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ほぼミリしらで観た『劇場版 新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』に腰抜かした話

 2019年12月下旬、映画ファンばかりをフォローした我がTLはスターウォーズの話で持ち切り…と思いきや、みなネタバレに配慮しているのか遠回しな言葉が並び、その代わりに一本のアニメ映画が注目を浴びていた。「児童向けの顔をした中年向けアニメ」「対象年齢が完全におれたち」「東宝版アベンジャーズ」そんなワードが飛び交う劇場版、めちゃくちゃ気になるし、「ワケは言えませんが絶対に観てください!!」とDMが届く始末。

 とはいえ、TVシリーズが全76話もあり、予習する暇もなく尻込みしていたらあっという間に年は明け、急遽予定が無くなった夜中にレイトショーで一人観に行ってきたその勢いでこのテキストを書いていますが、劇場版シンカリオンはマジでヤバいです。「腰抜かした」は比喩ではなく、映画が始まって1分半に起きたとんでもない出来事のせいで、座席に座ったままズッコケる羽目になりました。すげぇよ東宝。

 題名の「ほぼ」ミリしら、というのは理由があって、エヴァ新幹線こと「500 TYPE EVA」が登場した回だけ録画して観ていたんですよ。だからシンカリオン=変形する新幹線ロボという知識は得ていたし、主人公の少年がめちゃくちゃ鉄道&新幹線マニアなのもなんとなく覚えていた。逆に言えば、キャラクターの名前や目的も知らず、予告編さえ観たことのない、ほぼほぼ丸腰の状態で観て、劇場で笑い転げることになったのでした。


そもそもシンカリオンってめっちゃ面白いのかもしれない

 一体何が私を劇場で興奮させたかの話は一旦置いておいて、何も知識がない状態でも劇場版シンカリオンは面白かったです。我々のよく知る形状の新幹線が連結・変形・合体するシーンはそりゃあもうアガるし、今回の劇場版はTVシリーズのキャラクターが再結集して新たな敵とぶつかるパターンのそれで、「ははーんコイツは元々敵側にいたけれど今は味方側にいるキャラだな」「コイツは主人公の元ライバル枠だったけど今はデレ期入ったな」とスイスイ頭に入っていく親切設計。名前はわからずとも、性格や口癖、容姿などで何となく背景が推察できるため、コロコロコミック連載アニメに慣れ親しんでいた20代後半世代は初見でOKです。

 シンカリオンの運転士はほとんどが子供+主人公のお父さんなのだけれど、そんなキッズたちサポートするのが我らがJR東日本。緑川光ボイスの偉いメガネの人が「我々JR東日本も認知していない車両が…」とかイイ声で言ってくるので爆笑しました。ネルフめいた内装の指令室と変形する新幹線を保有するJR東日本、めっちゃ就職したさあるでしょ。

 このように外装はトンデモ設定のホビーアニメなのだけれど、実際の地名や車両名がバンバン出てきて、製作陣がそもそも新幹線や交通網に知識や愛情があり、それを一つの作品に注ぎ込んでいる印象を受けました。「青函トンネル」が重要なキーワードとして登場するのも、描写に誤りがあればファンから突っ込みを入れられてしまうため、周到に下調べをしたのだろうと。きっとファンにはたまらない蘊蓄だらけで、ここから新幹線を好きになっていく子供たちも大勢いるはず。児童向けアニメとしての誠実な態度に、シビれました。

 語られるメッセージもすごく現代的で、それは「好きなものは好きなままでいい」というもの。最近気づいたのですが、私自身がこういうテーマに弱い。男の子なのに可愛いものが好き、のように「なのに」という偏見や押し付けを否定してありのままを肯定してくれる話。キンプリSSSのレオくん回とかのアレです。好きという気持ちを抑圧させず、全部を肯定してくれる優しい眼差しは、作り手である大人たちから子供たちへの応援歌に違いない。

