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すこぶるアガる?…階段の話

階段、それは人類史上の最小の建造物。


お気に入り番組「すこぶるアガるビル」

(解体キングダムやウルトラ重機も好き。オタクなんです)

前回の放送は目黒区総合庁舎

生命保険会社の社屋だったものが目黒区に売却され、改修を経て2003年に庁舎としてオープンしました。

中央には楕円状螺旋階段があり、その有機的で開放的な空間は、区民にとって親しみやすい雰囲気を醸し出しています。

設計は村野藤吾。

日生劇場なども手掛け、階段の魔術師の異名をもつ建築家。

人々に登りを苦役と感じさせず、目的地へ事務的に誘導するのではなく、ある種のコミュニケーションの場として階段が機能している。
まるで、古代ギリシャやローマに通じる建築思想を感じさせます。


梯子・階段の文化史

番組を見て思い出したのが、ちょっと前に図書館で借りた本。

Amazonのブックレビュー4.8。
オタクホイホイの一冊!

梯子・階段の文化史 稲田愿著 井上書院

背表紙のタイトルだけで借りるのを即決!

古代から現代までの東西の梯子や階段の作成方法、形状的な変遷。階段の文化的役割と意義、機能性の変化、人間工学に基づく安全性など。豊富な図版とデータを基に著者の幅広い見識から、梯子や階段について深く掘り下げられた本です。

こんなニッチな内容なんて…と思ったアナタ、まずは目次だけでも見てください。
興味深々になること間違いなし!

1章 梯子と階段の誕生
1―人類の進化と道具の発生時期
2―梯子のようなツール(手段)がどんな場面で必要になったか
2章 人は階段にどんな願いを込めてきたか
1―シンボルとしての梯子・階段
2―階段状の山を築く
3―天井をめざす階段
3章 世界の文明圏の梯子・階段の歴史
1―日本の梯子・階段(きざはし系)
2―海外の梯子・階段(基壇系)
4章 古代の梯子づくりと木工技術
5章 階段にまつわる不思議な疑問点
1―階段の右・左論に入る前に
2―階段にまつわる疑問点
6章 生活分野における家具的な梯子・階段の歴史
7章 変わり種の梯子・階段の歴史
8章 特殊用途の梯子・階段の歴史
9章 梯子と階段の安全性
終章 梯子・階段の機械化と今後の展望

高床式倉庫の丸太梯子からピラミッド、紫禁城の階段、果ては空想上のバベルの塔まで。正に、階段の歴史は人類の歴史そのもの。

この本からは多くの気付きが得られました。

例えば、古代の木材加工法。大昔は木は割り切りで加工され(鋸を使った加工は室町以降)、その方が耐久性に優れ、古代の木造建築が長く残っている理由の一つになっています。

他にも、輿の担ぎ方と階段勾配の関係。階段の安全性の指標(必ずしも段差が小さく踏み面が広いほど良い訳ではない)など…。

身近な階段について何も知らなかったんだと、改めて感じさせられました。


「階段学」はあるのか?

階段についてもっと知りたい!と思い調べてみたら、どうも階段学会というアカデミックな学会は存在しない感じでした。
(民間発祥のサークル的な会はあるようだけど)

やはり階段単体の学問はなく、建築学会や土木学会などの一部で扱われる題材なのかも知れない。

土木学会さんのnote

色々なテーマがあるようだけど、「階段」についても機会があったら取り上げて欲しい…


屋内階段も屋外階段も、機能構造学も運動生理学も、歴史や宗教や文化論も、都市学やバリアフリー論も、全部引っくるめた階段学(英語ではStaircase studyと言うらしい)を学んでみたい。

階段は、人類にとって高低差を克服するための身近な手段にものかかわらず、車社会になってから、その存在は軽んじられ疎まれている。
それでは残念すぎる!

階段学に基づいて作られた階段なら、もっと楽しく登り降りできるし、もっと人々が集うはずだ!

(もちろん、階段を利用できない方のための選択肢は必要で、特に公的な場所はバリアフリーであるべきです)


神社と階段

さらに、私の興味の中心である神社の参道の階段について、その意義を考えてみる。

古社によく見る長い階段は、一段ずつ登ることによって俗世の汚れを落とし、精神を集中し、参拝者が無心で神様に向き合う状態になるための役割がある(と思う)。

かつて、神は、険しい山の頂や森の奥の清水が湧き出す処のように、簡単に人々が立ち入ることのできない場所に降臨すると考えられていた。

それを、自分たちの守り神として身近な場所に移してきた(分霊、勧請という名の縮小コピペ)歴史があり、

さらに言えば、神が降りる場所に至る厳しい道程を、階段という装置で表現したと考えられるのだ。

だから何?と言われれば、まあ、それまでなんですけど。(平地の神社はあまり面白くないんじゃ)

そんなこんなで、今日も今日とて、長い階段を持つ杉山神社を散策中!




オタク気質の長文を最後まで読んでいただきありがとうございます。 またお越しいただけたら幸いです。