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3つのステーブルコインから学ぶWeb3システム設計のコツ Part4 Liquity編

今回は第2回で解説した旧MakerDAO versionのSaiから派生して進化したLiquityについて、他のステーブルコイン設計を踏まえつつ解説し、まとめていきます。

今回の連載のURLはこちら:


Liquity

Liquityは、元々のMakerDAO/Saiの進化版で、Governance-lessかつETH担保のみでステーブルコインを実現しようというものです。

概要

  • MakerDAOではVaultはVault所有者のみによって償還&担保引き出しができるが、LUSDでは一番担保率の低いTrove(MakerDAOでいうVault)に投げつけることでETHを償還することができる。(1LUSDは1USDとして扱う。ETHの価格はオラクルで決める。)

  • 担保評価率は110%で清算(例外あり)

  • Stability Feeのような金利調節機構はなし。生成と償還時に0.5%の手数料を取る

  • 手数料はLQTY Stakingしている人に行く

  • Stability PoolにLUSDを入れておくと自動で清算の時に入札を行なってくれETHに一部交換される (LQTYが報酬として降ってくる)

  • Oracle遅延などはなし。CollateralはETHのみでHardcodeされている。

基本モードの時 (プロトコル全体のCollateral Ratioが>150%の時)

  • 110%担保評価率で生成することができる

  • 担保率が110%以下で清算される

リカバリーモードの時 (プロトコル全体のCollateral Ratioが<150%の時)

  • 110%担保評価率で生成することはできなくなる

https://docs.liquity.org/v/cn/documentation/community-resources より
  • 150%以下になると清算される

https://docs.liquity.org/v/cn/documentation/community-resources より

さて、今回も取りうる価格について述べます。これのLUSDはいくらからいくらのレンジになるでしょう?答えは1-1.1USD (ただしRecovery Modeの時は1-1.5になる)です。LUSDは1-1.1のレンジで推移するトークンと言えると思います。

Liquity作り手の意図

仕組みに現れる作り手の糸として一番大きなものは以下の二つでしょう。

  • ETHのみでの担保を実現したい

    • Immutableな担保のみ。

    • 発行できるステーブルコインの理論値上限量がETHの現在価格によって左右される

    • 結果手に入れたのは1-1.1(非常時1.5)の”Stability” (これが現在のDaiと比較して実現できないものとなっています。Daiは現在1ドル近辺でずっと安定していますし。)

  • Governance-less

    • とてもシンプルで悪意ある攻撃を挟む余地がかなり減る

    • ユーザーはGovernanceの動向を追わなくてよくなる

    • Debt Cailingないから超巨大化した時の清算問題

    • (トークンへの価値が付きづらくなる?)

そして今回もお金の収益ポイントは、LUSDを発行、償還した人から徴収する手数料が受け取れるというUtilityを付与したLQTYというトークンの売却でしょう。 (とはいえシンプルなぶん、これだけのUtilityだけだと足りなくない?というのはありますが)

まとめ

今回の前編後編に分かれたブログでしたがいかがだったでしょうか? 本当はアルゴステーブルの話やFrax、あるいはGHO周りの話もしたかったのですが、今回の主目的である「Web3アプリの設計や運用の世界について知る」から外れてしまうので割愛させていただきました。

  • パラメータをどれだけ用意するのか。それはどう決まるのか

  • お金はどこで得るのか

  • 関わる人のパターンはどんな人たちで、その人たちはどうして欲しいのか

  • システムが壊れないか、あるいは非常シナリオの時どう対応するのか

  • 今の技術で可能なのか(安全なのか?)

  • 法的にはこの設計はどうなのか?

とか色々設計は考えることがたくさんあります。他の人の作ったものの設計とかその意図/意思を読み取るのは面白いものです。
他にも運用にもそのスタンスが現れてますし、実際クリプトプロジェクトの運営に携わるときにはここに書いてあるような一部分の知見ではなく、さまざまな部分でより多くの知見をもとに繊細な開発、運営が求められます。
ということで興味がありましたらぜひこちらに問い合わせて見てください!

参考文献https://web.archive.org/web/20171123020719/https://makerdao.com/purple
https://medium.com/@MakerDAO/what-is-mkr-e6915d5ca1b3
https://medium.com/@MakerDAO/introducing-the-new-whitepaper-for-the-dai-stablecoin-system-e7c6caabcfc4
https://medium.com/@MakerDAO/dai-is-now-live-ad87e34fc826
https://makerdao.com/en/whitepaper/sai/#overview-of-the-dai-stablecoin-system
https://medium.com/coinmonks/makerdao-tokens-explained-dai-weth-peth-sin-mkr-part-1-a46a0f687d5e
https://web.archive.org/web/20180309142308/http://developer.makerdao.com/dai/1/api/tap
https://forum.makerdao.com/t/agenda-discussion-scientific-governance-and-risk-tuesday-march-17-9am-pst-4-00-pm-utc/1630/7
https://governance-metrics-dashboard.vercel.app/
https://blog.makerdao.com/the-market-collapse-of-march-12-2020-how-it-impacted-makerdao/
https://blog.makerdao.com/mkr-debt-auction-announcement-and-details/
https://www.liquity.org/blog/on-price-stability-of-liquity
https://docs.liquity.org/v/cn/documentation/community-resources
https://www.liquity.org/blog/overview-liquity-use-cases
https://www.liquity.org/blog/on-price-stability-of-liquity

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