第1222回 本当の文化施策とは
1、オンラインシンポジウム参加記
本日は先ほどまでこのシンポジウムに参加していました。
備忘録的に感じたことをまとめてみました。
2、実務に追われて荒んだ心に希望は必要
シンポジウムの形式は3名の実践者の短い話題提供から始まって
具体的な事例報告を含めて議論が展開していきます。
トップバッターは岡山県の瀬戸内市民図書館の村上岳氏。
この図書館は2017年度にライブラリーオブザイヤー大賞を獲得したとのことで
実物資料と図書資料の「融合」という点で非常に先進的なモデル。
2018年のレポートですが個人のブログで詳しく紹介されていました。
図書館の床に出土状況を復元した考古資料の展示があるなんて!
報告の中でも、子どもが興味を持って、「これなぁに?」と尋ね、
親が説明しようとじっくり見て解説文をしっかり読んでくれる、ということでした。
他にも展示ケースが書棚と隣接していたり、
企画展とそれに関する郷土資料が近接して配架されるなど、一見して教育普及効果が高いことがうかがえます。
うちでもこれをやりたい、そう思えてきます。
瀬戸内市は人口3万5000人という規模の小さな自治体なのに、
山鳥毛の太刀のクラウドファンディングでも話題になるなど
今回のシンポジウムのキーワードともなっていた「文化政策」に富んだ町であると感じました。
続く宮城県富谷市の新出氏は新たに設置予定の図書館準備室所属。
かつて図書館職員は自館収蔵資料の研究を通じて郷土史家でもあり、地方文芸の担い手でもあった、との指摘。
主題専門性、図書館員も専門分野を有していることが理想とされた時代もありました。
このあたりは小規模自治体で博物館学芸員との距離が近い図書館のあり方を考える上で必要な視点です。
そして三人目の登壇者が北海道浦幌町の持田誠氏。
新人司書を学芸員が育成する、という実践例が語られました。
図書館が有する機能の一つであるはずの地域資料の収集についても
実践を積んでいかないと何が「地域資料」として捉えられるかの判断基準も形成されない、という指摘は頷けるものでした。
他の研究会でもお見かけした広域行政としての「博物館運営」という現状での最適解が提示されていました。
一方で「広域行政」が諸刃の剣となりうる可能性についても言及されます。
「文化政策」とは名ばかりで施設の維持管理に終始する行政機関が多いとの私的には耳が痛い思いです。
これまで以上に主題に据えていかなくてはいけない「生涯学習」と
必要に迫られているやらざるを得ない「文化観光」の中間に
本来「文化政策」がある、という図解は非常に腑に落ちるものでした。
小さな自治体の学芸員や司書に求められているのは
医療に例えるならば、地域の総合診療医として、専門家のネットワークハブになる一方で
一つの分野、個人の専門分野では世界に通じる窓になることができる存在ではなくてはならない、という指摘は我が意を得たり、という思いです。
3、我が町こそこの処方箋が必要だ
今回のシンポジウムを受けて、我が町の現状を振り替えてみると
まさに描かれている方向性に向かうべき状況にあるな、と思い知らされます。
博物館機能としては近隣自治体と広域行政を展開する方が非常に効率のいいところが見えてきます。
とくに我が町は「郷土資料館」としての位置付けよりも「観光向け展示館」という性格が強い施設が求められているとことですので
図書館にこそ地域住民が求める郷土資料を充実させていく方が望ましいように思えます。
そのためのマネジメントが求められているのだな、と現状を認識できたことが最大の収穫でした。
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