【詩の森】558 誰も不思議に思わないけれど
誰も不思議に思わないけれど
定年になって自らに課したのは
早寝早起きと
ストレスのある場所には近づかない
ということだけだった
ストレスのある場所とは
例えばボスのいる威圧的な場所のことだ
そのお陰か今ではすっかり元気になった
今にして思えば
僕は軍隊のような権威主義的な場所に
何十年も長居していたのだった
人間には眠るべき時間帯があるという
9時就寝4時起床の生活は
10時から2時といわれるコアタイムを
しっかり眠るためだった
その間に自然免疫が働き
がん細胞の修復まで行われるというのだから
僕らの体も小宇宙のようなものだろう
僕は自然免疫を信じてみたのだ
しかし夜に眠るというそれだけのことが
叶わない人が大勢いるのも事実なのだ
人が夜眠るのは
何万年も続く体の習慣だといえないだろうか
それが僅かの夜勤手当で
いとも簡単に覆されたのは
ここ数十年来のことにすぎない
僕も若い頃3交代勤務についたことがある
夜勤開けにどれだけ寝ても
寝た気がせず疲れは溜まる一方だった
自然に反することは
やはりストレスの原因になるのだろう
個人的体験が他の人にあてはまるのか
よく分からないけれど
充分な睡眠と
ストレスフリーの生活を心掛けて2年程経つと
いくつもあった体の不調がすっかり消えてしまった
それは自分でも驚くほどの成果だった
やがて僕は
病気にならない生活について考えはじめていた
他の先進国で減り続けているがんが
日本ではなぜ増え続けているのだろう
医食同源という言葉がある
僕らの体は食べたものできている
身土不二という言葉もある
昔の人は新鮮なものを腐る前に食べていた
そのような生活なら添加物は不要だったろう
しかし忙しすぎて
調理時間さえままならない僕らは
加工食品を消費・賞味期限を目安に食べている
その期限とは
添加物の効力持続期間のことに他ならない
この国は予防原則のない国である
だから欧米では禁止されている添加物が
日本では平然と使われていたりする
農薬使用量/㎡もGMO輸入量も世界一なのだ
僕らは食の安全に無頓着過ぎるのではないだろうか
作物に残留する農薬や加工食品の添加物
いや食べ物だけではない
人工の香も薬もワクチンも体にとっては異物だろう
僕らは化学物質を信用し過ぎては
いないだろうか
定年後の僕は医者とは疎遠になったが
たまに病院にいけばいつも混雑している
誰も不思議に思わないけれど
病院が繁盛する社会ほど異様なものはないだろう
早期発見をいう前にがんにならない手立てを
どうして講じようとしないのだろう
アメリカでは1970年代に政府の肝入りで
がん予防食品の研究が進められ
デザイナーフーズピラミッドとして周知された
がん死亡数は1992年以降減少に転じたのだ
早期発見は予防ではない
予防とは危険かもしれないものを予め排除し
自然免疫力を高める生活を推奨し
病気になりにくい暮らしを実現することだろう
そのためには国民に事実を正しく伝えることである
喫煙率が低下したのに
肺がんが増えているのを君は知っているだろうか
国やマスコミが教えてくれないのなら
僕らは必要な知識を自前で調達するしかないだろう
自然免疫が自前の生きる力であるように―――
2023.10.21