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int10.「テレビ局への警告。作家は湧いて出てこない」構成作家 飯塚大悟さん


今回お話を伺ったのは構成作家の飯塚さん。
学生時代、エンドロールに流れてくる放送作家や制作会社をリストにまとめ片っぱしから調べ上げてたんですが、どこにでも名前が載っており「何者…」と思っていたのが飯塚さんです。
そんな方に会うことになりおどおどしながら迎えたインタビューです。

・・・・・を実行したのは昨年6月。遅くなりすみません…

構成作家 飯塚大悟さん
📺博士ちゃん、水曜日のダウンタウン、家事ヤロウ、ぐるナイ、THE夜会、クレイジージャーニー、ヒルナンデス、ゼロイチ、帰れマンデー、10万円で、ニノさん、トークィーンズ、イキスギさん、マヂクリ、ヤギと大悟、たりないふたり他… 📻オードリーANN


■「放送(構成)作家」って何者?

ーー今回なぜDMをくれたんですか?
特に深い意味は全然ないです。
いっぱいあるじゃないですか、テレビ業界人の匿名のアカウント。どういう人がやってるのか突き止めてみたくて。

ーー(笑)そこはちょっと聞きたかったです。自分の名前出してやっている人から見たらどういう印象なんだろうって
愚痴を吐いてストレス発散してる人とか、業界裏話を書いて承認欲求を得たいためにやってる人とか。いろいろいる中でまともだなと思って。偉そうにすみません。

ーー裏話で言うと「おまけの夜」で”手の内は見せないようにしてる”みたいなことをおっしゃっていました。そういう美学みたいなものがあるんですか?


例えば「この企画俺が考えたんだよ」「このコーナー俺が考えた」みたいな手柄を必要以上に主張するのは違うんじゃないかなと思いますけどね

ーーそんな中でなぜSNSとかYouTubeとか、表に出ようと思ったんですか?
たまたまそういう話があっただけで、基本的に断ったことはないですね。断るのもかっこつけてるみたいな。せっかく声をかけてもらったのに。

例えば僕の奥さんが自分の友達に「旦那が放送作家だ」っていうと、「鈴木おさむさんみたいな仕事?」って言われるみたいなんですよ。
っていうことは、鈴木おさむさんがいなかったら、何も知られていない職業だろうなと思って。社会的な認識にすごく貢献してくれてる存在で。
訳分かんない仕事、気持ち悪い仕事と思われてるかもしれないところを、世に出てる人がいるから、自分も恩恵を受けてる。
誰かが出なきゃいけないかなと思うんですけどね、見えない仕事だから。

あとはそういう人がいないと新しく「やろう」っていう人が出てこないじゃないですか?
裏方で誰も世に出てなくて、どういう仕事か、どんな人がやってるかも全くわからないのに「なろう」としないと思って。
僕に憧れて作家になる人はいないと思うんですけど、それでも何かちょっとでも足しになるんだったらやったほうがいいなって。
ただでさえテレビの作家になりたい人って少ないと思うし

私も就職前は「放送作家ってなに?」「企画を考える?台本を書く?それディレクターの仕事じゃないの?」「台本書いてるなら放送作家の人がロケすれば良いのでは?」「役割なにが違うの?」と思っており仕事の全貌を全く知りませんでした。
就職後もしばらくは「作家さんが画見えてるならそのままロケすればいいのに…」と思うことも。

今となってはとんでもない考え方だなと身震いしますが(笑)
一般的にはそのぐらい「何者か」分からない存在だと私は思っています。


■仕事の息抜きで別の仕事をし、インプットの循環

ーーすっごい仕事量ですけど、どういうスケジュールなんですか?毎日番宣するものがあるってすごいなと思って
やっている感じ出してますよね?(笑)
でも僕よりやってる人もいっぱいいるので、僕がどうのこうのとかいうレベルじゃないかなと思うんですけど。

