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【詩の森】524 銀行特権

銀行特権
 
天野統康(もとやす)さんの
[詐欺]経済学原論という本に出会って
僕は最近やっとそのことを知った
他でもない諸悪の根源についてである
こんなことをいうと
大ぼら吹きのように思われるかも知れないが
余り聞きなれない通貨発行権についての話だ
君はお金がどこで
どのように作られるか知っているだろうか
おそらく考えたこともないだろう
そうなんだ とても大事なことを
僕らはすっかり忘れている
いや忘れるように仕向けられていたんだ
僕も詳しく教わったことはないけれど
それでも信用創造という言葉くらいは
君も聞いたことがあるだろう
 
銀行は借り手さえいれば
無からお金を作ることができる
手持ちの預金を貸している訳じゃない
その金額を借り手の口座に書くだけなんだ
銀行の帳簿上は
資産と負債(預金)の両方に同じ額が記載される
恰も借り手が借金額を預金したようなものだ
借り手はその瞬間から
自分の口座からそれを引き出して使うことができる
これは『信用創造』と呼ばれている
逆に返済時には全く逆のことが起こり
帳簿は文字通り帳消しにされるのだ
それが『信用破壊』だ つまり
貸出しによって通貨は生まれ返済時に消滅する
こうして銀行の手元には
利子がしっかり残るという寸法だ
 
銀行はこの信用創造によって
通貨発行権を握っているというわけなのだ
もしこの仕組みがなかったら
銀行の仕事は身の丈程にしかならないだろう
この仕組みのお陰で
社会のニーズに合わせた
タイムリーな通貨供給ができるともいえる
実際には準備預金制度というものがあって
銀行は中央銀行に預けた持ち金の
100倍を超えるお金を融通できるといわれている
銀行だけがお金を作れるシステムは
『借金通貨システム』と呼ばれる
そして政府にできることは
税金徴収と国債を発行して借金することだけなのだ
通貨発行権―――
これが特権でなくてなんであろう
 
しかし銀行はどうやって
この特権を手に入れたのだろう
実はそれは黒い歴史の所産なんだ
始りはイングランド銀行だといわれている
創設者のウィリアム・パターソンが
戦争資金の見返りに紙幣の発行権を政府に要求したのだ
日本の中央銀行である日銀も
政府出資率55%民間出資率45%と
見かけは半官半民だが歴とした民間組織なのだ
政府が日銀総裁を任命するのはカムフラージュに過ぎない
任命権はあっても解任権はないのだから―――
さらに日銀の民間出資者は未だに不明である
実際黒い歴史は憲法にも及んでいる
意外なことに憲法にも通貨発行権に関する規定がない
占領下の憲法制定時拠り所とされた憲法にも
その規定がなかったからだという
 
こうして
通貨発行権は宙に浮いたまま
各国の中央銀行ひいてはそれを束ねる国際銀行権力に
実質的に握られているというわけなんだ
その結果何が起こったか
日本はまさにこの借金通貨システムの
餌食にされたのである
1980年代のバブルとその後の長期不況 ―――
それが意図的に引き起こされたことを
君は知っているだろうか
その結果日本は今や
GDPの200%を超える借金大国だ
国家予算の3割は毎年借金の穴埋めに充てられている
こんな異常事態が続いている国が他にあるだろうか
どうしてこんなことに
なってしまったのだろう
 
2016年に刊行された
天野統康さんのもう一つの著作
[洗脳]政治学原論は[詐欺]経済学原論の続編である
その中で天野さんは
不動産バブルとその後のデフレ不況を
通貨供給量の観点から鮮やかに分析している
それは国際銀行権力による
日本型経済システムの一連の破壊工作だったというのだ
そのために通貨発行権を用いて意図的に景気変動を起こし
マスコミと学術機関を総動員して現行の経済システムを貶めた
その結果日本はこの30年の間に
日本型産業資本主義から米国型株主資本主義へと完全に変貌した
その背後にあるのは国際銀行権力にとって
日本型経済システムの隆盛が脅威だったという事実だ
彼らにとって株主資本主義の方が
はるかに旨味があるのだ
 
日本では対米従属政権は
長期政権を維持するといわれる
小泉政権や安倍政権などがその好例だ
逆に対米自立政権は短期政権で終わる
日銀が金融政策によって景気をコントロールし
マスコミがそれを煽る形で支持率が変動するからだ
国際銀行権力の真の目的が利益の最大化なら
国民のための政治が行われることは決してないだろう
名目GDPは
通貨供給量×流通速度で計算される
大数の法則によって流通速度はほぼ一定だから
通貨供給量をコントロールできる銀行が
経済をコントロールできることになるのだ
それゆえ金融は沈黙の兵器と呼ばれたりもする
いわれてみれば
呆気ないほどシンプルな話だったのである
 
民主主義の目的は
「誰もが支配されない自由で平等な社会」
だと天野さんはいう
それを阻害する国際銀行権力はまさに
諸悪の根源なのではないだろうか
彼らが問題なのは透明性のない闇の権力だからだ
天野さんは政治学原論の最終章で
国際銀行権力に打ち勝つための提言をしている
それは闇の権力のもつ通貨発行権を取り戻し
政府通貨だけにするということだ
そのためには僕らが
闇の権力によって仕掛けられたマインドコントロールを解き
民主主義の目的を再認識することだという
お金が生まれる仕組みを知ることからはじめよう
僕らはもう何百年も民主主義へのステップを
闇の権力にじゃまされ続けてきたのだ―――
 
2023.7.23
 

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