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【詩の森】577 奇跡のツール

奇跡のツール
 
ほんとうに
何でも言っていいのだと
大人たちも思っていなかったので
子どもたちにも
そう教えることはありませんでした
それよりも
上の人の言う事を聞くほうがよいと
知っていたからです
大いなる和の国-大和に
民主主義は
根付いたのでしょうか
民主主義というのは建前で
いまでも人々は権威を信奉して
生きているのではないでしょうか
エライ人の前では
神妙にコトバを選んで―――
 
該当者が少なくなるほど
この国ではエライ人になります
だから
市民より市長のほうが
市長より知事のほうが
知事より総理大臣のほうがエライのです
けれど民主主義では
主権在民といって
市民が一番エライことになっています
それでも
それを真に受ける人はめったにいません
総理大臣に野次を飛ばしただけで
捕まってしまうからです
エライ人に逆らうと
そのシンパたちに苛められると
心得ているのです
 
市民がいちばんエライからといって
その声が社会に届くわけでもありません
むしろテレビの沙汰も金次第―――
テレビのCMには
数万から数十万円の費用がかかるそうです
全国紙一ページ分の新聞広告には
一千万円以上かかります
市民意見広告運動では
一口二千円としても五千人以上が必要です
社会に届くような大きな声を届けるのは
ほんとうに容易ではないのです
それに引き換え
エライ人やお金持ちは大きな声を出せるのです
その際たる人が総理大臣でしょう
総理を一日とて
テレビで見ない日はないのですから―――
 
ところが
インターネットが普及して
誰でもものが言える時代がやってきました
インターネットの最大のメリットは
低コストで情報発信ができることです
僕が運営するホームページの
サーバー使用量は年間で1500円です
個人情報の流出と引き換えですが
SNSなら無料で使うことができます
それで困るのはおそらく
エライ人たちではないでしょうか
大きな声という特権が
無くなるのですから―――
ネット上で時々炎上騒ぎが起きるのは
エライ人たちのシンパの仕業ではないかと
僕は密かに疑っているのです
 
主張の是非はともかく
スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんのように
一人の少女のネット上の発言が
世界を動かすこともあります
かの国では小学校の社会科の教科書で
インターネットを使って
自分の意見をいうことを勧めている
というのですから驚きです
何でも言えるというのは
もちろん「ヘイト以外は」という
ことでしょう
インターネットが民主的に運用されれば
僕らの社会も民主主義に近づけるのでは
ないでしょうか
インターネットは民主主義の
奇跡のツールかもしれないのです
 
2024.1.5
 
 

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