ーー何本くらい?
レギュラーだと13本くらいだと思うんですけど、特番とかもあったりするんで、大体30個ぐらい同時にやってますね

ーーすごい…脳どうなってるんですか?!
Aの仕事の息抜きにBの仕事をやって、Cの仕事の情報のインプットのためにBの仕事をやって…みたいな。
だいぶそこで循環するようになってます。いろんな仕事をやれば、循環していくのでいいなと。その代わりそれ以外何もやらないっていう。インプットとかほぼしてないですよ。

ーー作家仲間とかで集まって話し合うこととかあるんですか?
コロナ前は年に1回、新年会みたいなのやってて。
同世代の人20人くらい集めてやってたりとかしますね。大体そんな実りある話はしてない(笑)

ーー作家って横のつながりが作りにくいみたいな話を聞くんですけど、実際どうなんですか?
例えば1個の番組だけやってると難しいですよね。積極的に作りにいこうとしないと、横のつながりは難しいかもしれない。

ーー新人時代から今に至るまで、声を掛けられて仕事をもらうことが多いんですか?営業みたいなことはしてましたか?
例えば一緒に仕事したい人がいたら、その人がやった特番とか見たら、「あの番組面白かったですね」とか送ったりします。
そういう機会があると、「企画書を出しましょうよ」みたいなやり取りになることがあるっちゃありますね

ーー今気になってる作家さんはいるんですか?
自分とは違う領域でやっててすごいなと思うのは、竹村武司さん。
ギャラクシー賞取りまくってる人なんですけど。山田孝之さんとか、最近の話題の作品をいっぱいやってる。見た目もかっこいいし、自分にないものをいっぱい持ってんだろうなって

ーー逆に飯塚さんにあるものって何ですか?
何だろうなぁ…分析好きだから「分析をすること」は好きかもしれないですね。
「なんでこれが何でヒットしているのか」「何でダメだったのか」みたいなことを、漠然とさせないで言語化してそれっぽく言うという。
みんなやってると思いますけどね、作家ってそういう仕事でもありますから。

ーーそこが強みなんですね
強みなのかなぁ。いろいろやっているというのもありますけどね。
強みでも何でもないですけど、あんまりいないと思うんですよ。
ヒルナンデスから水曜日のダウンタウンから、オールナイトニッポンまでやってる人が。だから何でもそれなりにできると思います。
でも苦手なジャンルもありますよ、恋愛とかスポーツとか。スポーツ捨ててるんで。

ーーでも分からないなりにやられてるわけじゃないですか。それはどういう工夫なんですか?
全然してないです。テレビの知識だけだと思います。他の番組でやった知識とかが入ってるんでしょうね。自分の実体験は何もないです。

情報番組、バラエティ、ラジオ……多種多様な仕事をしている飯塚さん。
「実体験ではなくテレビで学んだ知識」でこのボリュームの仕事に向き合ってることに驚きました。(と言ってもその”テレビ”の経験値がハンパないわけですが)
「苦手なジャンル」があることも驚きましたが、その1つ「恋愛」に関して、個人的に気になっていたことも伺いました。

ーーあまり家族のこととかお話されないですよね
聞かれないから。言わないわけじゃないですよ。僕の方が2歳上で。落研で一緒でした。
結婚して10年目で子供は3歳と5歳です。

ーー奥さんとはどこで出会ったんですか?
大学生の時からずっとなんですよ。だから最初に付き合ったのが奥さんなのでそのまま。
恋愛番組とか恋愛観とか語る番組を担当することもあるけど、色んな恋愛をしてきてないので何にも分からない。何もわからないままやっている。

ーー仕事の話とかするんですか?
しますよ。基本的には報告ですかね。こういう仕事来たよとか、この番組終わるよとか(笑)



■就活生必見!学生時代にしておいた方がいいこと

ーー「学生時代何をしたらいい?」みたいな質問が来たことあると思うんですが、何て答えてますか?
最近思うのは、リアルタイムで経験できることはちゃんとしておいたほうがよかったなと思いましたね

