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吾妻連峰縦走:南のアングル、北のアングル

前置きが長くなってしまった。
吾妻連峰は県境の山である。

福島県と山形県の間の長い屏風のようで、
もしこの山脈がなければ
もっと福島県(少なくとも会津地方)は東北色が強くなったはず。

吾妻連峰で有名なポイントは
日本百名山で知られる西の端:西吾妻山(標高2,035m)と
「魔女の瞳」という異名をもつ五色沼だろうか。
といっても地元の人か山好きでなければ
知られていないか・・・

私がこの山域を初めて意識したのは
昨年10月、台風19号の直後に
福島県の磐梯山に登った時だった。

台風の直後で厚い雲が天空に居座っている中、
かなたに屏風のように横に広がる吾妻連峰だけが
太陽の光に照らされていた。

それは中世の宗教画で
天使の祝福を受ける聖母マリアのような光景だった。

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そして猪苗代から見ると、
文明からほど遠く、周りの山に守られた秘境という印象を受けた。

「あづま」もしくは「あずま」という言葉は古い。
遅くとも律令時代には東国を指す言葉として使われていた。
いつしか磐梯つまり現在の福島県を指すようになった。
名前の影響もあり、吾妻山は「福島県の核心部」
というイメージを私は持っていた。

時計の針を動かすこと数カ月、
私は山形県米沢市から吾妻連峰を眺めていた。
北側から見ると吾妻連峰はまったく違う印象を与える。

まず町に近い。
里山という感覚である。
そして麓のロープウェイまで行くと登る人が多い。
コロナ禍直後の6月にも関わらず、
ロープウェイの列が20mほど道にあふれていた。

登山客の層でいうと、
中高年のカジュアルハイカーが多い印象だった。

福島県から見ると人をひきつけない神秘の北限、
山形県から見ると身近な里山。

吾妻連峰の由来をたどると、
「吾妻地方の核心部」という意味ではなく、
米沢から見た「吾妻地方の玄関口」ということではないか。

そんな思いを抱きながら
吾妻連峰の縦走をスタートした。

<続く>

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