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【詩の森】630 社会のデザイン

社会のデザイン
 
税金はそれなりだが
大学までの学費は無料
入試もなく
希望すればだれでも大学で
学ぶことができる
そんな国がある
人々は他人と比較することなく
自分の幸せを追い求め
自分の可能性を信じて
生きているらしい
 
スウェーデンは
そのようにデザインされ
実際それを実現した国である
他にも医療費はほぼ無料だという
人々は政治家を信頼し
貯金もあまりせずに暮らしているらしい
日本と比較して何という違いだろう
因みに両国の国民負担率は
2020年比で日本48%
スウェーデン55%である
 
かの国の人々が
かくも政治家を信用しているのは
政治家が彼らの期待に
応えているからだといわれる
彼らは自分たちの願いを託す政治家を
きっちりと選べているのだ
80%を超える投票率が
それを物語っている
国民が有能な政治家を見極め
自ら社会をデザインしているのだ
 
翻ってこの国では
一部の富裕層を除いて
未だにあの啄木の歌宛らではないだろうか
はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざり
ぢつと手を見る―――
たった2割の絶対得票率で
自民党が6割近い議席を占有できるのは
投票率が50%程度だからだ
公明党候補者のいない小選挙区では
その票は全て自民党に入る―――
 
半数もの人が選挙にいかないのは
誰に入れたらいいか分からないからだろう
そもそも候補者のなかに
知っている人が一人もいないのだ
安心して願いを託せる人に巡り会えない
このむなしさ―――
それはスウェーデンの人々が
願いを託せる人に投票できるのと大違いだ
その理由は
仕組まれた公職選挙法にある
 
凡そ100年前に生まれた公選法は
18歳未満を選挙運動から締め出し
短期の選挙運動期間を設けて
候補者と有権者の接点を減らし
さらには戸別訪問を禁止して
候補者と有権者の対話の機会さえ奪っている
つまり公選法とは新参者締め出し法なのである
その結果僕らは
候補者と知り合うチャンスもなく
次第に選挙から遠ざかっていくという寸法だ
 
しかし
僕らがその気になりさえすれば
スウェーデンのようになれるかもしれない
公選法をひっくり返してみればいい
候補者の戸別訪問が禁じられているのなら
有権者が候補者に会いにいけばいい
18歳まで選挙運動に関われないのなら
せめて公職選挙法だけでも読んで精通すればいい
気心の知れた仲間を
候補者に押し立てることもできるのだ
 
公選法は
供託金という多額の立候補代を
要求してくるけれど
地方自治体レベルの金額なら
何とかなるだろう
それよりも仲間の誰かが立候補したら
喜んで投票に行くだろう
願いを託せる人に投票できれば
僕らは社会をデザインできるのだ
僕らはそのことをすっかり忘れている
 
2024.4.24
 

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