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五行通背拳『小連環』を考える

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”五行通背拳『小連環』を考える-修剣痴武術の形成・発展・継承とその変容についての一試論”。関連の論考はこちらにまとめておきます。
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五行通背拳『小連環』を考える-修剣痴武術の形成・発展・継承とその変容についての一試論(その参)

五行通背拳『小連環』を考える-修剣痴武術の形成・発展・継承とその変容についての一試論(その参)

はじめに今回の投稿では、まず1980年代に撮影されたもうひとつの『小連環』演練動画をとりあげ、その特徴について分析したいと思います。

次に、前回投稿した林道生老師演練の『小連環』動画とを比較しつつ、二人の通背拳家の『小連環』の違いについて考えていきます。

社文起老師演練『小連環』の特徴についてまず、動画をご覧ください。演練者は社文起老師です。

社老師は1944年生まれ。1953年に高玉春老師

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五行通背拳『小連環』を考える-修剣痴武術の形成・発展・継承とその変容についての一試論(その弐)

五行通背拳『小連環』を考える-修剣痴武術の形成・発展・継承とその変容についての一試論(その弐)

はじめに-套路『小連環』の位置づけ

『小連環』とは計26の動作から構成される大変短い套路であり、普通の速度で演練すれば、わずか20秒から30秒足らずで終了してしまうものです。

しかし、この套路は、短いながらも修剣痴系五行通背拳の真面目を伝えており、修大公が編纂した套路の代表として必ず言及されるものでもあります。

更に『小連環』は、通背拳のいくつかの技法の基礎的組合せ(連環)パターンを習得する

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五行通背拳『小連環』を考える-修剣痴武術の形成・発展・継承とその変容についての一試論(その壱)

五行通背拳『小連環』を考える-修剣痴武術の形成・発展・継承とその変容についての一試論(その壱)

先日投稿した「修剣痴五行通背拳に関する”4つの発展段階”について(序論)」では、大連の通背拳家である閻子奇老師(劉泊泱徒弟。元大連市武術協会主席。)が示された「修氏五行通背拳的发展经历了四个阶段」説を御紹介しました。

この「修剣痴武術の四段階発展説」は極めて示唆に富んだ指摘であり、これを基本的な仮説として措定しつつ、修剣痴の五行通背拳がどのように形成され、発展していったか、また、これが後世、どの

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