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”契約満了” から 次の一歩 まで

時間がいろんな感情を昇華させてくれて、諸々落ち着いたのでまとめておこうと思います。最近は僕にしかできないこと、書けないことは何だろうかと考えながら日々を送っています。心の中でそんなものは無いと思いながらも、そんな文章になればと願いを込めて。

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12月5日(日)、J3優勝とJ2昇格を経験しました。次の日、クラブハウスで「契約満了」を言い渡されました。試合終了の笛から24時間も経っていない昼過ぎのことでした。言い渡されたあと、3,4時間ほどでトライアウトを受けるかどうか決めなければなりませんでしたが、数日後に100%でサッカーをできる精神面でも身体面でもなかったので、どこからもオファーは届いていなかったけれど辞退しました。

これに関してはTwitterの140字という文字数制限の縛りもあったため、どうしても簡潔に端的にまとめねばならず、少し乱暴的な印象を与えてしまったので、ここで補足しておきたいです。

3年間遅刻もせず、真面目に仕事をし、少しばかりの結果を残し、それでもクビになる。
これはもし僕が一般企業に就職したと仮定した場合の表現であり、毎朝会社に出社し普通に働いていれば何かやらかさない限り、来年も仕事や給料を与えられ、何事もなく社会人4年目を迎えていたことだろうと思います。僕らは個人事業主なので、契約満了≠クビであることは理解しているし、一般企業とは雇用形態が違うことも自分で確定申告をして納税も済ませているので承知済みです。

だからこそ、25歳という比較的若い年齢で普通の社会人では経験できなかったことを味わえたのは貴重でもありました。人生の豊かさは喜怒哀楽の振れ幅の大きさで決められると思っているし、どんな経験も人生の伏線となってあとあと効いてくると信じているところもあります。それは、高校生のときにみたスティーブ・ジョブズの有名なスピーチに影響を受けているのは間違いなさそうです。

「J3優勝・J2昇格の体験に加えて、一味違った”ドット”を打てたことに、感謝を。」
この「ドット」という表現はスピーチの「”Connecting the dots”」というフレーズから引用させてもらいました。

「点と点の繋がりは予測できません。あとで振り返って、点の繋がりに気付くのです。今やっていることがどこかに繋がると信じてください」「その点がどこかに繋がると信じていれば他の人と違う道を歩いてても自信を持って歩き通せるからです。それが人生に違いをもたらします」
点を打てたことに感謝しつつも、それがどう自分のためになるかは時間が経たなければわかりません。だから信じるしかなく、そして突き進むしかないと感じていました。

当時、ジョブズは自分がつくったAppleをクビになりました。
「クビになったけれど、まだ仕事が好きでした。Appleを退職しても、その愛は少しも変わりませんでした」「私は自分の行いを愛していたからこそ、止まることなく続けられました」
僕の場合、満了になって驚くほど、自分がサッカーが好きだったことに気づかされました。今までは無意識のうちに自分の気持ちに蓋をしていたのかもしれません。来年サッカーをする環境がないかもしれない、自己表現をする場が無いかもしれない。そう思った時に強烈にサッカーを続けたくなりました。ただ、この10年間は常にサッカーを諦めるという感情とは隣り合わせであったのも事実であり、間違いなく自分の中に強く存在していました。しかし、ジョブズのガンの宣告に重ねてもいいなら、「死を覚悟して生きていれば、”何かを失う気がする”という心配をせずに済みます」という言葉にもあるように、僕にはサッカー選手としての肩書を失うことへの怖さがなかったことによる選択や大きな決断ができたのかもしれません。

満了になってすぐの、12月8日の夜。大学のある同期が電話をくれました。満了になってすぐは普通少しいつもとは違う感じで周りが接してくるのだけれど、彼だけはいつも通り、そしてふざけながら、すごく抽象化された引用を使って、何より ”気持ち” を込めて夜通し話をしてくれました。電話の終わった明け方頃には、直感的に自分はサッカー選手を続けるべきだという気持ちが固まっていました。この電話のおかげで僕には失うものなんて無いということも再確認できました。

そして、ジョブズは最後に有名な言葉でスピーチを締めくくっています。

「Stay hungry. Stay foolish.(ハングリーであれ。バカであれ。)」

いつもハングリーでありたいし、だからこそ僕は沢山の良い想い出は熊本に置いていき、少しお腹を空かせた状態で次のステップへ行きたかったのです。

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もう一つ、事あるごとにみている動画があります。それは松田直樹さんが横浜Fマリノスを契約満了になったときの挨拶です。

筑波大で2年生から背番号が「」になり、当時は全く意図的ではなかったですが、身に着ける月日が重なるごとに愛着が湧いていきました。そして、「松田直樹」という人間が同じ背番号をつけていたことを知りました。それからこのスピーチにも出会い、好きなサッカー選手の欄は松田さんの名前で埋めさせてもらっていました。

