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【詩の森】504 斑模様と思いきや

斑模様と思いきや
 
y=ax
養老孟司さんが
バカの壁のなかで示した一次方程式 ―――
入力xに対する脳の反応yが
人によって異なるのは
係数aが人それぞれ違うからだ
マイナスからプラスに振れる任意の数値a
嫌いなものならマイナス
好きなものならプラス
無関心ならゼロ
さらにこの係数は
その人の現実の重みなのだと
養老さんはいう
深い言葉である
僕らが見ているのは
どうやら斑模様の現実らしい
 
しかし
そうはいっても
僕らが社会生活を営むためには
いわば社会の常識となるような
コモンの係数が
どうしても必要だろう
社会の紐帯としての係数だ
それは
その社会固有の価値観であり
教育によって伝授されるべきもの
ではないだろうか
コロナパンデミックによって
一様に権威を盲信する
従順係数とでもいうべきそのプラスの大きさを
僕らは思い知らされたのでは
ないだろうか
 
それは
このパンデミックを殆どの人が
現実と受け止めたことを意味している
ワクチン接種率からみて
疑いの係数
つまりマイナス側に触れた人は
全体の1/6
凡そ2000万人ほどではなかったろうか
勿論マイナスの係数を持ちながら
同調圧力によって
反転させられた人もいたことだろう
パンデミックは
この国の真の姿をあぶり出した
同調圧力があること自体
自立した個人による民主社会とは
ほど遠いのではあるまいか
 
良い悪いではない
それが僕らの社会の現実なのだ
僕らが
もしほんとうに民主主義に
価値を見いだすのであれば
僕らは自分の係数aを意識的に作りだし
そしてその係数aに全面的に責任を負うべきだ
それが自立するということの
意味ではないだろうか
借り物のaではだめなのだ
かつて会社人間だった僕のように
政治に無関心では大人とはいえないだろう
人々が各自の係数aを意識しつつ
斑模様を自覚して生きること
それこそが民主主義なのではないだろうか
この国は案外金太郎飴だったのである
 
2023.6.12
 
 

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