ーーめちゃくちゃわかります…
例えばそれは、僕がやってないことでいうと恋愛とか友達作って遊ぶとか。
斜に構えてやらないことってあるじゃないですか。やりたかったけど、あえてやらなかったこととか。
例えば当時流行っていた映画とか、あとから見ても”その時の感じ”って追体験できないじゃないですか。だからなるべくリアルタイムで、その時流行っているものは一応見るとか。
僕は学生時代に昔の漫画とかが好きで、そればっかり読んでたんですよ。
でもやっぱり、一番盛り上がってる空気の中、毎週追いかける楽しみとかそういうのを味わっといた方が良かったなって。

高校生でいうと部活とか恋愛とか全くしていなかったし、高校3年間ほんとに何の思い出もないんですけど、逆にいえばそういう人生経験が人より全然ない自分でも作家をやれてるから「なんもなくてもなれる」とは言えますけどね。
その代わり、テレビとかはめちゃくちゃ見ていた気がします。

でも本は全然読んでないです。本読むのが苦手で・・・とかいうと大人だから恥ずかしいけど(笑)

ーー人生経験が少ない事と仕事の振り幅が、全く比例してないですね!?
だから、アーティストには絶対なれないと思って。
作詞とか脚本家とか、自分の内なるもの。経験を作品に落とすとか。そういう能力はないと思います。
その代わり、誰かの人生を、整理させてもらうとか。そういう仕事ですよね、どっちかというと。それはできるんじゃないかなと思いますけどね。ある程度は見よう見まねで


■テレビ局への警告。『テレビの』放送作家は湧いて出てこない

ーー「放送放送作家になりたい人のために何かやりたい」とおっしゃってました

テレビ局って勝手に新しい若い放送作家志望のやつが湧いて出てくると思っていると思うんですよ。
今まではテレビをやりたい人が多かったから、優秀な人を獲得しようっていうことを何もやってないんですよ。
テレビ業界にいい人材を、作家を入れようっていう動きを誰もしていない。
ちょっと前までは、局の関連会社で放送作家セミナーみたいな学校があったんですけど、今ほとんど終わっちゃって。

本当はテレビ局が必死になって、テレビ業界にいい人材を引き込むことをやらなきゃいけないのに、何もやっていないのがすごく嫌で。
何かできないかなと漠然と思ってるだけです。本当はテレビ局がやればいいのになって。

ーー今まで、そういう人に向けた何かをやったことはあるんですか?
例えばDMで「何でもやるので何か教えてください!」みたいな人が、自分みたいなところにも稀に来るんですけど。
1年くらいネタ出しとかやり取りしてたのに、突然「就職しました」みたいなことが結構あるんですよ。だから結構疲れちゃうっていうね(笑)
一人一人本気で何かしてあげようと思うと、意外と本人はいろいろな選択肢の中の一個でしかないだろうなとか。

ーーそんなことがあったんですね
よく言われるんですよ。テレビ局の人に若手のいい人いない?って。
いないことに気づいてないっていうか。”どこかにいる”と思っていると思います。危機感がないなって

作家志望はいっぱいいると思うんですけど、それは例えばYouTubeをやってたりとか。テレビの放送作家って専門職だと思うので、ある程度テレビを見てないといけないと思うんですよ。
テレビのことを見ていて、テレビの常識もわかっていて、ちゃんとテレビに時間を割いてくれる人を育てないといないだろうなって。

ーー確かにYouTubeとかと作り方違いますもんね。
全然違うと思います。YouTubeだけやってる人は、テレビ番組に入っても勝手が違いすぎて即戦力にはならないだろうなと思いますけどね。



幼い頃からテレビを見てきたからこそ、テレビの与える影響を信じ、そのど真ん中を走る飯塚さん。
だからこそ今の現状に疑問を抱き、危機感を持ち、持つだけでなくどうすればより良いモノを作り続ける環境が整うか明確に言葉にできる。
テレビは一周回って若者にウケる文化になると私は思っているんですが、その担い手になる未来の作家さんたちにとって、より良い体制が出来ればいいなと底辺ながら思いました。

この度はお忙しい中、お時間いただきありがとうございました!