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数的不利、それでも見せた魂 2020 J1 30th Sec

J1第30節。ACL集中開催の前の最後のリーグ戦。チームはこの試合の後およそ一ヶ月、日本を離れることになる。


前節、八面六臂の活躍だった水沼の続けてのスタメン入りが目を引く。その他の選手の入れ替えは想定の範囲。今や控えも頼もしいメンバーである。

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アウェイでキックオフ。

立ち上がりからお互いに相手のボールコントロールを許さないプレッシング合戦の様相となる。

この序盤こそ先にCKを取られるなどしたのだが、相手のプレスに出る動きを利用してその背中側のスペースを使いテンポ良く繋ぎながら前進できるようになる。15分を過ぎる頃にはワンタッチパスが増え、相手を自陣に押し込む場面も増えてくる。

うちのプレスは配置としてはハマっていない。しかしこの日改めて感じたのは、強度は配置を凌駕するようなものでもあるということ。

3356のマルコスの守備などはそれを物語るものでもあっただろう。奪った直後、右サイドから開いた中央寄りのスペースを上手く繋ぎながら水沼がボックスへ侵入。シュートまでは行けなかったが惜しいシーンだった。

スピード感のある展開で好機も作りだすが、プレス合戦は変わらない。互いに片手で数える程度のシュート数に収まったが、緊張感のある締まった内容の前半… であったのだが。

38分。後方のビルドが引っ掛かり、裏に蹴られて抜け出されかけたところ、シンが触れず、高丘がわずかにボックスの外で手を使ってしまう。これにより高丘は一発退場となってしまった。

代わってGKにオビが入り、そのために水沼が外れることとなる。



緊迫したテンションの高い試合。だが残念ながら実質的にこの退場が趨勢を決定づけてしまった。

しかしながらチームは数的不利をものともしないかのように守備強度を保ち、また攻撃で前で行こうとするスピリットを見せる。

相手は数の優位を前からのプレスに表現する。しかしうちの前線も強力なので、その被プレスを回避すると同時に前線へ早いタイミングで送れば疎に近い状況になり一発でチャンスにもなる。49分にエリキがファウルを受けるまでの一連のプレーなどは極めてロジカルな選択だった。

それでも押し込まれるのは仕方のないところ。52分には相手のクロスと続くボックス内でのプレーで、触ったところが相手に渡ってしまいシュートを許してしまった。それがオビのニアサイドを抜き先制される。

それでも相手陣内でプレーできないわけではない。一人少ないながら今のうちの素晴らしいところで、先制を許してからそんな場面も見せる。その中で得たCKをシンがヘッドで決め、58分に何と 1-1 、同点に追いつく。



この後、幾度も押し込まれCKを含み危険に晒されたが、なんとかそれらを食い止める。

74分に得た千載一遇のチャンスは決めたかった。ファウルを受けたリスタートから中央を経て再度ケニーの右サイド。長い縦パスに反応したサントスがどうにか自分のボールにすると、ボックスに到達していたエリキがバックステップでフリーになりそこへピタリのパス。

だがエリキが放ったシュートはわずかに左に逸れていった…



勝ち越されたのは89分。相手CKを跳ね返すものの、サイド経由で再度中央に放り込まれたところでボールに先に触ったがクリアしきれずシュートされてしまった。

この場面は失点(得点)の一つのパターンである。

CKやクロスを跳ね返して一旦ラインを上げる。そこで繋げればいいのだが、相手に渡って時間をかけずに再度放り込まれると、中央の選手配置がアバウトになるということは良く見る光景だ。

クロスが入る瞬間の映像、8934を見てほしい。中央は相手の3対2で疎、と言ってもいいような場面になってしまっている。先に触ったのはうちで、大きくクリアできなかったことが直接の失点原因だが、極めて危険な場面を前提として作られた。

一度サイドに出されたことによってその地域に寄せられ、「サイドの塊」と「中央の塊」、というように分断されてしまった。早い展開で組織のシェイプ全体の認知が間に合わない。そういった例でもある。



この後も選手たちはなんとか得点しようと奮闘。91分にはそれを裏返されるようにPKを与えてしまうが、ビッグセーブで幾度もチームを救ってきたオビがなんとこれをストップ。

最後まで諦めず守りながらも攻撃しようとする姿勢は胸を打った。9425には左で抜け出し高野がクロス。遅れて右に走っていたケニーに合えばというところだったが、それをカットされるとカウンターで持ち込まれそのまま失点し、1-3 で敗戦となった。



惜しい。本当に惜しい試合になった。最後まで選手が同数ならば。

前半の後半はうちのペースになりそうで、あのままいけば得点もできていたという感触がある。相手は圧の足りない前プレからの波及でうちに動かされ前進を許していた。結果として勝てるとも思った。

しかし何よりも賞賛したいのはスピリットとプレー強度だ。この日のそれが維持されていれば今の順位にはいないはず。そんなことを思わされた試合だった。




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