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【5日連続!佐野元春40周年記念特集】 DAY2:音楽シーンに新鮮な驚きを与えた1980年のメジャー・デビュー

 今年、デビュー40周年を迎え、タワーレコード「NO MUSIC , NO LIFE」のポスターに登場するなど、何かと話題の佐野元春。10月7日には40年のキャリアをまとめたベスト・アルバム『佐野元春グレイテスト・ソング・コレクション 1980ー2004』と『ジ・エッセンシャル・トラックス 佐野元春&ザ・コヨーテバンド 2005ー2020』がリリースされる。そこでTV Bros. note版では「佐野元春ウィーク」と題して5日連続で佐野元春のインタビューを配信する大特集を組むことになった。

【佐野元春40周年記念 ベスト盤2パッケージ 2020年10月7日 同時発売】

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2日目の今日からは9月下旬に行なった新規インタビューを4回に分けてお届けする。まずはデビュー当時のことから!

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ーー40周年を迎えて、ある種の感慨があるかと思いますが。

「40年間、楽しかったですよ(笑)」

ーーそのベスト盤をコンパイルするにあたって、考えたことがあると思います。ミックス違いやニュー・ミックス、そして新曲も1曲入っている。

「再ミックスや再編集を含めて全曲新しくマスタリングした。エンジニアはテッド・ジャンセン。すごくいい仕上がりになった。古いファンも新しいファンも楽しんでもらえると思う」

ーー選曲の基準を聞かせていただけますか? 僕は、古い曲であっても今の時代に響く曲がたくさんあるなと感じたんですが。

「どの曲も古く感じない。逆に今の方がすんなり聴ける曲もあるよ」

魂が舞い上がるような曲がなかった。
だったら自分で作ろう。そう思った

ーー40周年ということで、ちょっと昔のことも聞かせていただければと思います。まずデビュー時のことから。1980年3月にシングル「アンジェリーナ」、4月にアルバム『BACK TO THE STREET』でデビューしたわけですが、どんな野心を持って日本の音楽シーンに飛び込んでいったのでしょうか。

「十代の頃は70年代の日本のポップ/ロックを聴いていた。はっぴいえんどやムーンライダーズ、オレンジ・カウンティ・ブラザーズ、そして高田渡や岡林信康……。聴くのは楽しかったけれど日本語のポップ/ロック曲でこれは凄い!と魂が舞い上がるような曲がなかった。だったら自分で作ろう。そう思った」

ーーとても大きな野心ですね。

「特にリリック。歌い方も含めてビートを感じる曲があまりなかった。自分だったらこうやるよ、そう思って作ったのが『アンジェリーナ』、『ダウンタウンボーイ』、『スターダストキッズ』」

ーーなるほど。1stアルバム『BACK TO THE STREET』から82年の3rdアルバム『SOMEDAY』までの3枚のアルバムは、初期の、なんというか……。

「3部作だね」

ーーあ、佐野さん自身にも3部作という認識がある?

「3部作と言っていいと思う。『BACK TO THE STREET』、『Heart Beat』、『SOMEDAY』。この3枚のアルバムは、60年代、70年代のポップ/ロック音楽をフォーマットにして、そこに新しい日本語を載せた、そういうスタイルだった」

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“サムデイ=いつかきっと”なんて永遠に来ないよ。
そんな若干シニカルな思いもあった

ーー当時、「アンジェリーナ」の疾走感にガツンとやられたことを思い出します。

「あぁ、ありがとう。でも、正直に言うと、『アンジェリーナ』はヒットしなかった。当時のチャート音楽と聴き比べるとわかる。全然違うんだ。でも、がっかりしていなかった。なぜならコンサートツアーはどの会場も新しい世代の少年少女たちが聴きに来てくれて満員だったから。レコードは売れてないけど、ライヴがこんなに盛況ならきっと大丈夫だろうと思っていた」

ーーライヴの盛況ぶり、観客の熱狂が「サムデイ」のヒットに繋がっていったんだと思いますが、当時この曲に込めた思いはどのようなものだったんでしょうか。

「僕は都会育ちなので、ちょっとシニカルなところがある。“いつかきっと”と歌っているものの、“サムデイ=いつかきっと”なんて永遠に来ないよ”という若干シニカルな思いもあった。曲を書いた時はね」

ーーただ前向きに“いつかきっと”と歌う、単純な希望の歌ではない、ということなんだと思うんです。佐野さんや僕の世代は、上の世代の人たちが社会を変えようと闘って敗れ去り、転向していったのを見てるわけですから、どこかシニカルになってしまう。

「その辺のことは『ガラスのジェネレーション』で唄っている。“ガラスのジェネレーション さよならリヴォリューション"というラインで始まるパワー・ポップだ。大人たちはリヴォリューションと言ったけど、外に求めたってリヴォリューションなんて起きないよ。リヴォリューションは自分の内側に求めるもの。曲を書いた時はそんなことを思っていた。つまりちょっとした反抗心だ」

ーーまさにロック的態度、でしょうか。

「自分で“ロック的だ”と言うつもりはないけど、十代の多感な頃に聴いて、いいなと思ったロック音楽にはそういう意識が息づいていたからね。映画で言えばヌーヴェルヴァーグの映画にも同じものを感じていた」

ーーそういう意識をゴキゲンなポップ/ロックとして表現する。

「そういうことですね」


 シングル・ヒットこそしなかったものの、「サムデイ」はじわじわと支持を広げ、アンセムとなっていく。そして、約1年後に発表した3rdアルバム『SOMEDAY』がチャート4位のヒットを記録。続いてリリースしたコンピレーション・アルバム『No Damage』が初の1位に輝き、佐野元春はついにブレイクを果たした。しかし、アルバム発表に伴うツアーを終えた後、佐野元春はニューヨークへと旅立つのだった。

<DAY2 了>

佐野元春(さの・もとはる)プロフィール
1956年、東京生まれ。1980年、レコーディング・アーティストとして始動。83~84年のニューヨーク生活を経た後、DJ、雑誌編集など多岐にわたる表現活動を展開、1992年、アルバム『スウィート16』で日本レコード大賞アルバム部門を受賞。2004年に独立レーベル「DaisyMusic」を始動し現在に至る。代表作品に『サムデイ』(1982)、『ビジターズ』(1984)、『スウィート16』(1992)、『フルーツ』(1996)、『ザ・サン』(2004)、『コヨーテ』(2007)、『ZOOEY』(2013)、 『Blood Moon』(2015) 、『MANIJU』(2017) がある。

※明日配信の第3回は『SOMEDAY』『No Damage』発表後、ニューヨークへと旅立った話題からスタート!

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