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これがワイのエンドゲームや。『MARVEL ULTIMATE ALLIANCE 3』

 片割れを使い忘れていたニンテンドーカタログチケットの有効期限が3ヶ月後に迫っていたので、対象タイトルの一覧を眺めていたところ、とあるサムネイルが目に止まった。マリオやカービィ、ドンキーコングが並ぶタイトル群の中ではどうしても浮いてしまう頭身と、任天堂っぽくなさ。しかも開発があの「Team NINJA」ということで、気がついたら引き換えとダウンロードが完了していた。

 正式なタイトルは『MARVEL ULTIMATE ALLIANCE 3:The Black Order』という。シリーズ三作目らしく、一作目は日本でもPS3やWii専用ソフトとして発売され、二作目は残念ながら未発売、歯抜けの状態で三作目がswitch専用タイトルとしてローカライズされるという、マーベルのゲームとしては中々珍しい一品だ。

 本シリーズはマーベルコミックのユニークなヒーロー4人でチームを組んで敵を倒していく、アクションRPG。キャプテンアメリカやアイアンマンといったアベンジャーズ、ウルヴァリンやサイクロプスといったX-MENに所属するヒーローを自由に編成し、最近のMCU作品でおなじみのヴィランと激闘を繰り広げる、という内容になっている。副題の「Black Order」でピンときた方も多いだろうが、本作のメインストーリーのベースはあの『インフィニティ・ガントレット』であり、インフィニティ・ストーンを巡ってサノスと戦い、宇宙の平和を守ることがプレイヤーに課せられた使命なのだ。

 本作は発売は2019年であり、言わずもがな『エンドゲーム』が公開された年でもある。本作はMCUをなぞるゲームではないにせよ、このタイミングでサノスをメインヴィランに据えた作品をリリースするということは、皆さんご家庭で自分だけのエンドゲームをやってくださいよ!というセールスポイントがあったことは邪推してしまう。

 もちろんハードの性能上、映画のように全ヒーローを集結させることは不可能だけれど、ゲームはゲームなりに「俺エンドゲーム」を作り出すことができる。例えば、ナイトクローラーとゴーストライダーとパニッシャーとモービウスがサノスを倒す映画はこの世に存在しないが、少なくとも俺のswitchの中にはあるし、このゲームを買った人の数だけの「俺エンドゲーム」が存在するはずだ。ケヴィン・ファイギは前人未到の奇跡を現実のものとしたが、それを超えるカオスなアッセンブルは、プレイヤーの手に委ねられている。

どんなにデカい顔していても、俺アベンジャーズには勝てないサノスさん

 本作の魅力の一つが、多数登場するプレイアブルのヒーローと、敵役として登場するヴィランの豊富さだ。人選もMCUや20世紀FOXが手掛けるX-MENシリーズ、ソニーズ・スパイダーマン・ユニバースでおなじみのヒーローが大体揃っているし、DLCを導入すればムーンナイトやブレイドといったMCUフェイズ3以降に登場したヒーロー、今後映像化が予定されている作品のヒーローも参戦するため、予習にもバッチリという偶然が起きている。

 ヴィランサイドにはサノスとブラックオーダーをはじめとし、ドクター・オクトパスやドルマムゥ、ウルトロンといった映画版のメインヴィランが中ボスとして登場し、ロキやマグニートーといった一部のヴィランは条件を満たせばプレイアブルキャラとして採用することができる。というか、ぶっちゃけネタバレするとサノスも自軍に引き入れることが出来るので、本当の意味でのドリームチームを結成できるのが楽しい。

次々と登場するヒーローやヴィランとの出会いそのものが楽しいゲームだ。

 アクション要素としては、やはり開発元がそう思わせるのか、所感としては「易しいNINJA GAIDEN」といったところ。弱・強攻撃とヒーローごとのアビリティ、ガードと回避を駆使して闘う本作、無双ゲーほど脳死で何とかなるものでもないが、NINJA GAIDENほどに厳しくもない感じで、手触りとしてはカジュアルな中難易度。ヒーローの強力なアビリティで複数の敵を薙ぎ払うこともできる反面、思いの外こちらの被弾ダメージが重く、画面外からの攻撃が飛んでくることもあり、気を抜くといつの間にか死んでいる、ということが相次いだ。

