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【詩の森】原発の本質

原発の本質
 
福井地裁の元裁判長
樋口英明さんの講演をユーチューブで聴いた
眼から鱗だった
樋口さんは2014年に
大飯原発の運転差し止めをされた方である
樋口さんが
原発を止めた理由は明快だ
①原発の過酷事故は甚大な被害をもたらす
②それ故に原発には高度の安全性(事故確率が
低いこと)が求められる
③地震大国日本において高度の安全性がある
ということは、原発に高度の耐震性があると
いうことにほかならない。
④しかし、わが国の原発の耐震性は極めて低い。
よって、原発の運転は許されない。
というものだ
 
福島第一原発事故の最中
現場の指揮に当たっていた吉田所長は
『東日本壊滅』まで覚悟されたという
しかし奇跡ともいえる
いくつもの幸運が重なり
15万人余の避難で済んだのだ
とはいえ
自殺された酪農家のなぐり書きのように
『原発事故さえなければ』
とっくにやり直すこともできたはずだ
原発が不毛の土地を生み出し
人びとを故郷から離散させたのである
被害額は25兆円を超えるといわれる
しかし
根こそぎ奪われたものの大きさを
どうして測れようか
 
樋口さんはいう
原発事故が他の発電所と決定的に異なるのは
事故後もずっと管理し続けなければ
ならないことだと―――
もし火力発電所の事故ならば
燃料が燃え尽きれば
独りでに鎮火し人が近づくことも可能だ
しかし原発はそうはいかない
燃料デブリの崩壊熱を下げるために
常に水をかけ続けなければいけない
放っておけば
新たな惨事になりかねないからだ
いみじくも
福島の人はいった
あれはライオンが
眠っているだけなんだと―――
 
樋口さんは続ける
裁判官の役目は
物事の本質を見極めそれに叶った
判断を下すことだと―――
そしてさらに
原発はエネルギー問題であり
環境問題のようにいわれるが
その本質は防衛問題であると―――
この国の沿岸に50基もの原発を
並べてしまった段階で
原発は防衛問題となった
なぜなら「原発は自国に向けられた核兵器」
だからである
そんな国が敵基地攻撃能力だ
ミサイルだ
戦闘機だと騒いでいる
 
原発の本質が防衛問題であるなら
原発を議論しない防衛論など
あり得ないことだろう
たった50数発のミサイルで
この国を壊滅させることも可能だからだ
そのような弱点をさらけ出しながら
隣国に対して
軍拡という対決姿勢を取ることに
どれほどの意味があるのだろう
たとえばソウル市には
核シェルターが100%装備されている
半地下の家族という
アカデミー賞映画で見た通りだ
いくらJアラートの指示に従って
すわと身を伏せたところで
生き残れる確率はほぼゼロだろう
 
僕らは戦う政府ではなく
折り合う政府をこそ選ばなければならない
今思い出すべきは大日本主義の時代に
小日本主義を唱えた石橋湛山ではないだろうか
俳優の菅原文太さんは生前
政治の役割は二つ
戦争しないことと飢えさせないことだといった
真の防衛とは
既に火を噴いた核兵器即ち
福島第一原発の事故収束に全力を注ぎ
原子力緊急事態宣言を解除し
原発依存からの脱却を図ることでは
ないだろうか
9条を守り食料自給率100%をめざす
そんな政府を選ぼう
それが生き残る唯一の道である

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