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【詩の森】593 自分を信じろ

自分を信じろ
 
何がホントで何がウソか
ちっとも分からない世の中で
「僕を信じろ」なんていえやしない
政府が秘密にしていることを
暴く手立てもないし
自慢できるような
情報リテラシーがある訳でもない
ただ僕にできることは
それが疑いようのないことかどうか
考えることだけなのだ
 
もし君が
「考えるのはめんどうだ」
とばかりにそれを止めてしまったら
かつての総理の言葉さえ
信じてしまうかもしれない
覚えているだろうか
文書改竄指示疑惑の渦中にあって
彼はこういったのだった
「総理大臣の私が、ウソを吐く
はずがない」と―――
 
今の僕にいえるのは
「自分を信じろ」ということだけだ
長年付き合ってみて
「あいつは信用できる奴だ」と
太鼓判を押せるのは自分だけである
その時には
彼への疑念は氷塊し確かな事実だけが
積み上がっていることだろう
そうして人は初めて
人を信用することができる
 
しかし総理の
あの言葉を信じることは
『自分』ではなく『エライ』を信じることなのだ
彼の言葉を翻訳すれば
「日本で一番エライ総理大臣の私が、
そもそもウソを吐くはずがないだろう。
それを疑うなら、疑う君のほうがおかしい」
とでもなるだろう
しかしそういった男こそ
稀代の大嘘吐きだったのである
 
2024.1.25

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