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カウンター以外の得点方法 2020 J1 26th Sec

J1第26節。悪夢の逆転負けの前節から、まる1週間が空いた。


事前情報にもあったが、マルコスのCF(ゼロトップ)を試すらしかった。右に詠太郎、左にエリキ。怪我明けのテルやサネがベンチに。

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試合が始まってみると和田がAJとともにIHの位置でプレーしているようだ。しかし特に彼らとマルコス、エリキは流動的にやっている。

相手は前からプレスの場面と後退にメリハリをつけている。さらには引いても中盤の圧は強い。ただしその中でもうちは比較的繋ぐことができている。

しかしそんな中盤での混戦からロスト、繋がれた0955は大ピンチだった。寄りながら一時的にやや右にプレーエリアが狭くなったため左にフリーの選手を作り出してしまう。そこへ出され前進を許し動きの中からクロス。これもフリーになったFWに合わせられてしまうがダイレクトボレーのシュートは枠の外。助かった。


1253のエリキのプレーは一つの原理を示しているであろうマルコスとの距離のあるワンツー。

右で詰まり左に迂回しつつシンが縦に和田へ。ターンするときっちり幅を取っていたエリキへ収まる。前進しながらマルコスへ横パスを送るのだが、この時二人の間隔はおよそ10m程度はある。

プレーベクトルが左から右へ向かった。相手としてはマルコスの周辺とさらに右、矢印の向かう延長線へのプレーを警戒せざるを得ない。事実、エリキに付いていた選手は内側を向いてエリキに背を向けてしまった。また、距離が離れているということで、プレー連鎖の鎖が切れたと考えてしまうのだ。ここが重要。

パスを出す先、もしくはプレー選択肢は常に1つ以上はあるものだが(パスが出せなければ蹴ればよい)、その選択に「含まれていない」と、エリキは距離があることで判断され警戒が解かれたわけだ。そのため裏でリターンを受けることができた。

また、エリキ自身、リターンを受けるための明確なアクション(動き出し)を、パス出しの直後に素早く行っている。パスを「もらった」というよりは自分で引き出したわけだ。その点も素晴らしい。

抜け出し方が良かったので後方に誰もいない。クロスを急いだのは勿体なかった。十分切り返しができるスペースが生まれていた…



原理ということで言えば、続く1458、AJのシュートに至るまでの一連のプレーもそれを表している。

相手は5-3-2の「3」のボールサイドへのスライドと、引いたWBの前方アプローチでうちのサイド攻撃を囲み阻もうとする。うちが比較的そのサイドに人数をかけてしまうせいもあるのだが、そうするうち両チームあわせて密集状態となる。

すると当然、逆サイドにはスペースが生まれる。いつもはそうした原理を使えないのがうちだが、ここでは相手の意識を集めながらも、関わった和田、小池、エリキ、喜田らがあまり時間をかけずに脱出させた。

最終的に受けたマルコスは逆サイド側に反転、すかさず走り込んだAJへ。このプレー自体が素晴らしいのだが、淀みなく相手に残された「最後の1ライン」を破ったのは非常に機能的で、シュートが決まっていれば今季1,2を争う美しさとして記憶に残りそうだった。


うちの前プレは変わらずハマらない。汗

何度か蹴られたり、揺さぶられたりしてピンチも迎えるが、相手のプレー精度に助けられていた。

しかしうちもうちで決定機を(多くは)作り出せず。前半はシュート4に終わった。

HTにサントスと大然を入れ打開をはかる。前での圧を強めながらも得点とまではいかず、CKから失点する。後半61分のことだった。

残り30分あれば…と普通考えるところだが、うちの場合そう簡単ではない。先に失点し相手が引いて守備に軸足をおけば、押し込みきったうちが崩せずに苦しむのはここまでの戦いから容易に想像できた。

自陣からのカウンター発動を「除外して」、静的な保持から攻撃、しかもきっちり崩して得点することが今まさに求められている。過去何度もそういう展開にはなっているが、型を持たないうちはアドリブに頼った結果何も起こせないということが続いている。


64分前後を見ると、さっそく最前線で選手が中央で団子になってしまっている。このエリアの規律がないことを示していて悲しい。ビハインドになるとこの傾向は顕著で、得点したいという気持ちだけで各選手が動いてしまう結果、こうなるのは当然とも言える。


6658は左で密集、ぐるぐる回す。縦にロブを送るがゴールラインを割る。

上で書いたように、密集を作ればピッチ全体で相手を含めたシェイプが偏り、逆サイドは人も薄くなるし警戒も解かれる。

同サイドでこのような裏を狙うよりも(悪くはないが)、逆サイドに選手を置いておきそこを狙う方がはるかに成功率が高くなるはずだ。人が薄いかわりにスペースがある。アバウトにパスされても受けることができる確率が高いし、何よりプレーしやすい。

