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ダブルワークの副産物

駆け出し自営業者の私は、アルバイトも欠かせません。いわば、ダブルワーク。
そんなダブルワークから学んだ話を、今回は書こうと思います。
 
昨年8月、あるアルバイトを始めました。自営とは全く内容がかけ離れた、電話対応の仕事。
当時、本業での年金研修も始まり、「あれも覚えて、これも覚えて」と、頭の中は慌しい状況でした。

どちらに比重を置くか? 当然、本業です。
副業のアルバイトには、気持ちがおろそかになりがちでした。
渡されたマニュアルは通り一遍、読むのに精一杯。同じスタッフの方が、きちんとマーカーを引いていたり、自宅でもインターネットで調べたと話されていたりすると、感心しているだけでした。
 
私が冷めていたのには、もう1つ、深い理由があります。
自営開業時に勤めていた別の副業で、失敗した経験があるためです。
その副業では、事務員が私1人のみ。自営の用事と重なったときには、自分の用事は断念。
また、自身の所定時間外でも、会社のPCにではなく、LINEに送られてくる(急ぎでもない)業務の問い合わせや連絡。「勤務先ではなく、お客さんだと思えば」と言い聞かせ、都度、返信していました。
そうして慣れてきたころには、「自分の事業よりもアルバイト優先」という、本末転倒な心理状況に陥っていました。

そんな私を見かねてなのか、社労士の先輩から年金相談の仕事を勧められたのを機に、「両立は完全に無理」と、そのアルバイトは思いきって退職。
苦い経験を反省して、これからは副業に気持ちが呑まれないようにと、予防線を張るようになりました。
 
しかし、それは、良い意味で覆されました。
 
その数ヵ月後に始めた、先述の電話対応のアルバイト。具体的内容は明かしませんが、電話をかけてくる方は、困っている方がほとんどでした。
不安を払拭したい。けれど、こちらがきちんとした知識を持ち合わせていないと、うまく伝えられない。安心感を与えられない。
次第に、そう気づいていったのです。
正確な知識があって初めて、受け答えの自信も生じるし、不安な気持ちに寄り添う余裕も生まれる。
これは、社労士としての相談業務と、同じではないか……。
 
以来、積極的に、業務マニュアルをしっかり読み込む姿勢に変わっていきました。
知識を身につけるのは、自分の仕事のためだけではない。相手のため。
本業において、安心、信頼を与える専門家を目指していくうえで、大事なことに気づかせてもらえました。年金の勉強にも拍車がかかりました。
そうなると、「やむを得ず」アルバイトしている感がなくなり、両方の仕事を大事にしたいと思えるようになって……。
好循環が生まれました。
 
そのアルバイトも、明日、6月末で業務自体終了。
良い経験を得た以上に、多くのスタッフの方々との出会いも忘れ得ぬものとなりました。ご自分で事業をされている方も多く、業種は全く違えども、励みになり、ヒントもたくさん、いただいてきました。貴重な財産です。
 
ダブルワークをする理由は、人それぞれ。経済的理由でという方も多くいらっしゃるかと思います。
本業に支障や悪影響が生じてしまう副業もあれば、逆に相乗効果をもたらす副業もあるかもしれません。
副業選びも侮れないものですが、一番良いのは、本業だろうが副業だろうが関係なく、誰もが働きやすいと思える職場が増えていくことでしょう。
 
副業先へと車で通った、山の中の坂道。
にぎやかなセミの声を浴びながら、慣れない仕事にドキドキ走らせた日。
凍結をヒヤヒヤ心配しながら、ゆっくり通り過ぎた時期。
桜の花びらが舞う様子に、うっかり気を取られそうになった日々。
そして、再びセミの声が巡ってくる季節を前に、終わりになります。

この1年弱で得た副業経験。これから、どれほどの季節が巡り巡っても、自身に刻み込んでおきたいものです。

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