 一部の強敵やボスはいわゆるアーマーゲージがあり、それを削らない限り基本はスーパーアーマー状態のため、こちらが一方的に攻撃できる機会は(一部の強すぎる遠距離攻撃を除き)実は少ない。そのため、敵の動きを見極めながら適切に回避や防御を行い、隙を見ては攻撃して、アーマーを削りきったら一気呵成に攻め立てる。

 攻略の基礎はこれで事足りるものの、ヒーローのアビリティ同士をかけ合わせた「シナジー」と呼ばれる攻撃がとくに強力だが、ゲージの消費量も多いため、いざ!という時に使えないと効果的にダメージを与えられない。適切な回避とリソース管理がとくに求められる序盤は、映画のようなバトルを再現するのが難しく、面白さを感じづらい時間が存在するのは確かだ。

アビリティはヒーローのレベルが上がると解禁されるため、
序盤はそもそも選択肢が少なく、爽快感を感じづらい。

 本作には大勢のプレイアブルキャラが用意されていることは前述した通りだが、その快適性に関するケアはやや不足している。アビリティの充実やステータスの強化といった「強さ」はヒーロー個人のレベルに依存する部分が多く、ゲームが進めば進むほど初期に参戦したレベルのキャラをスタメンに登板する機会が乏しくなりがちで、特定のヒーローを愛着もって使い続ける分には問題ないが、ステージやストーリーの展開に沿ってヒーローを切り替えようとすると、ゲーム後半にレベル一桁台のヒーローを持ち出すことになり、戦力としては物足りない、という事故が起きやすいのである。

 ヒーローに経験値を付与するアイテムは用意されてはいるものの、総勢キャラ数を思えば意図的に稼ぎをしないと足りていないし、全ヒーローに強化内容を共有できる「アライアンス」の解放も用意されているが、敵味方のレベル差を補えるほどの水準を満たしておらず、最低でもレベル20まで育てて全てのアビリティを習得しない限り、快適な戦闘をこなすことは難しい。効率的な経験値稼ぎの手段こそあるが、最大47名分やりたいか?と言われると流石に「否」かな……。

どことなくスフィア盤を思い出させるアライアンス画面

 各ヒーローの個性はバッチリ表現され、自分だけのチームを作りワカンダやエグゼビア学園を冒険し、敵をバッタバッタと打ち倒すのは気分爽快で、コミックの知識がなくともここ最近の映画を追っていれば問題無く楽しめる。間口は広く、ハードルの低い本作は、switchで遊べる手軽さも加味すればかなりオススメしやすいマーベルゲームだ。

 オープンワールドで再現されたNYを親愛なる隣人になりきってスイングするワンダーこそないが、クロスオーバーの手厚さや時折露わになるニッチさ(なんとルーク・ケイジやエルサ・ブラッドストーンがいる!!)は本作ならではの味の部分であり、メインストーリーを進める間は「次はどんなヒーロー/ヴィランが!?」というワクワクがずっと続くため、飽きさせない。エンドコンテンツを制覇するにはかなりのやりこみが要求されるが、マーベル映画を自分で遊べるような体験だけを抜き出せば、本作はその需要にまっすぐ応えてくれている。

 特定のヒーローに愛情を注ぐも良し、気分で取っ替え引っ替えしても良し。芳醇な歴史を持つマーベルコミックスの紙面からゲームへと舞台を移した一大活劇を、自分の手で再現するのは一人のファンとしても無常の喜びだ。とくに、「アベンジャーズだけがマーベルヒーローじゃないぜ!」な方にこそ刺さる一本かもしれない。購入を検討する際は参戦ヒーローを確認の上、自分だけのアベンジャーズを選抜してからのプレイをオススメしたい。

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