ミドルサードでも、ファイナルサードでも、原理は同じ。

得点したいからといっていたずらに中央に集まらず、最後まで幅をとって(集まったなら素早く散開して)自分たちを含めて選手間隔を開けたい。


7418も同じく左に集まる。アタッカーを含め(画面上は)7人までが同じ地域にいる。プレーが途切れてしまったが、ここから抜け出すということはメカニズム的に非常に重要で、

平均(疎)→ 密集 → 相手も集まる → 過密集 →(薄い地域へ)脱出

のプロセスはいつでも意識したいところだ。

密集し囲い込んだように思ったのに脱出されたら、守備側はどう感じるだろう。おそらく「非常に」慌てるはずだ。

次に起こることは何かといえば、慌てた心理で「急いで」ボール付近に向かうことになる。そうした相手の反応は、移動により連鎖的にスペース(間隔)を空けることに繋がっていく。

一旦こういった「疎密のゆらぎ」のようなものを作り出すと極めて守りにくく、サイドを変えられるなど振り向かされることによる認知エラーも起こりやすい。守備は動き(動かされ)ながら対応するのが最も難しいので、そこを突きたいのだ。

ビルドアップはスペースを前方に受け渡していくこと。こんな表現も良く聞かれるが、縦方向にしろ横方向にしろ、ここでも原理は同じなのである。


7714、ケニーのシュートで切れる場面も左から中央に集まってしまった。この場面で右に開いている選手がいればチャンスを作れることはこれを読んでいる皆さんも想像できるのではないだろうか。

こうなっている理由の大きなものは、やはりクロスを入れる・合わせることが第一の、そして最大の目的になってしまっているからだろう。サイドに出たらクロスを見込んで中にいなければならない。

幅をとってボールを横断させながら相手の守備ユニットを揺さぶるという選択がないのだ。

相手が人数をかけて守っている場合は、単純なロブクロスを入れてもCKと同じで確率的「運」に左右されることになってしまう。このことも何度も言ってきたことだが… 自分たちが先制した場合はそれ(クロス一辺倒)で良いのだけど。一般的に先制した方がこの競技は圧倒的に有利で、追加点が入らなくても結果として押し込み続けていれば良いのだから。


7850からも同じように左に密集した。しかし最後にAJが中央に入れたタイミングは意外性があって悪くない。事実、ゴール前は2対3で疎という状態だった。パスワークでボールを脱出させるのではなく、ロングクロスで脱出させたわけだ。

この直前はカウンターのチャンスだったが、7815に最後方から抜け出し喜田から小池に繋いだ直後、大然に出すのが早すぎてスペースが消えてしまった。相手を引きつけてからリリースしてほしかったところ。


続く7904には、右に開いていたエリキに出たが、チャンネルが空いているにもかかわらずそこを突くIH(役)の選手がいない。だいぶ後になってケニーが行ったがマークに付かれた。

流動的なのはいいのだが、ある程度補完のイメージは持った方が良いということも常々思っている。例えば攻撃セット時は2-3-5のようなシェイプを維持しながら動くなど。すべての動きを直感に頼ると、いてほしい場所に人がいなくなる。守備に切り替わった時にもそれは意味を持つのだ。極端に偏って大きくスペースを開けるということが無くなる。

7910にマルコスがシュートを放ってこの場面が終わる。が、プレー中心が右に移動したので左はぽっかりスペースが空いた。そのサイド、ボックスの奥で選手が待っていたらと思わずにはいられない。



一々リプレイを止めては書いてしまった。意地悪なように感じたらすまぬ。
なんだか止まらなくなった。笑

密ができれば当然、疎が生じる。このシンプルな原理が具体的なグループ戦術に実装されないことが本当にもどかしい…

シュートを多く放つのは歓迎すべきことだ。しかし引かれた場合、現実に得点になっていないわけで、それが相手に阻まれずにゴールの枠に向かうようにするために、少しでも選手どうしの間隔を開けることをやっていかなければならないだろう。おそらくそのことが、闇雲に撃つよりも価値のあることだとオレは思っている。



テルが入った後にチャンスをいくつか作ったが、結局得点できずに0-1の敗戦。これで直近3連敗となってしまった。

新加入のGK高丘は急速にチームにフィットしている。セービングや配球はもとより、この日は自陣中央気味のポジショニングでピンチを未然に防ぐことが数回あり、頼もしい存在となってきた。

それだけに彼のスタメンで未だ勝ち無しは不憫である。


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