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(R18)オリジナル官能小説「こうゆうっ♪」第6話 誘われて

 口元に手を当てクスクスと微笑む女生徒。

 それから彼女は、徐に胸の谷間へ指を入れる。何かを探っているらしい。

 ちょうど僕の目線の高さから、制服の中身が見えそうな体勢だ。思わず身を乗り出す。
 しかし残念ながら、何かが見える前に彼女の体勢が変わった。

 彼女は胸元から小さな紙切れを取り出し、真っ直ぐ僕に目を向ける。
 垂れた髪を軽く掻き上げ、その紙切れを僕に手渡した。

「放課後、ここに来てね」

 澄んだ可愛らしい声が耳奥に届く。
 一言そう言い残し、女生徒はトイレを後にした。

 パタッ、と扉が閉まる。
 しばらく僕は動けなかった。
 頭がぽーっとして、何も考えられない。

 夢か……現か……確かに見たもの、感じたもののはずなのに、それを信じられないような感覚だ……

 その時。
 鳴り響くチャイムが、僕を起こす。
 ぼんやりと熱を帯びた僕の感情は、徐々に冷たいタイルの空間に引き戻された。

「……あ……!やばっ!」

 チャイムの余韻が遠くなる頃、ようやく僕は自分が置かれた状況に気が付く。

 僕がトイレに来たのは、ガイダンスの合間の休み時間。今のチャイムは、その終わりを告げるもの。

 つまりは、もう教室に戻っていないといけない時間だ。

「戻らなきゃ……!!」

 忘れずに一物をしまい、まだ少しベタつく手を雑に水洗いする。
 手を拭くのもそこそこにトイレを出ると、僕は駆け足で教室を目指した。

 そんな僕を、静かに物陰から見る瞳。
 その時はまだ、知りもしなかった。

「それじゃあ、次の時間を始めます!」

 教室から聞こえる越出先生の声が、廊下を小走りで駆けてきた僕の耳にも届く。

 カララッと出来るだけ音が小さくなるように、教室後ろの扉を開き中へ。
 窓際の席だと、こんな時に不利になるものだ。
 ギリギリの隙間から教室に入り込み、体勢を低くして席に向かう。

 が、しかし。

「えーと、真奏くん?ガイダンスから遅刻なんて……驚きね」

 ややトーンが低くなった、先生の声が脇腹に刺さる。
 恐る恐る顔を向けると、腕を組んだ越出先生が、真っ直ぐこちらを見ている。
 他の生徒たちも、一斉に僕を振り返った。

「あ!……ご……ごめんなさい……」

 観念した僕は、立ち上がって一言小さく謝罪し、席についた。

「……新しい学校だし、迷ってしまったのかしら?……まあ、いいわ。次から気をつけなさい」

 声の調子はそのままに、先生は僕に告げる。
 おずおずと着席した僕をクラスの何名かはしばらく見たり、クスクス笑ったりしていたが、すぐに皆正面を向いて先生の話を聞き始める。

 先生にもクラスメイトにも、変に注目された。

 恥ずかしさで顔が熱くなる。
 しかしそれでもなお、僕の関心は別のところにあった。

 誰にも見られなくなってから、僕はそっと拳を開き、握っていた紙切れを見つめた。

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