舞台「PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice 2」(2020/12/3〜4ソワレ、12/5〜6マチネ)感想

 まず最初に言わせてくれ! あのなあ、3係はシビュラくんのモルモットじゃねえんだよォ!!!!!

 一体、3係が何をしたって……何をしたっていうんですか!? 何もしていない!
 いやしたけど職務に忠実だっただけじゃんシビュラくんのバガバカバカ〜〜〜!!!
 うわーーーん!!! ありがとうございました!!!

 今回も色相濁っちゃったな……いやこぱす沼におって色相綺麗だったらマズイ気がするんで多少濁っててもいいか。良くねえ。

 というわけで、去年の舞台PPVVの続編にして、嘉納火炉監視官の過去について描かれた今作の感想を綴りたいと思います。
 書いてる人は前作舞台PPVVおよびPSYCHO-PASSアニメは映画も含めて全て視聴済みなので、なんの脈絡もなくネタバレします。

 個人的に続編は期待していたけど、まさかこんなに早く2が出るとは思わなかったというか、あんだけ気持ちよく壊滅しといてよく臆面もなく続き出せるな!? ってちょっと神経疑うんですけど、私もそこそこの人でなしなので、嘉納サンの過去編やるよって聞いたらもうこいつぁ見るしかネェ!! と勢いよく叫んでチケット4枚取った。
 かくして、四日連続で地獄を浴びることに。

 事前情報は限りなくゼロで当日に臨みました。
 ちょっと耐えきれずにTwitterの検索窓にタイトル打ち込んでみたら、地獄ってサジェストされてたけど、それは知ってた(知ってた)。
 前日譚とか約束されし地獄じゃんね?

 開演五分前からNND住民のやりとりが始まるの面白かった。あそこは日替わりで、タイムセールの団子を買ったり買わなかったりしてた。
 セットが良い。祇園とか遊郭の風情を模してるけど、厳密な時代考証はなく、古い日本文化のごちゃまぜって感じ。どことも特定できないし、する必要もないかな。
 御子柴がテーマパークみたいと言ってたのがしっくりくる。上っ面だけの世界。だが、そこがいい。

 冒頭の演出について物議醸してたらしいですね。内容は知らなかったけど、びっくりしたみたいなツイートを見ちゃってたので、ああこれかーって思いながら見てた。
 こんな時期に公演中止なんて言われたら信じる人いるだろうし、実際に公演中止です!って台詞で席立ってた人はいたね。
 不謹慎といえば不謹慎だ。確かにね。でも本当の公演中止だったとして、係員の指示に従わずに出て行くってのもどうなんだろうね……。
 私は状況によって制限される表現があってはならないと思うので、あの演出を非難したくないです。
 別に嫌ではなかったし、そもそもPPVVはお行儀のいい品行方正な作品じゃない。システムが人間をモルモットにする話やぞ?????

 OPがめちゃくちゃカッコいい。これの全景見たくて円盤買ったまである。
 色々好きなOP、キャストパレードがあるけど間違いなく3位以内には入ってる。
 よく跳ねるアンサンブルさんが多くてまじすごい(語彙力3)!!

 ストーリーは嘉納が公安局刑事課三係の監視官に任命されたところから始まる。
 公安局宛に届いたスーツケース、そこには政府の参事官の死体が詰め込まれていた。その死体には「トロリー・プロブレムを見過ごすな」とのメッセージが添えられていた。
 編成されたばかり刑事課三係はやがて、死体の発送元に、自然回帰主義者らが暮らすシビュラ社会から隔絶された特別自治区NNDが関係しているのではないかと疑う。
 視察の名目でNNDを訪れた嘉納たちは、NNDへの不信を高め、ここには隠された秘密があると確信するが――

 事前に地獄地獄って聞いてたけど、まあ今回は割と楽勝じゃーんって思ってた。
 光宗管理官がやられるまでは。

 うっっっっっそやろお前!?!?!?!?
 
