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五色沼 福島ジオ巡り旅(4)
前回からの続きです。
桧原湖側から自然探勝路を下っていくルートです。
単に「下りで楽ちんだから」って訳ではありません。水の流れを意識しながら散策するなら、こちらの方が理解しやすいのです。
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五色沼は、桧原湖と同じく、1888年の磐梯山噴火で形成された湖沼群。磐梯山の火口付近の銅沼(あかぬま:爆裂火口に位置するせき止め湖)からの地下水などが水源となっています。
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長く休止状態にある火山でも、水蒸気爆発で大災害の可能性があるんですね。
子どもの頃、活火山・休火山・死火山という分類を習いましたが、その知識が誤った認識を植え付ける恐れもあり、現在、休火山・死火山は使用されていません。2003年に火山噴火予知連絡会は「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義し直しています。
五色沼の水色の秘密
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湖沼群は、火山由来の金属成分が豊富な硫酸酸性水、磐梯山の深層地下水などから構成され,その水流系から沼ごとに微妙に水質が異なっています。
五色沼には青白色の沼がありますが、その発色の原因は何でしょう?
その答えは…
銅沼由来の金属成分を含む酸性水が、下流の湖沼に至る過程で塩基性の温泉水と混ざり合い、中和して白色〜淡青色のケイ酸アルミニウムの微細粒子(アロフェン) を生成します。これが波長の短い可視光線を散乱させ、青白い独特の水色をもたらしているのです。
また、湖水の色は、沼ごとに(同じ沼でも)底質や周囲の植生、季節により微妙に変わってるそうです。
【ご参考】
裏磐梯五色沼の水質と水の色
千葉茂(福島大・教育)化学と教育 第37巻 第5号(1989)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/37/5/37_KJ00003508154/_pdf
裏磐梯五色沼湖沼群の水質の化学的成分について
全国環境研会誌 Vol.43 No.2(2018)
https://tenbou.nies.go.jp/science/institute/region/journal/JELA_4302007_2018.pdf
五色沼湖沼群の分類
五色沼湖沼群は、その水質や植生により大きく4つに区分されます。
●もうせん沼・弥六沼・父沼・母沼・柳沼グループ
中性で多くの物質が溶け込んでいるため、生育するプランクトンの種類や量が多く、水の色は不透明な薄い緑色。
●るり沼・青沼・弁天沼グループ(銅沼系)
酸性が強く、多量のイオンが含まれるためプランクトンが少なく、水の色が青く透明度が高い。
●毘沙門沼・竜沼・みどろ沼グループ
銅沼系の弁天沼から水が流れ込んでいるが、酸性が弱まる。
●赤沼
銅沼に近い水質で酸性。流入口を持たない独立水系の湖沼。
湿性遷移の多様性
形成されてから歴史の浅いので、湖ごとに酸性~中性、貧栄養~中栄養とバラエティーに富んだ環境が残っています。
酸性度が強い源流の水に、流下過程で周囲から地下水が混入して水質が和らぎ、その水質で生育できる動植物が繁殖します。水辺で進行する植生遷移のさまざまな段階を、一度に観察することができる大変貴重なスポットです。
裏磐梯五色沼湖沼群水生植物ガイドを参照しながら散策してみましょう。
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このパンフレットは、(株)ニチレイの援助を受け、福島大学共生システム理工学部生物多様性保全研究室が発行したものです。
柳沼
もうせん沼・弥六沼・父沼・母沼・柳沼グループの一つ。
他の湖沼グループとは表流水では接続しておらず、pHも中性で、一般的な湖沼に見えます。
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人為的な環境変化を受けやすい状況で、近年は水質の悪化や外来種の侵入も見られるそうです。
母沼
珪藻などの植物プランクトンや水草によって、深い緑色をしています。
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緑が深まり、気持ちの良い散策路が続きます。
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青沼
ここから、火口付近の銅沼が源流のるり沼・青沼・弁天沼グループです。
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このグループの水質の特徴は、酸性度が高く、多量のカルシウムと硫酸イオンを含み、透明度の高い青い水色を持つことです。
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湖面に張り出した木の枝に白い付着物が…これがアロフェンなのか?
