底辺絵描きがSNSに疲れた話

最初に言っておくと、これは底辺の単なる私怨だ。自分で分かっている。
これは私が筆を折るまでの話。


私は底辺絵描きだ。
今 名前は伏せるが、とても大きい女性向けコンテンツの、これまた大手CP界隈のすみっこで細々と絵を描いて楽しんでいた。
そのジャンル専用のTwitterアカウントを作ったのは、同じ趣味の人と交流がしたくて、いろんな人の絵が見たかったから。最初はそうだった。

始めてみると、いろんな人たちの萌え語りや絵が刺激になって私も絵を描こう!というモチベアップにも繋がっていていい環境だったと思う。(これはあまりいい良い言葉じゃないと思うし私も死んでも言われたくないけど、)所謂神絵師という人たちの絵も流れてきて、支部を見るのも幸せな日々だった。推しCPが尊くて仕方なかった。


今思うと、あの頃に戻りたい。


アカウント開設をして少し経ったころ、ある1人のユーザー(A子)と知り合った。その人は筆が速くて、とにかく絵がうまかった。
私たちはほぼ同年代でもあり、話がとても合ってあっという間に意気投合した。
絵をあげれば互いに引用RTで感想を言い合い、こまめにリプをする。萌え語りをし合ったりふざけあったり、他のフォロワーたちからもコンビとして見られることが増えていった。
とても楽しかった。絵チャをしたり、もくりをしたり。

そこから転落していくのだが。

ある日、A子から興奮気味にLINEが入った。
それは『ずっと見ていた神絵師からいいねされた!』というもの。
その神絵師は推しCP界隈の大手絵描きだった。
フォロワーからのRTでもよく回ってきていたし、私も見ていた。
その時私は、純粋に「え!やったじゃん!!!」とお祝いした。尊敬している人から反応を貰うとそれは嬉しいものだ。


それから数日、またしてもA子からLINEが入った。
「神絵師からフォローされた!!!!!!」
そうか、と思った。
それからは神絵師とのリプ一つ一つに興奮し、ツイート内容も神絵師に寄ったツイートが増えていった。その頃からだ。モヤモヤするようになったのは。
神絵師に認知されると、今まで♡20くらいだった絵が、突然いいねが三桁超になる。
繋がりたいタグをしているわけでもないのにフォロワーが増える。
最初は「A子すごい!!」と思っていいねもRTもしていた。感想も今まで通り伝えていた。

それが。

A子からの私の絵への反応がなくなった。
今までのように感想を言ってもらえることもなくなった。感想への反応もかえってこなくなった。
恐らく、通知が大量に来るため私からの通知は通知欄の渦の中に巻き込まれていくのだろう。そして私は神絵師ではない。
神絵師からの絵の反応は、A子は一つも逃さなかった。
そして、神絵師1人に認知されると、それは芋づる式に繋がっていく。A子はその神絵師1人から、推しCP大手絵描きに次々と認知されていった。
ここまでくると、A子のいるTLに耐えられなくなった。

A子のことは好きだ。A子と話すと何かと気が合うし、本当に唯一無二だった。すでにフォロワーの域をこえて、しっかり「友人」だった。
でも絵が絡むとだめだ。
自分の絵に数字がつくというのは、直接的に自分の絵の価値を決められているようでつらかった。本当はそんなことなんてないのに。
私が自分の絵を1番に愛してやらないといけないのに、それができなくなっていた。
私は推しCPの絵が見れなくなった。推しの曲が聴けなくなってしまった。推しCPの絵を描くのをやめた。A子に「描いてよ!見たいな!」と言われていた絵を描くのをやめた。


そこで気づいた。


途中から、私はA子のために描いていた。
A子の好み、シチュ、CP。A子は見てくれるかな。どんな感想くれるかな。
そうやってA子のことを考えて描いていた。
そこでやっと、そうか、もう間違えていたんだ、と思った。
そうして私は何も言わずにアカウントを消した。


それからは、鍵垢でA子のいないTLで穏やかな日々を取り戻した。かのように見えた。
消したこともアカウントもすぐにA子に見つかったのだ。
ご丁寧に、「アカウント消しちゃったの?!どうしたの?!」という心配のLINEまで。
「疲れちゃったんだ」と伝えれば、「そういう時もあるよ。今はゆっくり休みな」と言われた。いや、あなたのせいで疲れてるんだよ。


そうして今。


私は界隈の神絵師、目に付いた絵の上手い人を片っ端からミュートしている。
A子はミュートして、非公開リストに1人だけぶち込んでいる。何か反応しなければいけないタイミングの時に反応するためだ。(A子は律儀に私との仲を細かくツイートしてくれる)
そのリストは絶対に見に行かない。A子のフォロワー数やいいねの数を見たら心が摩耗する。
A子の絵は反応しない。
なんてことない日常ツイートでもいいねがつく人だ。通知も切っているらしいので、絵なんて私が反応しなくても気づかない。そして向こうも反応してくることはない。
今はそうやってミュートしながら、LINEで推しCP語りをする毎日だ。
何度も言うが、A子のことは好きだ。大好きだ。
でも、出会うところを間違ってしまった。
私はSNSという環境のままでは、A子のことを完全に嫌いになってしまう気がしてしまって怖かった。

フォロワーのRTは、絵をたくさんRTする人は表示しないように設定している。
今は自分の描きたい絵だけを見ていたかった。
フォロワーの素敵な絵だけを見ていたかった。

ところが、キャラの誕生日やアニバーサリーなどでまた絵が数値化される。
それで自分よりもいいねの多いフォロワーを見るとミュートしてしまう自分がいた。
それがとてつもなく嫌だ。自分が嫌いになる。
そうやって性格がどんどん悪くなるのを感じた。


毎朝、何気ないおはよう、というツイートにおはようと返してくれるフォロワーがいることが嬉しかった。
絵を好きだと反応してくれるフォロワーがいることが嬉しかった。
私はA子より、そういう人を、大切にしたいと思った。


でもごめん。
もう、描けない。

私は底辺絵描きだ。絵描きにもなりきれない、底辺の悲しいオタクだ。
だいすきな推し。君の歌って踊る姿がとても好きだった。悲しいことばかりだった君に少しでも笑顔になってほしくて、たくさん笑顔の君を描いた。
だいすきだったよ。
絵を描くこともだいすきだった。

今までありがとう。
だいすき。そして、だいっきらい。


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