第1252回 ここからはじまる

1、フォーラム参加記

本日は公益財団法人日本博物館協会主催の緊急フォーラム

「文化審議会答申『博物館法制度の今後の在り方』を読み解く−博物館の振興に向けて–」

を拝聴いたしました。

当初500人の定員でしたが、反響が大きく、急遽1000人まで枠を広げるという事態に。

オンライン開催だからこそ、関心のある人がここまでコミットできたということもあったのでしょう。

実際には申込者数は600名を超えていたとのこと。

後半の質問者にはデンマークの大学に所属されている方もいらっしゃいました。

2、経緯は

まずそもそもの経緯を説明しますと、

博物館はこうあるべき

ということを定めた基本法「博物館法」は1952年3月1日に施行されたもので

もはや70年が経過するので時代に合わなくなっている、ということなんです。

法律ができたころは全国の博物館は200ほどだったのに対し、現在では5700館もあり、年間入場者数は3億人を超えるとのこと。

誰でもどこでも「文化」に触れられるように

という方向性から、

「多様な学びの場」「地域の文化観光拠点」など求められることが複雑化、高度化してきたということなのでしょう。

そこで2019年から文化庁の諮問機関である文化審議会の中に

「博物館部会」が設置され、法律の改正に向けて有識者の議論が続けられてきた、と。

そしてようやく答申が公表されました。

https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/000148971.pdf

その中身に対して現場の博物館から声が上がっているという構図になります。

3、異業種交流会

フォーラムでは館種ごと、科学博物館、動物園・水族館、植物園、天文台、歴史民俗系、美術館といった各種業界団体の代表の方が

それぞれの実情と、今回の法改正に対して期待するところ、課題と考えるところなどを短時間で報告していきます。

やはりそれぞれの博物館が多様で、問題意識に差があるところも少なくないのはよく伝わってきました。

そんな中でも「まとめ」を述べた日本博物館協会の半田専務理事は

ここからがスタートだ、という意識の共有ができたことを高く評価されていました。

残された課題は多く、

博物館の中でも「登録」博物館を増やすということであったが、その基準はどうなるのか、

「登録」になることができない小規模な博物館はどう支援していくのか

中長期的に検討していく、とされた学芸員の資格問題についてはどのくらいの時間軸で検討されていくのか

と山積していますが

今回数多くの関係者がオンラインのフォーラムに集ったことで

タテヨコの連携が生まれるきっかけになったのではないか、との言葉も。

そして各々が広く国民・社会に発信していくことが重要になってくる、と総括されました。

4、時代の変革期にいること

TLを見ていくと、

結局は現場をわかっていない議論だ、とか

課題の多くが先送りされたこと

などを後ろ向きの論調で断じる意見が多かったように思います。

ただ、私自身は逆に希望を感じましたね。

みんなが同じ問題を議論している、この状態がもうね。

明治維新の頃の、戦後の復興期の、制度を新しく作っていこうという機運を思い起こされるようで。

「学芸員」とは名ばかりで普段は本庁舎にいて、資料とも離れているような仕事をしている私には「登録」なんて夢のまた夢ですけどね。

いずれにしても今後の動きを注視していきたいと思います。


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