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花に囁く物語 エピソード3「茨のガーゴイル」

ガーゴイルの逡巡

茨に囲われ、ただそこに鎮座するのは白い鴉
神がおわすエルシオン、幽玄の天の園
還りし魂を迎えては送る、天空の門番
その瞳は虚空を見つめ、語るのは主の御言葉

有限の命を生き、無限の安らぎを求め彷徨う魂よ
輪廻の穢れをすてよ
この先よりは安らぎの神の園エルシオン
永劫の安らぎが約束される場所
なれど、常世の業を捨てられぬのならば
堕ちよ
人の世の輪廻の淵に

茨より生まれ、茨に生き。
棘に縛られ存在する。
羽を覆う茨の蔦の存在を忘れるほどに・・気の遠くなる時の中で
ただ一羽生きてきた。
無音の園に響くは我の声のみ、光ある主の御言葉の代弁者。
その使命と栄誉があるのに、なぜに我の霧ははれぬのか・・
色を失う魂たち
地に堕ちる、極彩の蝶の群れ
群れから離れた一羽の魂が我の前を飛んでは過ぎる。
色は穢れ苦悩の色彩。なのに、眩いばかりに見えるのだ。
極彩の業、魂の眩きに
色のない静寂の霞

そして、蝶は堕ちる。
我を置いて、業に彩られし穢れの常世へ。
嗚呼・・
また一羽、輪廻に還る
嗚呼・・
安らぎから背を向けるその魂よ
我の存在を見ぬ者よ
小さき魂を止める言葉を、我は知らず
無言の鳴き声
霞に消える

茨のガーゴイル


180×140㎜/インク.パステル.ボールペン.ケント紙


gallery hydrangea企画「花に囁く物語Ep.3」
2023年6月2日(金)~6月11日(日)休廊:火・水
13:00~18:30(最終日17:00)
場所:東京都墨田区東向島1-3-5


嫉妬という疼き

嫉妬にかられることがよくある。
立ち止まっている自分と上に昇っていく友人や知人。
SNSなどを見てその活躍を見るたびに、胸が疼いて目をそむける。
動く事を辞めると決めたのは自分自身だったのに。

親を見送った後に「自分の事を考えた方が良い」と合う人すべてに言われた気がする。他人の事ばかり気遣い自分の事は後回しにしている様に見えたらしい。
2020年はコロナが始まったばかりで何もかもわからず不安な時期だった。
緊急事態宣言が発令され、ニュースでは施設などがサービス停止状態で外に出歩く事も控えるように言われている頃である。
自宅介護で疲弊している家族の記事を見る事が多かった。
私もその一人だったからである。
誰の助けも受けられない、この人を守るのは自分しかいない。
そんな使命感に縛られていたのではないか今では振り返る。
閉鎖的な環境は思考を狭め、精神を蝕む。
絵を描く以外はすべてやめるそう決めて数年生きてきた。

それが良かったのか、今でも分からない。
しかし、それしか当時は考えられなかった。
正しい事など、結果が出るまで分からないだろうし終わっても後悔しか残らない事はざらにある。

自由に歩けるようになり、自分の事を改めて見つめ直す機会を得て
あの頃の胸の疼きは動けない自分の自尊心を守るための嫉妬では無かったかと振り返る。
その成功には地に滲むような努力があり
その笑顔には同じくらいの苦悩があった
分かっているのに、思い出すことを否定していた
自分だけがと思いたかった
その反省と悔恨と
茨に縛られる鴉によせて

エルシオンと白い鴉を天の使いとして制作した個展
「天蓋の鴉」は詩画集のマガジンに掲載しています。
世界観は一緒なので宜しければご覧ください。




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