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平均点を目指すのではなく平均80点を目指す

POPEYE 5月号「いい仕事ってなんだろう?」を読んだ。読んでいる途中、いまの自分の仕事観、サッカーに対するスタンスをまとめておかなければならないという気持ちになった。

他分野の仕事の人との接点が少ない自分にとってこうゆう企画はとてもありがたい。短い文章の中ではその人の仕事観のすべては表しきれないだろうけど、仕事へのこだわりやスタンスを垣間見ることはできる。

その中でも、フレームビルダーという競輪用自転車のフレームを作る仕事をされている原田海斗さんの記事「常に80点を狙い続ける。」が目に止まった。

副題に「1mmのズレが影響する世界で、合格点を取り続けることが大事」とあるように、フレームビルダーの世界ではミリ単位の作業の連続だそうだ。とても繊細さを求められる世界で、師匠である村山さんから言われたという言葉が、僕自身サッカーをする上で心掛けてるスタンスに通じるものがあった。

「常に100点を目指していますが、まずは確実に80点を取り続けられるように。仮に90点の仕事ができても、その次が60点ではダメ、と村山さんから教えてもらったので」

POPEYE 5月号 30P/31P

師匠である村山さんの言葉もずっしり響く。

「約45年、この仕事をやっていますが、80点を維持し続けるほうが難しい。経験を重ねるほど、より細かな粗が見えてきます。だから100点って絶対にできない。もちろん、近づこうとしていますが、平均点が80点というのが理想です。そのためにもミスをなくす、というのが肝要かと」

POPEYE 5月号 30P/31P

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サッカーを初めてもう少しで20年が経とうとしている。それでも僕のサッカーに対するスタンスが定まったのはおそらく大学生のときだ。恩師である筑波大学監督・小井土さんの影響が大きい。

CBをはじめたばっかりだった大学1年生のときのこと。当時、DFをする上での知識や道具、武器を持ち合わせていないことで悩んでいた。そのことを監督に相談したところ、「80点のアベレージを取り続けることでも十分価値がある。取り続けられる選手は意外と少ない」との言葉をもらった。これにはメンタル的に結構救われた。

サッカー界の育成年代ではよく武器を作れと言われる。たしかにそうだと思う。あれば戦いを有利に進められる。でも僕は武器をつくれなかった。作れそうな武器が無かったというのもあったと思う。

武器のないプレーヤーはどれだけ頑張っても100点を取ることができない。最大出力が低い僕は0/100プレーヤー、一発屋の選手にすらなれない。こんなコンプレックスがあった。

心のどこかでは華やかなプレー、自分が大いにチームに貢献しなければならないというFW的、エゴイスティックな発想を持ち合わせていたため、少しそこから解放してもらったような気がした。

「アベレージを取り続ける」ということは決して平均的なプレーをすることではない。何十試合、何百試合と戦う中で、結果的に平均として高いパフォーマンスを出し続けるということだ。

もし100点を取れるような選手であれば、1試合パフォーマンスが悪かったとしても、次の試合で100点をとってくれればOKということがあり得る。

しかし、アベレージプレーヤーは一度でも低い点を取ると取り返しのつかないことになる。80点のあとに10点を取ると平均45点。次に90点をとっても平均は60点までしか戻すことがない。

逆にいえば1試合の重みがさらに大きいともいえる。1試合1プレーの大きな減点がずっと尾を引いて今後のキャリアに響いてしまう。それは数字よりも厄介な印象、イメージとしても残ってしまうのだ。

だからこそ、冒頭で触れたフレームビルダーの原田さん、村山さんの言葉はよくわかる。数字の感覚は主観的な部分が大きいが、70点では合格点とは言えないし90点は高すぎる。やはり80点という大きな目安がある。

どんな仕事にも、もちろんサッカーにも完璧は存在しない。本来100点なんて概念もない。

でも僕らは完璧や100点を目指してサッカーをする。100点を取れないからといって、それが100点を目指さないこととは大きく違う。限りなく100点を目指す過程にこそが価値があると思っている。

ただ、やはり100点を取るのはむずかしい。だからこそ80点を合格点にしながら落第点になるような低い点数は取らないようにする。そして高く平均点を保ち続ける。

それが現時点での僕のサッカーに対するスタンスだ。おそらく今後もそれは大きく変わらないだろう。

1失点を防いだシュートブロックは決して記録には残らない。残らないからといってそのプレーが無かったことにはならない。




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