 いや!! キャスティングの時点で気にならなかったと言ったら嘘にはなる!!!
 あれ? 蘭具くんの中の人おるやん? でもまあキャスティングを深読みしてもな……って思ってたけども!! 
 まさかの局長とグル、つまりはシビュラシステム側。いやいやいやいやいやいや。もう神宮寺さんと同じ台詞言っちゃうよ!!!
 一体なんなんだよこの世界!?!?
 もうわけわかんねえ……。

 その神宮寺さん、今回は人間だったね!
 いや私はあの〜中の人が刀の付喪神ってことしか知らなくてね……あれだけ動ける人につけた殺陣にしては手が足りないのではって思ったけど、よく考えたら人間なんだよな〜神宮寺さんは。
 NND幹部っていうから悪玉かあ? と思いきや、中身は割とガチめに監視官だった。独断で捜査に踏み切って、そのまま色相を濁らせてしまったがために居場所を無くしてしまう程度には。
 おいこらヤメローッ!! 九泉の雛形みたいなやつをお出しするなーッ!!(発作)

 雑賀先生の見立てだと思慮深く臆病。大分オラついてたのは自分を大きく見せるための虚勢なのかもしれない。
 光宗を殺した後のことはノープランだったし、正義を標榜しつつも投げやりというか、現状から逃れたい一心でしかなかったのかなあという感じがした。
 あの死体も救難信号だろうと雑賀せんせも言ってたしね。そういう意味でも神宮寺さんはすごく普通の人間だったなって思う。
 廃棄区画生まれの割に擦れたところがなく、普通の倫理観を持ち、普通の正義感があり、普通に自分と人類の幸せを願っていた。
 多分、NNDに取り込まれなければ普通に優秀な監視官として一生を終えたはずだし、間違ってもシビュラの裏側を知ってはいけない人だった。これを抱えて色相を綺麗に保てるほどに、神宮寺さんは強くもなければ悪でもなかった。
 今作での美徳の人は神宮寺さんだったと思ってるんだけど、悲しいことに美徳だけではPSYCHO-PASSの世界を生き延びることはできない。
 結果的に、犯罪係数300オーバーで嘉納に撃たれてしまう。

 あっ、手は少ないけど、動き自体はすごく綺麗で流石でしたね。嘉納とのやり取りも良かったし、何よりこの方の慟哭は結構好きなので日本で一番慟哭させたい若手俳優No.1だなって思いました(褒めてる)。
 いや私、叫ぶ演出自体があんまり好きじゃないし、耳障りな叫びってあるじゃないですか。それが味になることもあるけど、私はまず冷めちゃう方なので、聴けるってだけですごいです。
 全体的に、初日はずいぶん動きが硬い感じましたが、2日目からは滑らかに動く動く。やはり初日は緊張気味なのかな〜。
 個人的には席の良さもあって12/5の回が一番好きです。
 この日の神宮寺さんは悲劇の人で、シビュラの掌の上で踊っていたことに対して、すごく素直に悲しみ、怒りを抱き、その発露も鮮やかて、とにかく可哀想でした。
 12/6マチネでは感情死んでましたね。呆然というか、なんで?シビュラのことがさっぱり理解できないって感じ。

 嘉納サンも良かった、すごく良かったけどあれからPPVVに繋がるのまじで無理。無理だよ。嘉納サンの高笑い聴きながら、誰だよこんな話考えたやつ、絶対潜在犯だろ……って思った。
 
 嘉納サンの話します。が、もう地獄でしかない……。
 哲学的な問題を考えるには私は不勉強なんだが、トロッコ問題は結構見るやつですね。
 スイッチを切り替えて5人を救い、1人を見殺しにするか。もしくは、スイッチを切り替えず、5人を見殺しにするか。
 1人を見殺しにするとして、自分の意思でそれを行えるか? 当事者となることを避け、切り替えずに5人を見殺しにすることを選ぶのではないか? という思考実験のひとつ。

