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【2023年8月号 大森靖子 連載】『大森靖子の超一方的完全勝利』

 ピースポーズのためだけにオリンピックに出たり出したりして何事もなく平和かのような顔をする国、ひどいことをしてもひどいことをしていると感じない集団麻痺、そんなふうに自分の正当性を主張するために平気で嘘をつく人はどの時代にも居て、一見なんの意味もないかのように見える挙動が全て「私は悪くない」と自己すら洗脳するための一手だったりするそのストーリーにおける悪役であったり、迫害対象にされてしまったりした場合はたまったもんじゃない。

 フィクションだとしたら意図が読み取れなすぎてクソ面白くないような、信じられないことが現実では起こる。その最たるものが占領だったり戦争だったりするわけだけど、その種はそこらじゅうに転がっている。全ての怒りや攻撃は過去の傷に起因するものだとしても、それをどこでどう咲かせるかは自分次第。強さとは弱さで、自分の弱み、呪いや特定の人物に認められたい気持ち、貧弱な自分を守るために生きる技術、職、面、愛嬌、お得意なものを身につけて成長した振りをしていく。結局、器の脆さが変わることなどない。生まれ持った脆さを補強するだけの知識を得ていくだけだ。それが悪知恵だとしたら。手段を選ばないとしたら。人を人だと思わずに誰かを奴隷にしている誰かは、何らかの思想に侵された本当の意味で脳が奴隷になっている人間かもしれない。

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