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水面標高815m 最大深度6m 面積5,750㎡。水深が浅いので太陽光に反射して、鮮やかです。
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pH4~6のやや強い〜弱い酸性で、プランクトンが少ないとのこと。この先のるり沼から水が流れてきています。
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水面上から見ると、中央の湖底はコケのマットで覆われているようです。
東側の岸辺はコケマットの上にヨシが生えています。
るり沼
るり沼から青沼へ流れる表流水が散策路を横切ります。
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水面標高815m 最大深度19m 面積18,100㎡。水深が深いので、曇天下では深い青色をしています。
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pH4~5のやや強い酸性、湖沼群の中では一番上流に当たります。
岸辺には、コケマットの上にヨシが茂っています。
コケマットが発達→上にヨシが繁茂→ヨシが枯れて倒れる→ヨシの地下茎に土粒子が付着→枯れたヨシ自身が腐葉土に→地下茎がさらに発達→地上部に草木が生える→陸化
このような流れで陸化が進んでいきます。
月日が経てばヨシが茂ったコケマットが増え、湖が富栄養化し、最終的には湿原となるのでしょう。
弁天沼
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このグループで最大、湖沼群内では毘沙門沼に次ぐ大きさです。
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水面標高810m 最大深度7m 面積30,300㎡。
水深が浅いので、るり沼より明るく見えます(雨のせいかも…)
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青沼から湖水が流入しています。
pHは酸性で4~5。湖水は多量のカルシウムと硫酸イオンを含み、青く澄んだ美しい沼だそうですが…
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湖岸はほぼヨシに覆われています。
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西側の湖底にはコケのマットが広がり、東側ではフトヒルムシロの群落があり、一つの沼で水質と生物相が異なっているそうです。
竜沼
樹木が生い茂っていてよく見えませんが、ここから毘沙門沼・竜沼・みどろ沼グループに入ります。
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pH6~7のほぼ中性。
樹木が湖岸を覆っていて、コケ類が発達できないため陸化が進まず、ヨシの繁茂が少ないそうです。
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深泥沼(みどろぬま)
水面標高790m 最大深度5m 面積12,700㎡。
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水深が浅く、溶存するイオンも多いのではないでしょうか。
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pHは6~7。場所によって異なった水質を持つ湖沼です。湖沼の面積が少ないにも関わらず、水生植物の種類は多いそうです。
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沼の西側の水は青緑色に濁り、東側は明るく澄んでいます。ちょうど中央部が、コケマットとヨシ原で仕切られているように見えます。
一つの沼で、水質と生物相が異なっているそうです。
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赤沼
pHは4程度で、磐梯山火口付近の銅沼に近い水質。流入口を持たない独立水系の湖沼です。
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表流水がないためか溶存酸素量が少ない水質です。(湖底からの湧水が起因しているか?)
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鉄分の含有量が多く,湖岸を覆っているヨシの根茎も鉄さび色をしています。だから、エメラルド色でも赤沼って言うのですね。
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植物にとって過酷な環境なので、水生植物の種類は少ないそうです。
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赤沼から流れ出た水は、深泥沼下流のヨシ湿原に接続し、そのまま毘沙門沼に注いでいます。
毘沙門沼
再び、毘沙門沼・竜沼・みどろ沼グループに入ります。
こちらは深泥沼、赤沼方面からの水の流れ。
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その先には…
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自然の越堤の先に、エメラルドグリーンの湖水が見えます。
西湖盆
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水深が深くなったせいか、青が深くなり、透明度も増している感じがします。
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完全に紅葉していませんが、湖水の色と共演して美しいです。
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高台に出ました。
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水面標高780m 最大深度13m 面積150,000㎡。五色沼最大の湖沼。
水質は中性(資料によってpH5とありますが、部分的かと思われます)。
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3つの区画に分かれていて、それぞれの場所で水質と植生も異なるようです。
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岸辺にはヨシが茂っています。
西湖盆
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ボートが絵になります。きれいな湖面と風景を楽しめるのが良いですね。
地理院地図でみる五色沼
航空写真はとっても便利!ドローン代わりに見てみましょう。
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磐梯山火口付近の銅沼は深緑色をしています。
銅沼の地下伏流水がるり沼に達する間に、アルカリ性の温泉水で希釈中和され、あの鮮やかな青碧色が生まれます。一方、赤沼には銅沼の水質があまり希釈されずに届いているようです。
その手前にも、緑色の沼や藍色の沼も見えます。
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空から見ると、それぞれの湖沼の水質の関連性も見えてきます。
深泥沼を拡大して見ると、西側と東側で水質が違うのが分かります。
深泥沼の東側は、赤沼の成分が地下に浸透して影響を及ぼしているのか、銅沼からの地下水が湖底から湧き出しているのか…謎ですね?
現地に行った後に、地図を眺めるだけでも楽しいです!
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散策後は、バスで桧原湖駐車場へ戻ります。
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今頃に晴れてくるなんて、ぐぬぬ…お天道様ァァァ!
オタク気質の長文を最後まで読んでいただきありがとうございます。 またお越しいただけたら幸いです。