【陸路入国】中国の観光ビザを取る方法
今年(2024年)の夏、陸路での中国横断を計画している。現在日本人の中国入国には一部の例外を除き (e.g. 一部地域におけるトランジットビザ免除) ビザ申請が義務付けられているので、少しハードルが高いといわれるその過程を記録しようと思う。
特に私はめんどくさい先方の想定を外れた旅程を組んでいるため、そのような行程 (入出国ともに陸路) を組もうとしている方にはぜひお読みいただきたい。
もちろん中国の観光ビザを取得しようとする諸兄にとっても、その参考になれば幸甚である。
(情報は2024年7月現在)
旅行の概要
今回まず取得を目指したのは観光 (L) ビザである。シングルエントリーの30日間有効なもので、発給には最寄りのビザセンターあるいは総領事館へと出向かなければならない。
旅行計画は、おおよそ以下のようなものだ。全てを書き出すと非常に長くなるので、入国・出国にかかわるものだけを紹介したい。
1日目 (入国)
オシュ(キルギス)
↓
(乗合タクシー)
↓
イルケシュタム (伊尔克什坦)峠
〜 中国・キルギス国境 〜
↓
(乗合タクシー)
↓
ウルグチャット (烏恰)
↓
(乗合タクシー)
↓
カシュガル (喀什)
〜〜〜 中略 〜〜〜
9日目 (出国)
大連 17:30 出港
↓
(大仁フェリー)
〜 中韓越境 〜
↓
仁川 (翌朝10:30入港)
自らの観光ビザ取得における問題点
入国・出国に際しての証憑がない。この1点に尽きる。
中国政府は現在、観光ビザを取得する日本人に対し以下の書類提出を義務づけている:
ところが私の移動手段は専ら陸路なので、航空券という概念が微塵も存在しない。
それに加えて、出入国において日本国内から予約が可能な旅行手段を用いていない(注)。
ビザ申請用のダミー航空券をANAやJALの通常料金で確保したり、Bestonwardticket(下記リンク)を利用して確保することも考えた。しかしそれらは最終手段として用意することにして (一時的とはいえ出費がかなり痛い...)、ひとまず正攻法で突破を試みることにした。
(注)
大連→仁川のフェリー(大仁フェリー)は、韓国発着の場合のみウェブサイト (https://www.dainferry.co.kr/) での予約を受け付けている(= 中国→韓国の片道に関しては、予約を受け付けていない)。携帯電話・FAXでの予約はできるようだが、証憑が残るかといえば疑問である。
1. 申請表記入
申請者はビザセンターに行く前に、申請書を記入しなければならない。事前の準備なくビザセンターで記入することも可能だが(専用のPCが備え付けられている)、この作業は結構時間を食うので事前に埋めておくことを強く推奨する。
申請自体は非常に簡単だ。基本的にフォームの問うていること(国籍・パスポート番号、家族の情報、過去1年間の訪問国、滞在予定地 etc…)に答えてさえいれば、たいていの人はクリアできるだろう。問題は質問(とそれに対する準備)の量が少し多いこと、時折ひっかけ問題のような選択肢があることである。
① 質問への準備
以下のものを用意すれば、おおよその質問に滞りなく答えることができるだろう。
自分の証明写真(データ)
一番重要な書類にして、一番の難関。
最良の方法は自前で証明写真機(写真館)に出向き、データを取得しweb上で提出する方法だが、登録する際に顔の認識エラーが多く発生する。ここで3回連続でエラーが発生すると、下記のような証明写真持参を余儀なくされるので注意が必要だ。
証明写真を持参する場合は白背景に加え特殊なサイズ(4.8cm × 3.3cm)と、注文が多いためつぶしが効かないのが欠点。当日ビザセンターで撮影することも可能だが、かなり待ち時間が長いうえ料金が高い(1000円)。自分のパスポート
パスポートナンバーや、過去の訪問国を調べるのに役立つ。申請の際に原本とコピーを両方提示する必要があるので、同時にやると◎。家族(父母・配偶者・子)のデータ
特に盲点なのが誕生日と住所(別居している場合)である。中国在住の場合は、滞在資格も問われるようだ。緊急連絡先としても使用する場合は、電話番号もお忘れなく。
なお「子どもがいない」と回答した場合は、配偶者の有無など如何を問わず理由を聞かれる。一応「独身だから」と答えてみたが、どう答えればよかったのだろうか。招聘人のデータ・身分証の写し(両面)
招聘状を利用する場合に必要。滞在先(ホテル)の名前・住所
特段の理由がない限りは本人名義でなければならないようだ(ビザセンターでチェックされる)。申請用紙にはホテルの名前・住所、また都市に滞在する期間(例: m月d日~n月e日)を記入しなくてはいけないので、滞在期間・期日を決めかねる場合はagodaやTrip.comでキャンセル料無料のホテルを予約しておこう。
② ひっかけ問題?
