大仁フェリー乗船記2024 (大連→仁川)
中国と韓国の間には多くのフェリーが運航されており、ほとんどが仁川港を拠点に青島・営口・秦皇島・丹東 (2025.3再開予定) などを結んでいる。
今回はその中の一つである、大連港と仁川港を結ぶ「大仁フェリー」に乗船してきたので、その道中をレビューしたい。
(情報は2024年9月現在)
予約方法
ネット予約...?
運行会社 (DainFerry) には幸いホームページ (https://www.dainferry.co.kr/) があり、サイト内の予約システム・Coferryから予約ができる (ちなみに、英語ページはない) 。
......ただし、韓国 (仁川) 発の場合のみ。
大連発の片道・往復券は、なんとこのサイトで予約できないのである。大仁フェリー公式が推奨する予約方法は以下の通りで、ネット予約ができない場合は国際電話やSMS通信に頼るしかないようだ。
ちなみにCoferryにはこの航路を取り扱う旅行代理店の一覧が書かれている (下記リンク → 預定船票 → 售票代理店) が、どちらにせよ電話に頼らなければならないのが実情だろう。CTrip (中国版Trip.com) 上で予約できるとの情報もあったが、当該サイト上ではそのような情報が見当たらなかった。
何にせよ面倒で、煩雑な手続きを踏まなければならない。特段繁忙期ではなさそうだったので、私はチケットを現地調達することとした。
ビザ申請
大連港は、中国政府が提供する144時間トランジットビザにおけるビザ免除対象口岸である。すなわち大連港から入国し、遼寧省内に滞在したあと大連周水子空港 (DLC) か瀋陽桃仙空港 (SHE) から韓国以外の国家に渡航する場合 (逆も然り) は、中国入国に必要なビザが免除されるということである。
しかしこの記事をお読みになっている方々の中には中国の観光ビザを取得して渡航される方も多いと思われるので、少し紙幅を割いてビザ申請についてお話ししようと思う。
結論から言えば、(私のように時間がかかる場合こそあるが) なんやかんやで通る。帰国のための交通手段の予約をしている場合は確実に通るだろう。
ただし、このフェリーの予約をしていない場合はビザ申請の際に念書を書かされる場合がある (e.g. 入国したあかつきには、フェリーの予約を可及的速やかに取得する) ので、それだけは心に留めておこう。
なおビザ申請のプロセスや審査の内容については、こちらの記事をご参照願いたい。
現地販売
先ほど示した「予約方法の一覧」には、現地窓口での乗船券販売について一言も触れられていない。しかしネット上には奇遇にも先駆者がおり現地発券に成功していたので、私も試してみることにした。
ということで、話は乗船2日前の大連駅に移る。
駅前には大連からのフェリー (煙台・営口など) 代理店が立ち並ぶが、どの店員に聞いても仁川行きは「没有 (ないよ) 」とのこと。多くの店先には「国際」と書いているのに、無責任な話である。大連からの国際フェリーはこれしかないのに...
このような状況なので、港に向かって直接仕入れることにした。フェリーターミナルは市街中心部 (中山広場) の北東にあり、港湾広場から分岐する「港湾橋」を渡った先にある。切符売り場はターミナル内入って右側にあり、国際航路の乗船券は3番の窓口で販売されている。
中で応対してくれたのは、かなり韓国訛りの入った英語を話す女性だった。明後日に仁川まで行く旨伝えると、手際よく1枚のA4用紙を発券してくれた。どうやらこれが予約確認書のようで、チェックインの際に提示するためのものらしい。
帰りしなにその係員さんから手続き時刻について説明を受けた。内容は以下の通り。
〜14:00 チェックイン@国際航路ターミナル
14:30〜15:30 出国審査
17:00 出港
何はともあれ予約はこれにて終了、あとは乗船日を待つだけだ。
ちなみに上の写真が、大連発の場合の料金表 (諸税込) である。筆者が乗船する等級は「ECO1」で、12人部屋の1角だと説明を受けた。代金は意外なことに、3割引の644元 (13,000円)。どうやらFull Fareの最安値1,054元 (ECO2) が適用されるのは春節のような繁忙期だけらしく、通常はECO1とECO2が同額であるこの値段のようだ。
乗船まで
2024年9月11日 (水) 13:58
大連の街をチェックイン時間のギリギリまで歩き回り、ターミナルに着いたのは締切ギリギリだった。国際航路のターミナルは切符売り場向かいの手荷物検査場を通過したあとに広がる待合室のそのまた先にあるため、いったん建物の外に出た後入りなおす必要がある。
待合室内でチェックインをすると、妙に長ったらしいチケットが出てきた。横幅はパスポートの縦幅の2倍を優に超えるようなもので、当初取り扱いにはかなり難儀した。その理由は、乗船までに明らかとなる......