 PPVV2では、直接的に5人=研究者、1人=潜在犯と置き換えられている。
 でも多分、数そのものはあまり関係なくて、マジョリティとマイノリティと考えたほうが無難だろうか。
 そうなると差別の問題になり、純粋な命の数の話ではなくなる。実際、神宮寺は潜在犯が犯罪を犯してないにもかかわらず、無体な実験の被害者になることへの怒りから研究者に剣を向け、嘉納に当事者になるよう迫る。

 これって論旨のすり替えだよなあと感じるけど、シビュラ社会においてはサイコパスが正常なほうが善良で、潜在犯は隔離施設行きが常識なので、両者の命が平等でないのは事実としてある。
 あるが、監視官としての嘉納はシビュラに従い、研究者を守るべきだった。
 斎記監視官が、社会秩序を守るためにそうしろといったことは正しいし、嘉納の心や色相を守るためにはシビュラを信じなくてはいけなかった。

 だが、偽りの色相を持つだけの潜在犯で、執行官でもあった嘉納は、潜在犯を犯罪者とは割り切れず、研究者も潜在犯(神宮寺)も殺すという、誰も救えないルートに突入してしまう。

 監視官なって間もない任務でこれかよ……。
 シビュラの裏側を知り、3係の仲間を失い、NNDの研究者を皆殺しにした。それでもなお変わらない犯罪係数に疑問を持ち、やがて自分が人工的に作られた監視官である事実にたどり着くであろう嘉納のことを思うと、重いため息しかでない。
 序盤、部下との距離感がわからずにおどおどする姿から、最後の穏やかで諦観に満ちた前作の嘉納へと変わるのが恐ろしいほどに自然だった。
 自然すぎて、一瞬彼に起きたことはみんな幻だったのかなと錯覚するほどに。

 ※ちなみに12/4は狂気が強めにでていた。研究者惨殺シーンでは楽しそうに笑う。局長との対話でもうっすらと笑みらしきものが見えた。狂った元監視官は神宮寺のことだが、嘉納自身のことでもある。知ってるくせに、と内心馬鹿馬鹿しいと思っていたかも?
 12/5は神宮寺に触発されたかのように、悲しみが強く出ていたように感じる。研究者を殺すところでも苦しそうだったし涙ような雫が落ちたのが美しかった。直後の局長との会話でも、声が震えていて、泣くのをこらえていたように見えた。
 12/6マチネは無表情というか、感情が振り切れてしまい、虚無感が強い。研究者惨殺シーンでもあまり表情が変わらなかった。局長との会話にも覇気がない。
 
 そんなわけないと、PPVVで明らかになるわけですが、今回神宮寺が嘉納に与えた傷がでかすぎません??
 嘉納がヒューマニストに傾倒したのって神宮寺をやってしまった後悔が一番大きかったのかなってちょっと思った。

 もちろんシビュラの実験を良しとしないとか、人間らしく生きるのにシビュラは邪魔だとかいう気持ちもあるだろうけど、まず根本に自分の正解を見出せず、覚悟もないまま殺してしまった神宮寺への贖罪があって、それが嘉納を過度に反シビュラへ走らせたのかもしれない。

 そこに九泉がやって来る。同じく人工的な監視官である九泉は、もういない神宮寺に代わって嘉納の真の相棒たり得た。ひとり秘密を抱える嘉納が、九泉に縋りたいと思ったところで、誰が彼を責められようか?
 しかし九泉は嘉納の思惑とは逆に、シビュラの祝福を肯定してしまうから、嘉納は二度、相棒(候補)を撃ち殺したんだよな。無理がすぎる。

 どうしてそんな重い業を嘉納サンに背負わせるんですか……嘉納サンが何したっていうんですか……?
 嘉納サン……顔が良いね……(現実逃避)
 和田琢磨氏、マジで顔がいい。嘉納監視官役は最高だな、うん。はい。最高。

 ところでさっき神宮寺を九泉の雛形って書いたんだけど、神宮寺よりも嘉納のほうが初期の九泉みたいな言動してるなって気づいて泣いちゃった。
 九泉が自分が母親を殺しても平然としているエリートより潜在犯のほうがずっとまし、と言い切って3係刑事の矜持を手に入れたのに、嘉納はそうなれなかったんだ。
 堕ちていく一方の嘉納にとって、九泉は眩しく、同時に深く憎んでもいたのかもしれない。
 えっ……嘉納サンの救いはどこに……?

