見出し画像

【詩の森】519 夜に眠る

夜に眠る
 
今はあまり聞かないが
昔は健康といえば
快食快眠快便ということが
よくいわれた
韓国語の
いただきます=チャルモッケスムニダ
を直訳すれば
「良く食べます」である
同様におやすみなさいも
「良く眠ります」だ
 
実はコロナに罹って
熱は引いたものの食欲が戻らず往生した
その時に浮かんだのが
快食快眠快便という言葉だった
快食とは
体調がよく、食事が進むこと。
おいしく食事をすること。
だそうだ
三つ揃えばまさに
健康のエンジンになるだろう
 
ところで睡眠科学者の書いた
『睡眠こそ最強の解決策である』
という本によれば
大半の病気は眠るだけで治るという
眠っている間に
自然治癒力がフルに働くからだ
記憶は整理され傷は癒される
とくに真夜中の数時間は
眠っていなければいけない
重要な時間帯なのだという
 
OECDが発表している
2021年の睡眠時間ランキングでは
日本は7時間22分で
33か国中最下位である
もちろん個人差は大きいだろうが
問題は夜中に
眠れているかどうかだろう
労働者にリスクを負わせて
5割程度の深夜割増率で働かせることが
はたして許されるのだろうか
 
労働者も身を削ってまで働いて
幾何かの割増賃金を得たとしても
長い目でみれば
もし病気になって高い医療費を支払うのなら
元も子ないだろう
経済効率というのは端的にいえば
脳が決めたことである
いわば脳の指令なのだ
それに対して夜の睡眠は
数十万年と続く体の指令である
 
ああ人は本来
夜に眠る生きものだったのだ
経済効率に体を合わせて
夜も働くようになったのは
ここ数十年来のことだろう
脳化社会が
人々の体を酷使している
それが現代の姿なのではないだろうか
こんなことで僕らは
幸せになれるのだろうか
 
2023.7.7

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?