国際線ターミナルはがらんどうとしており、待合スペースにはチェックインカウンター1窓と中国工商銀行の自動両替機 (レートは普通) があるだけの殺風景なところだった。十数人だけの乗客はほとんどが中国籍の中高年で、わずかながら韓国人と日本人 (自分だけ) がいるような人数構成だった。
旅客が全員揃ったのか、予定よりかなり早く税関の検査と出国審査が始まった。かなり変な国境 (新疆ウイグル自治区) から入国したにもかかわらず、日本人だからか何も聞かれることはなく、別室送りなどのイベントもなかった。数分のうちにこれらを終えると、いよいよ乗船である。
ちなみに先述した乗船券は、大連港の時点で
税関検査
出国検査
乗船前 (タラップ渡る前)
乗船直後 (タラップ渡った後)
の4回にわたってもぎられ、最終的に一番左の青い面しか残らなかった。今まで乗ったことのある国際フェリーはチケットもぎりが1回のみかQRチケットでそもそもその作業が必要ないかだったので、少し新鮮な体験だった。
船内にて
今回の船旅のお供は、この「BIRYONG (飛龍)」号。元々日本で豪華客船「クルーズフェリー飛龍21」として運行されていた船舶で、当時の雰囲気をわずかに残しながら貨客フェリーとして余生を送っている。
今回アサインされたスペースは、開放式2段寝台の下段。カーテン付きのドミトリー様式で、寝台の幅や高さに申し分はない。この船にはどうやらフェリー特有の雑魚寝スペースもあるようだが、この日は乗客のあまりの少なさに、このタイプ以外の部屋がすべて施錠されていた。
スペースに荷物を置き、しばらく船内を見て回る。
1階には受付・ラウンジと上級客室。ビール・ソフトドリンクの自販機もある。なお給水機もこのフロアにあるが、冷水は飲まないよう指示があった。備え付けられている紙コップはなんなのだろうか。
2階にはエコノミー客室一式があり、3階は一面が大きな屋外デッキになっている。接客設備は実にコンパクトな印象だ。
出航まで2時間ほど余ったので、その予定時間にアラームを合わせ一眠りした。ところがそれを合図に起床してもまだ船はタラップをおろしたままで、依然としてトラックがひっきりなしに出入りしている。どうやら貨物の積み込みに手間取っていたようで、1時間遅れで大連を出航した。
出航して早速、レストランでは夕食の時間が始まる。受付でミールチケット (40元 or 8000ウォン) を購入し食事を受け取る形式で、今日のメニューは韓国料理だった。どれもかなり本格的な味で、特に豆腐チゲは温かく美味しかった思い出がある。
夕食を食べ終わるとほぼ同時に、出航から1時間ほどはつながっていた携帯の電波が切れた。ちょうど日も暮れてきたので、眠くなるまで船外のデッキでゆっくりすることに決めた。黄海をゆく船を見ながらあわよくば天体観測、といった心づもりだったのだが......
残念ながらそのような光景は微塵も見当たらなかった。まず空は曇っており、星どころか月すらも見えないほど。さらに沖を行く船はどれも眩しく、北朝鮮のイカ釣り漁船らしき船舶が多数出現していた。
これでは晴れていても、快適な天体観測は望めない。仕方なく自室に戻り、自販機で買ったビールを飲みながら眠りを待つことしかできなかった。
到着
長旅で随分身体が疲れていたのか、起きたときに船は仁川港に接岸する目前だった。すでに予定到着時間 (10:30) を20分ほど超過していたので慌てて身支度をしたが、下船はそこから15分ほどあとのことだった。どうやら昨日の遅れをまだ引きずっていたらしい。
イミグレまでのシャトルバスに5分ほど乗り、入国審査・税関検査を受ける。先述したように乗客は十数名だけだったので、待ち時間はほんのわずかだった。
仁川港からは数路線バスが出ている。ソウル市内に出向く場合は13番バスに乗り、ソウル地下鉄1号線・朱安駅からアクセス可能。16番バスに乗れば仁川地下鉄1号線の仁川国立大学駅・テクノパーク駅経由の乗り継ぎもできる。仁川国際空港方面へのバスも何本か出ているようだ。
雑感
大連↔︎仁川のルートは、通常はほぼ毎日フルサービスキャリア (China Southern, Korean Air) が1万円以下の料金を提示するほど、競争の激しい区間である。そう考えるとこの航路はチェックイン時間も早くコスパ的にも劣るものの、一方で陸路入国のロマンを日本に近いところでかなり手軽に体感できる航路ではないだろうか。
船内では英語も通じやすく、乗客の少なさも相まってかなりのびのび過ごすことができた。客室のクオリティもかなり快適で、一人旅にも、グループ旅行にも向いている航路だと感じた。
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