 こちらもいい歳こいて仮面ライダーとか大好きな手前、こうストレートに「好きなままでいいんだよ!」と言われると涙腺にクる。2018年公開の『仮面ライダー 平成ジェネレーションズFOREVER』は「仮面ライダーを大好きでい続けたおれたち」を公式が肯定してくれるという素敵すぎる作品で、それはもう泣かされたわけですが、それに近いものを感じる。シンカリオン、ナメてたアニメが実は泣ける枠でした。

コラボキャラクターがヤバすぎる

 そろそろ本題に入る。本作にはゲストキャラクターが主に3人いて、ポスターにも映っていない3人目…いや3体目がスゴいことになっていて、この映画を薦めてくるフォロワーたちが言葉を濁していたのもまぁ頷けるサプライズ具合。ここからはネタバレを含むため、鑑賞済みorどうしても知りたい方だけ読み進めてください。シンカリオンはいいぞ

 まずはすでに公表されている方々から。初音ミクさん。北海道でライブやったり、シンカリオンにも乗っていたりする運転士兼ボーカロイド兼アイドル。ライブシーンの映像の作りこみがアイドルアニメのそれでビビる。同じバーチャルでもVTuberとか出さないあたり、このアニメの対象年齢の若干の高さが伺えてとてもいい。

 次に、エヴァンゲリオンの皆さん。シンジくん&TYPE EVA が再登場するのは何となく知っていたのだけれど、前述のコラボ回に登場した洞木三姉妹と綾波とアスカも出てくるし、TYPE EVA の変形シーンは「残酷な天使のテーゼ」がちゃんと流れる。残テ、映画館の大音響で聴くのが初めてだったので思わずガッツポーズしました。シンカリオンに出てくるシンジくん、原作とは打って変わってとっても爽やかなお兄さんキャラなので、きっとこの世界にはネルフのわるいおとなたちもいないし、お父さんとは関係良好なんだろうな…。たぶんゲンドウさんと釣り行ってる世界線のシンジくんです。

 で、いよいよ核心のサプライズキャラの話しますよ。警告しましたからね??

 要はですね、ゴジラ出てくるんですよ。しかも映画の冒頭、北海道で謎の地震が発生しミクさんが出撃すると、吹雪舞う中もうそこにいて、伊福部昭の例のテーマと共にドーン!!!と出てくる。深夜のレイトショー、シアターが貸し切りでよかったです。まったく遠慮のない声量で「マジで!?」って言いましたから。

 エヴァチームやミクさんよりも破格の扱いで、北海道での突然の出現シーンに続き、主人公ハヤトとお父さんのシンカリオンとのガチ対決もありつつ、クライマックスバトルにも参戦という大盤振る舞い。デザインも特徴的で、シルエットや顔立ちは平成VSシリーズ、尻尾の付け根の太さや先端はシン・ゴジラ、背びれは雪の結晶を思わせる形状というハイブリッドな本作オリジナルのデザインで、「ユキノ(雪の)ゴジラ」と呼称される。ゴジラと言えば何かと寒さに弱い印象でしたが、今回は雪をまとった新しい怪獣王に出会えます。ぶっちゃけこれだけで入場料金の元が取れる、出血大サービス。

 思えば、初代や84年のゴジラは電車を持ち上げるシーンがあったり、『シン』では在来線や新幹線をはじめとした日本インフラがゴジラを追い詰める「ヤシオリ作戦」が観客の心を掴んだりと、何かと列車に縁のあるキャラクターでした。そのゴジラがついに電車と対決し、共闘するという歴史的快挙!!こんなスゴい映像を観せられては、何も言えません。

 シンカリオン、TVシリーズの続編であり集大成のはずなのに、東宝の自社IP&配給作品のキャラクターを盛り込んだお祭り作品に仕上げて、それでも一本筋が通っている、驚異的なバランスです。一体だれがこんなクロスオーバーをと思い調べたら、脚本が『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』の下山健人さんでした…。神かよ…。

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