 問題は蘭具くんでさあ。
 えーもーちょっともー、嘉納サンの地獄はわかってたし覚悟できてたけど、そこでまさかの光宗全身義体からの蘭具執行官って何さ!?
 九泉は蘭具を気に入ってる感じでやってたと仏の鈴木さんが言ってだけど、こうなると蘭具くんが監視するためにわざと九泉に取り入った説出てくるやん???
 思えば嘉納は蘭具との絡みがあまりなかったな。いつからその構想があったのかわかんないけど、嘉納は蘭具の正体を知ってたのだろうか……。
 他人の空似にしてはタイミング良過ぎるし、正体知ってても知らんくても避けるよなあ。
 もう怖いよ。何なの。3係を使って何するつもりなの。もうやめて!!!(いいぞ! もっとやれ!!)
 なんか演出の方が三部作って言ってたから、蘭具くんについて触れられるのかなあ。
 次に何がくるのか全然想像つかないな……。

 他の執行官についてもちょっと書きます。

 まず、逆咲さん。
 蹴りが美しいースタイルいいー。
 しかし、台詞の抑揚が一定で、耳で聞いているだけでは、嘉納についてどう感じているのかよく分からなかった。
 初日はえっなんで? いつ嘉納に心を許したの? ってかいきなり死んだ……って感じであまり印象に残ってなかった。
 2日目からは最初から実績は認めていたけど、それを素直に出せないツンデレちゃんだと気づいたし、生き残ってたら嘉納とそれなりの関係を築いていたかも。まあ、死んじゃったけど。
 確か、嘉納のコーヒーを受け取ったのって逆咲だけだった気がするので、嘉納を受け入れた人間はみんな死ぬみたいな呪いですかね……?

 周麟太郎さん、見た目はちょっと怖いけどしゃべるとひょうきんな楽しいおじさん。めちゃくちゃ頼りになるいい人だから死んでないといいな……。たしか自分でコーヒーを入れてたので、死んでないよ!!(コーヒー呪い説やめろ)
 12/6マチネでいきなり御子柴のことをみこちゃんって呼んだのでびっくりした。可愛い。完全にみこちゃんで遊んでる。作中での数少ない癒しポイント。

 御子柴夕くん。豆柴。犬っぽい。大変可愛い。PPVVの井口パイセンみたいになったらどうしようと思ってたけど、この人は嘉納からのコーヒーをスルーし、3係唯一の生存確定ルートに入ったのでもうどこへ行っても死にそうにない。死亡フラグをへし折る光の執行官(?)なので他の係に移りそう。
 基本的に3係は呪われてるから、御子柴君には生き延びて欲しさある。

 この執行官との関係性の描き方が不十分という感想見たけど、うーん……どうだろうな?
 確かに初日はみんななんかいきなりピンチになってしまってついていけてないと感じたんだけど、知ってる状態で見るとちゃんとチームになりそうな気もする。そのまえに壊れちゃったけど。
 ただてさえ、嘉納と神宮寺で飽和状態だから、執行官は少なめ、描写も控えめでちょうどよかったのではいかと思います。
 受け取る側が、書いてない足りてないと感じるときは、大抵発信する側が削ってる箇所なので、本筋じゃないってことだろう。多分。

 総評として、やっぱりPSYCHO-PASSだったし、とても好きな舞台でした。
 制作に携わった方々お疲れ様でした&ありがとうございました!!

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