世界のアニメーターが結集!Netflix初のオリジナルアニメシリーズ『エデン』入江泰浩監督インタビュー
遥か未来の物語。その地球は緑があふれる美しいに星になっていた。しかし、そんな自然の世話をするのは人間ではなくロボットたち。人間はとうに滅びていたはずだったのだが、ある日突然、古びたカプセルのなかから女の子の赤ちゃんが現れる……。
というわけで、アニメに力を入れている日本のNetflixがゼロから立ち上げた、初の完全新作が『エデン』。集まったクリエイターは日本人に留まらず世界各国の人々。そして、彼らをまとめ上げた監督は『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』で知られる入江泰浩。今回は、その入江監督の声をお届けします!
取材・文/渡辺麻紀
<作品情報>
『エデン』
●ロボットだけが暮らす世界「エデン」で農業用ロボットとして働くE92とA37は、人間の赤ちゃん・サラが入ったカプセルを発見し、目覚めさせてしまう。人間を悪と考える世界でサラの身の安全を危ぶんだ2体は、サラを匿ってひそかに育てていく。家族のような絆のもとで成長したサラは、ある日、ロボットしかいないはずの世界で、自分を呼ぶ声に気づく。
監督/入江泰浩 キャラクターデザイン/川元利浩 脚本/うえのきみこ コンセプトデザイン/クリストフ・フェレラ アートディレクター/クローバー・シェ 音楽/ケビン・ペンキン プロデューサー・原案/ジャスティン・リーチ アニメーション制作/Qubic Pictures, CGCG
キャスト サラ/高野麻里佳 E92/伊藤健太郎 A37/氷上恭子 S566/新垣樽助 ゼロ/山寺宏一 チューリヒ/桑原由気 ジュネーブ/甲斐田裕子
Netflixオリジナルアニメシリーズ、5/27(木)より全世界独占配信
<プロフィール>
入江泰浩(いりえ・やすひろ)●1971年生まれ。監督・脚本・演出・アニメーター。多数の作品で作画監督、原画などを担当。監督作としてテレビアニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(2009~2010年)、『CØDE:BREAKER』(2012年、脚本・シリーズ構成)などがある。
膨大なアイデアが詰め込まれた原案者のテキストに惹かれた
――Netflix初の完全新作にどういう経緯で参加されたのでしょうか?
本作の共同プロデューサー、長谷川(博美)さんに、「こういう作品があるけど、興味ないか」と聞かれたのが最初でした。彼は、プロデューサーであり原案のジャスティン(・リーチ)に「誰かいい人がいないか」と尋ねられたとき、僕の名前を挙げてくれたんです。長谷川さんとは旧知の仲でもありました。
――本作のどういう部分に惹かれたんですか?
一番はやはり、いままでやったことのないジャンルだったからですね。ジャスティンの書いたテキストには世界観を始め、そのなかでどういう出来事が起こり、どういう歴史が流れているのかという膨大なアイデアが詰め込まれていた。これがとても面白かったんです。さらに、ビジュアルイメージや、こういうロボットを出したいというアイデア等をジャスティンに聞いて、ますます制作意欲がわいたんです。
――あなた自身のアイデアはどういう部分に活きていますか?
ジャスティンの最初のアイデアはロボット社会を描いたものでした。SF的要素がより大きかったんです。今回のヒロインである女の子、サラも登場して事件に巻き込まれはするんだけど、やはりメインはロボット。何百年もかけて作られたロボットの世界やルールが書き込まれていたんです。
僕は25分の作品を4本作るということを念頭に置いたとき、サラを主人公にして、彼女の成長を描いたほうがいいと考え、そっちのほうを膨らませることにしました。そういうことはみんな、ジャスティンと話し合うなかで固めて行ったんです。
――今回のキャラクターデザインは『鋼の錬金術師』でも組んでいらっしゃる川元利浩さんですね。
川元さんとはOVAの『おいら宇宙の炭鉱夫』(1994年)で組んだのが最初で『カウボーイビバップ』(1998年)でもやっています。でも、僕のほうから頼んだのではなく、ジャスティンが彼に頼んだんです。これは嬉しい偶然でした。そういう仲だったのでコミュニケーションはスムーズだったし、とてもやりやすかったです。川元さんはサラのキャラクターデザインのアイデアを9案も出してくれたんです。
――海外とのコラボレーションはいかがでしたか?
アニメーションの制作は台湾のCGCGというところにお願いしたんですが、アニメーターたちがとても優秀でした。3D-CGで手付けアニメーション(キーフレームアニメーション)を作るんだけど、みんなとてもスペックが高い。たとえば出来上がった1話の段階で何か注文を出すと、2話ですでにクリアされているんです。一度言えば、次はもうそれが前提となった状態で作業してくれる。システムとしても技術力としても大変優れているという印象でした。
日本のアニメ制作はマンパワーに頼りすぎなところがある
――Netflixと組むのは初めてですが、いかがでしたか?
よかったのは台湾のCGCGとのやりとりを円滑に進めてくれたこと。このスタジオは就労時間が決まっていて、朝は何時からで夜は何時まで、それがきっちりしているんです。こちらが何か要望を出したときも、いつまでなら出来るけど、その期間では無理という風に明確にリアクションを返してくる。だからこちらも、それを踏まえてスケジュールや内容の調整を考えられました。そういうキャッチボールが出来たのがよかったですね。
――ということは、日本ではそれがあまり出来ない?
日本はマンパワーに頼りすぎなところがあると思います。そういう意味でも今回のコラボレーションは、ひとつの理想的なかたちだったと言ってもいいかもしれない。もちろん、これが万能だとは思っていませんが、ひとつのシステムの進め方を学べたので、とても勉強になりましたね。
入江泰浩監督のインタビューは、今夏発売の雑誌「TV Bros.」でも! 『エデン』の魅力のさらなる深奥に迫ります。
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