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あじさいの思い出

「ほら、忘れずに紫陽花を持って行って!ちゃんと先生に渡すのよ」

紫陽花を見るたびに思い出す光景がある。
母が玄関先に咲いていた紫陽花を切り花にして、妹に託すのだった。
ひと学年下の妹とは同じ小学校に通っていたが、私に手渡された記憶はない。

子どもながらに、なぜ母は妹にだけ紫陽花の花束を渡すのだろう?と妹を羨ましく思いながら、でもその理由を聞いたことはなかった。

もう少し時間が経ってから、母が妹の引っ込み思案の性格を思って「先生と交流の場を持てるように」という計らいで花束を持たせていたのだと知った。「みなこはそんなことしなくても、逆にお喋りが過ぎるからね」というおまけつきで。

そんな妹もいつしか2人の息子の母となり頼もしくなった一方、相変わらず話をするのを面倒に思うらしく言葉は少ない(苦笑)。母の思いを知ってか知らずか、そのことを聞いたことはないけれど。

それにしても、近頃は梅雨空に映える花も色とりどりになったなと思う。
今だったら、母はどんな花束を作るだろう?なんて思いながら、雨の日の通勤も優しい気持ちで過ごせている。




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