少し注意してほしい問いがある。2.2 ビザ申請情報で記入するべき「〇か月以内に中国に行きます」という空欄補充と、「毎回の予定滞在の日数」という質問である。
これらの設問によって得られた情報はそれぞれ「申请签证的有效期 / Validity (仮訳: 申請するビザの有効期間 ― 発給から〇か月の間に入国可能)」「申请的最长停留期 / Duration of Stay(そのビザによる最長滞在期間 ― 入国から〇日間の間有効)」として申請書に自動的に記入される。
中国語・英語・日本語でそれぞれ少しニュアンスが違っていて、かなり困惑する表現だ。
すなわち30日シングルの観光ビザ申請の際には、それぞれ「3か月」「30日」と答えなければならない。別にこれを間違えたところでのちのち訂正のチャンスが与えられるのでどうということはないが、その際は後述するようなペーパーワーク(申請書の2か所に訂正サイン)が求められる。
2. 各種書類の準備
申請表をすべて埋めて提出しただけでは、ビザの申請を行ったことにならない。ビザセンターに出向く前にやるべきことは提出書類の準備だが、これも少しトリッキーだ。
書類の要件
ビザ申請にあたって必要な書類は先述した通りだが、ここで再掲しておこう。基本的にこれらの書類すべてを印刷し、センターで提示する必要がある。
これらの書類は、以下の要件を満たす必要がある。ビザセンターに向かう前に確認しておこう。
提出する書類はすべてA4サイズ
ほかのサイズ・条件だと、書類不備で突き返されるそうだ。パスポートは写真ページを引き延ばしてコピー
自分はこれで書類不備の扱いになった。パスポートのコピーは原寸大ではなく、見開きでA4用紙いっぱいになるように拡大コピーすることが求められる。
拡張のサイズは見開きの場合161% (一般的にB5 → A4に使用する倍率) を目安にしよう。申請にあたってはこれでも十分だが少し余白が目立つので、几帳面な人はもう少し倍率を上げてもいいかもしれない。申請表には最低2か所サインが必要
1か所目のサイン(表紙 / PDFの1ページ目) はわかりやすいと思うが、実はもう1か所サインする場所がある。それは本文の6ページ目 (PDFの7ページ目) 下半分にある「9. 签名及声明 / Signature & Declaration」という章で、その末尾に表紙と同様のサイン欄がある。
代理人を立てる場合はその下に代理人のサインも必要なので、忘れないでおきたい。
《陸路入国の場合》航空券コピーの代替となるもの (?)
さて、前章で述べた通り私は中国に入出国する航空券となるものを持っていない。このような状態であれば、書類不備で突き返されること必至である。何を保険に持っていけばいいのだろうか。
私は日本を出国する際に利用する航空券と、帰国に利用する船の予約、それに加えて全行程の大まかな旅程表(滞在する都市・移動手段を書いたもの)を持って行った。これらの持ち物は下記の動画を参考にしたもので、詳しい内容についてはぜひこの動画を参照していただきたい。
よんじーの中国ライフさん 中国ビザ(Lビザ) 完全取得ガイド
https://www.youtube.com/watch?v=oWB5TawRPP0&t=1448s
3. 提出
7月某日。東京ビザセンターに向かうべく早起きした私は、一路お台場へと向かった。
東京ビザセンターは、ゆりかもめ・東京ビッグサイト駅に直結したビル(有明フロンティアビルB棟)の12階にある。りんかい線を利用する場合でも、国際展示場駅から東京ビッグサイト方面に歩いていけば5分ほどでたどり着くことができる好立地だ。
早起きしたのには理由がある。このビザセンターには「長時間並ぶ」という悪評があるためだ(Googleレビューがそれを物語っている)。レビューやTwitterを見る限り2~3時間の並びは覚悟していたが、その予感は(いい意味で)裏切られることとなる。
ビザセンターでの流れ
ここでは大まかに、ビザセンターでやることを列挙していく。
なおこれらの手順は東京での出来事で、他地域と違うことがある件についてはご留意いただきたい。
必要書類をそろえる
各種書類がすべて持ってきているか、その形式が正しいものか今一度確認しよう。会場にはビザ申請書作成用のPCやコピー機、webプリンター、証明写真機が設置されているので、何かを家に忘れてきたとしても大丈夫だ。
