コラムを執筆。TV Bros.とは全くテイストの違う女性誌LEEのWeb版で「折田千鶴子のカルチャーナビ・アネックス」(https://lee.hpplus.jp/feature/193)を不定期連載中。
近況:ぼちぼち対面取材も復活しつつありますが、合同取材は全然Zoomでいいと思います! むしろまだZoom形式も新鮮だし。
森直人(映画ライター)
もり・なおと●和歌山県生まれ。映画ライター、映画評論家。各種雑誌などで映画コラム、インタビュー記事を執筆。YouTubeチャンネルで配信中の、映画ファンと映画製作者による、映画ファンと映画製作者のための映画トーク番組『活弁シネマ倶楽部』ではMCを担当。
近況:7/10公開『銃2020』の劇場パンフレットに作品評を寄稿しております。

『WAVES/ウェイブス』

メイン

監督・脚本/トレイ・エドワード・シュルツ 出演/ケルヴィン・ハリソン・Jr テイラー・ラッセル スターリング・K・ブラウン レネー・エリス・ゴールズベリー ルーカス・ヘッジズ アレクサ・デミーほか
(2019年/アメリカ/135分)

●米フロリダで暮らす高校生のタイラーは成績優秀でレスリングのスター選手で恋人もおり、何不自由ない日々を送っていたが、怪我をしてレスリングの試合に出場できなくなり、恋人の妊娠も発覚し、状況は一変。自分を見失ったタイラーにさらなる悲劇が訪れる。普遍的なテーマを描く青春映画。

7月10日(金)より TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.
配給:ファントム・フィルム

渡辺麻紀
体力勝負の青春映画。
監督は、まず製作当時の最先端の音楽を選び、それから青春映画的ストーリーを考えたというくらいだから、両者が深く結びついているのは当然。音楽が大音量で迫るのも当たり前。さらに、これは映画なので、そこに映像をからませ、最新かつフレッシュな映画の三位一体を実現しようとした、というところだろう。ミュージックビデオ的なノリが強いにもかかわらず、この物語は二部構成で上映時間は135分。もちろんその間、大音量の音楽が襲い掛かってくる。感性のみならず、体力も試される映画ですね。
★★★☆☆

折田千鶴子
兄妹の波乱の人生・二部作
前編の兄の物語は、愛され優等生の二面性を追う『ルース・エドガー』を途中で思い浮かべたが、真逆の道行きに!! 音楽に乗ったカメラに導かれるがごとく青年の人生がリズミカルに転がっていく。その衝撃の結末に胸かきむしられる! 衝撃を引きずったまま一転、人生を狂わされた妹の物語は、展開スピードもリズムも見事に変調、再生への道と心の変遷を探るラブストーリー。前篇を包み込むような、その味わい、後味は意外に深い。
★★★★☆

森直人
いろんな意味で若さゆえ
人気プロダクション「A24」お抱え(?)で注目の若手シュルツ監督。画面サイズが「波状」に変化したり、二部構成のプレイリスト・ミュージカル的な作風は元気いっぱい。ただいかにもコンセプト先行のきらいがあり、途中で枠組みが見えちゃうかなあと。最注目は主演(お兄ちゃん役)のケルヴィン・ハリソン・ジュニア。傑作『ルース・エドガー』の仮面優等生とは真逆に、怒りを全くコントロールできない単細胞男子を爆演。まさに天下取る役者!
★★★☆☆


『透明人間』

S-透明人間:メイン

監督・脚本/リー・ワネル 出演/エリザベス・モス オルディス・ホッジ オリヴァー・ジャクソン=コーエンほか
(2020年/アメリカ/122分)

●富豪の科学者エイドリアンの束縛から逃れるため、セシリアは逃亡を図る。セシリアの逃亡を嘆くエイドリアンは自殺してしまうが、その後、セシリアの周辺では不可解な出来事が起こり始める。セシリアはエイドリアンの死に疑問を持つが…。『ソウ』シリーズの脚本リー・ワネルが監督・脚本を務める、透明人間の恐怖を描くサイコスリラー。

7月10日(金)全国公開
© 2020 Universal Pictures
配給:東宝東和

渡辺麻紀
お見事な新生ホラー映画。
ユニバーサルホラーの主人公はモンスターと相場が決まっていたが、監督&脚本のリー・ワネルは視点を変えて襲われる女性のほうに軸足を置いた。たったそれだけで映画は驚くほど現代的になり、モンスターという存在にも新しい解釈を施すことになった。さらに、透明人間になる方法にも秀逸なアイデアを投入したことで恐怖や物語の幅も拡がっている。それぞれのアプローチは誰もが思いつきそうなくらいなのに、ふたつを合わせることで驚くほど斬新なホラーになっているのだ。ちゃんと怖いしね!
★★★★☆

折田千鶴子
サイコな透明人間に肝冷々
ひゃ~、怖い怖いっ!! 数ある“透明人間モノ”の中でも肝ヒエ度No.1。サイコな天才科学者のそ奴から逃げ回るヒロインの恐怖がまんま伝播してくるのも、無理ない物語運びと予想を斜め上いく展開の妙、艶やかな映像、全キャラの造形など、現代的な新鮮さも載せ込み、すべて最良・最適だから。透明人間が部分的に“見える”瞬間や存在の感じさせ方も、ホント上手い。相変わらずJ・ブラム率いるブラムハウス、いい仕事をしてるな~。
★★★★☆

前回の星取り映画はこちら

今回の選者のほかのコラムはこちら

『WAVES/ウェイブス』の楽曲に関してはこちら!

7月号の記事はこちら!


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