奇しくも何の巡り合わせか、松本山雅のJ3降格が決まり、僕も満了になってJ3のチームに移籍することで、来年アルウィンでプレーできる可能性が出てきてました。あの松田直樹さんが闘っていたピッチであり、山雅のサポーターさんの雰囲気も含め最高な環境でプレーできるかもしれないということに、言葉を選ばず言えば、楽しみで仕方ありません。

話を戻すと、このスピーチに関しては、僕なんかが内容に触れていいほど何も事情を知らないけれど、これだけのサッカーをやりたい、続けたいという熱が伝わってくるスピーチは今までに出会ったことがありません。同じCBとして、同じサッカー人として、同じ男として、ただただカッコ良すぎます。だから、僕もこんな生き方がしてみたいし、自分の中にあるただ「サッカーが好き」という気持ちを大切にした決断がしたかったのです。

藤枝MYFCのサポーターの皆さん。
はじめまして、小笠原 佳祐です。

まずはじめに藤枝MYFCに関わる皆さん、プロサッカー選手としての活動の場を与えていただき本当にありがとうございます。全国各地でプロになりたくてもチャンスを得ることができなかった選手がいて、プロとして続けたくても続けられない選手が多く存在するなか、サッカーを続けられることに感謝の気持ちでいっぱいです。

声をかけていただいたあと、すぐに頭に浮かんだのは後期のFC岐阜さんとのゲームでした。昇格のかかる最終戦の前だったので対戦をチェックしていました。結果は0-0とスコアレスでしたが大切にボールを扱い、勇気を持って前進させ、方向を問わずゴール前へどんどんボールを供給するスタイルはとても魅力的に映りました。合わせて須藤監督の想いの詰まった続投コメントもすぐに拝見しました。その後須藤監督との面談の場を設けていただき、想いの強さ、選手と対話しながら物事を進めていく人柄やスタイルに惹きつけられました。

また、須藤監督の続投コメントから、結果と内容のどちらかを取る「orの思考」ではなく、両極端どちらも追い求め続ける「andの思考」をされる方であると分かり、僕自身 両極端どちらも追い求める思考は大きなテーマとして掲げてきたものだったため直感的な共鳴を感じました。私事ですが学生時代はサッカーの戦績と勉強の成績をどちらも追い求めるような生活をしてきました。

サッカーという競技だけを見れば、もちろん体格に恵まれ、足が速く、高く跳べる方が有利なのは間違いありません。また学校の勉強でいえば、親が賢かったり環境面として子どもの教育にお金をかけてくれたりする家庭であればあるほど学力が上がる可能性が高いのかもしれません。ですが、先天的に与えられたものや自分のコントロールできない外部要因によってプロになれなかったり、様々な可能性が潰れたりするわけではありません。もし生まれ持ったものだけで人生が決まるのならば、足が遅くてCBとして背の高くもない僕のようなタイプはプロのカテゴリーでサッカーをすることを諦めなければならなかったでしょう。だからこそどちらも追い求め、追い求めるからこそ生まれる相乗効果があり、互いに良い影響を及ぼしあったから今の自分が形成されてきたのだと思っています。

2021シーズン中は常にサッカーを辞めるかどうか自問自答しながら生活していました。しかし、サッカー選手を続ける決断をし、文武両道を目指していた僕と似た境遇に置かれた子どもたちのロールモデルとして、この結果と内容のどちらも求められる世界で必死にもがくこともひとりの人間の生き方としておもしろいのではないかと考えました。またそれは藤枝MYFCが掲げる「志太榛原地域の人々とともに歩み、子どもたちに夢を与え、地域の活性化に貢献すること」に通ずる部分もあるのではないかと思います。

最後になりますが、来シーズン僕にしかできないことは、昨シーズン昇格を決めた試合に出場し素晴らしい景色や雰囲気を感じた経験をJ3の舞台で還元することだと思っています。声をかけていただいた藤枝MYFCに関わる皆さんの決断と加入を決めた自分の決断を、どちらも “正解” だったと言ってもらえるように覚悟を持って2022シーズンを闘います。

僕はどちらかというと、不言実行が好きなタイプだったので、このように形に残してリスクを負って有言実行を追い求めるタイプではありません。前回のように、自分で発した言葉が自分の首を絞めてしまう状況に陥るかもしれません。

でも、僕はリスクを追わない人生、挑戦しない人生が楽しいとは思いません。これから先、僕はこうやって生きていくのだろうし、どうなるか楽しみにしながらサッカーに取り組んでいきたいと思います。

そして最後に、今新たな一歩を踏み出す僕自身に向けて過去の地点からこの言葉を贈ろうと思います。

「 Stay hungry. Stay foolish. 」

いつも応援ありがとうございます!!