最悪パスポートとホテル・交通機関の予約さえそろっていれば出向くことができるが、これら機械は常に混雑が激しい(コピーするだけで10分は並ぶ)。あらかじめ家や近所のコンビニ・証明写真機で準備しよう。書類チェックを受ける
これら必要書類がすべて揃っているのであれば、入口付近に形成されている列に並ぼう。列の先には提出書類の有無やその形式を確認する係員がおり、そこで各書類について結構入念な検査が行われる(航空券・ホテルの名義、滞在都市や観光ルート、出入国に利用する国境…)。
書類の形式に不備がなければ、受付番号をもらってしばらく待機する。もしなにか不備があれば、それらを準備したあと、自分を最初に担当した係員に直接確認をとる(この際、列に再度並ぶ必要はなかった)。係員の面接を受ける
自分の受付番号が呼ばれたら、ディスプレイに表示されている窓口(柜台)に進み、そこにいる係員と再度書類の確認を行う。この際に、旅程の不明瞭な点に関しての質問や書類記載事項の不備(サイン不足、滞在期間について…)についての指摘が行われる。ただ重大な不備がない限りは窓口で対応可能のようで、申請書の記入不備など軽微なものに関してははここで修正可能だ。代金支払い
ビザ代金は先払いである。最近現金だけではなくクレジットカードでの支払いが可能になった模様で、自分もカードで支払った(コンタクトレス決済もできる)。支払いが済み次第ビザの受領証が交付されるので、受け取りまで大切に持っておこう。
ここまでのビザ申請にかかった時間は、書類不備の訂正を含めトータルで1時間ほどだった。窓口は思いの外多く、書類チェックに5~6人、面接には十数人の係員が配置されているため、呼び出しのベルはかなり頻繁に鳴る(おおむね1~2分に1人ほど)。思いの外スピーディーで、ビザ申請に用意していた時間が余るほどだった。
先方の陸路入国に対する反応
1回目の書類チェック時にみる事柄として、行き帰りの航空券の発着地がある。私が持って行った航空券(往路)はアルマトイ着だったので、見慣れない地名に「これ(アルマトイ)はどこの国ですか」という質問があった。カザフスタンと答え、旅程表を見せながらどのように中国に至るのかを説明すると、納得してくれた。帰国用のチケットも同様に見せると、ひとまず「航空券」の要項に関しては不備がないという判断が下されたようだ。
続いては係員の面接である。同様にチケットについて旅程表を見せながら説明したが、どうしても中国出国に利用するフェリー(大連→仁川)の予約がないに関しては納得してもらえなかったようで、なぜ予約がないのか(できなかったのか)について質問された。ネットで予約ができず証憑がない(前述)ということを伝えると、旅程表上にその旨を署名付きで記載するように言われた。
これらの少し面倒な手続きの結果下された判断は、ビザの「仮申請」という形だった。つまるところ、保留である。
どうやら大使館に確認をとるらしく、受け取った受取票の「お渡し予定日」の欄には "TBD (To Be Determined) " とあった。受け取り日時については数日以内に連絡をいただくことになり、支払いを終えた私は帰路についた。
4. 受け取り
その3営業日後。朝8時30分きっかりに、1本の電話が飛び込んできた。
10秒足らずの間に要点だけが伝えられたが、ビザが下りたということだけははっきりわかった。
ちょうどその開始日に、例のセンターに赴きビザを受け取ってきた。待ち時間・待ち人数ともに少なく、カウンターでの作業も2分足らずであっけなく終わり、パスポートと領収書をもらって解散した。
雑感
このように少し煩雑な手続きを経てやっと発行された私のビザだが、結局のところビザ申請に一番時間を要したのはビザセンターでの待ち時間でも審査でもなく、書類の準備だった。この段階をいかに効率化できたかが、ビザ申請の「めんどくささ」を決定する隠れた要因ではないだろうか。
ビザセンターでの申請はかなり迅速で、思っていた時間の1/3ほどで終わるほどだ。書類の不備と受けごたえの不審ささえなければ、この段階は余裕でクリアできると思われる。
参考にしたもの
日本橋夢屋さん 中国ビザ情報
https://www.tokutenryoko.com/service/visa/170#china_visa_newsよんじーの中国ライフさん 中国ビザ(Lビザ) 完全取得ガイド
https://www.youtube.com/watch?v=oWB5TawRPP0&t=1448s
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