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妊娠初心者ガイド④『ホルモンの制御機構』

受精のお話をする前に、ホルモンの制御機構についてお話をしておきます。ホルモン制御にはフィードバックという機構があります。

Aというアクションがあり、それを行ったことによりBという結果が得られたとします。このBが良いとか悪いとか、多いとか少ないとかによって、Aというアクションを変化させることがあります。

例えば料理をするときに、なかなか食材に火が通らなければ、火の勢いを強くすると思います。火が通りすすぎて食材が焦げてしまうなら、火の勢いを弱くすると思います。

このように、あるアクションの結果起こった現象を評価し、その評価を『フィードバック』してもともとのアクションを調整することは日常的にあることです。

ホルモンにも同様の調整機構があります。ホルモン分泌の結果、エストロゲン値の上昇であったり排卵であったりの現象が起こるわけですが、このホルモン分泌の結果起こったことをモニタリングし、『フィードバック』することでホルモンの分泌量を調整します。

卵胞の発育と排卵については、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)で制御されているということは前項でお話しました。このFSH、LHもまた、フィードバック機構で分泌量の調整がなされています。


負のフィードバック機構

・FSHのフィードバック機構
FSHは卵胞を発育させるホルモンです。卵胞が発育した結果、女性ホルモンであるエストロゲンが増加します。このエストロゲン値は間脳の視床下部というところでモニターされています。視床下部がエストロゲン値の上昇を感知すると、卵胞が発育していると判断して下垂体への指令を減らします。その結果、下垂体からのFSHの分泌量が低下します。

FSHの低下には、卵胞を1個だけ発育させるという重要な役割があります。人間の体は二人の赤ちゃんを妊娠するようには設計されていません。1個だけ卵胞を発育させ、1個だけ排卵させるということは、安全に次の世代を産むという点からは非常に重要です。

エストロゲン上昇の結果、FSHの低下というネガティブな効果がもたらされているため、この機構を負のフィードバック、ネガティブフィードバックと呼びます。


正のフィードバック機構

・LHのフィードバック機構
LHは排卵させるホルモンです。LHの急激な分泌(LHサージ)を引き金として、排卵が起こります。卵胞発育の結果エストロゲンが増加しますが、エストロゲン値が持続的に上昇していることが間脳の視床下部で感知されると、卵胞が排卵しても良いほど十分に発育していると判断します。この結果、LHの急激な分泌が起こり、排卵が起こります。LHの急激な分泌は一時的で、時間の経過とともにLHは低下します。

エストロゲンが持続的に上昇した結果、LHの急激な分泌というポジティブな効果がもたらされているため、この機構を正のフィードバック、ポジティブフィードバックと呼びます。


卵胞の発育と排卵にかかわるホルモンは、このように制御されています。どちらかと言えば、正のフィードバックが特殊で、基本的にホルモン制御は負のフィードバックで行われています。これらに注目しておくと、排卵に関わる物事が少しわかりやすくなるかもしれません。

次こそは、『受精はどのように起こる?』ということをお話します。

妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
また次のお話でお会いしましょう。

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