ADHD

✳︎ADHDの歴史
ADHDという概念は比較的新しいものです。
ドイツの医師のハインリッヒ・ホフマンが作った絵本「そわそわフィリップのおはなし」として紹介されたのが1840年代のこと。論文では、1902年にイギリスのスティルが「反抗的で落ち着きのない行動」に注目をして報告しています。その後、1937年にはブラッドリーがこのような多動の子どもたちには、中枢刺激薬が有効であるとの報告がなされました。
大きな転換は、1962年に「微細脳損傷」から「MBD(微細脳機能障害)」として、行動面の特徴に臨床的な注目が移るようになりました。DSM-Ⅱでは「多動症候群」、DSM-Ⅲでは「ADD(注意欠陥障害)」という行動に注目した診断の付け方になります。
日本国内では、1970年からMBD、多動症候群に取り組む医師がいましたが、とても少なく専門書も多くはありませんでした。1990年代後半からは、メディアの影響で「落ち着きのない子どもたち」としてADHDに注目が集まりました。1999年から「ADHD診断治療ガイドライン作成とその実証的研究」として研究を続け、その後の2003年に「ADHDの診断・治療ガイドライン」を出版する運びとなった。
医療だけでなく、教育や保健福祉の面でもADHDへの取り組みが行われるようになっていきます。教育面では、2002年の「通常学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国調査」では、支援が必要とされる子どもが6,3%いる可能性が報告されました。このような現場のニーズをもとにモデル事業を経て,2007年から全国的に特別支援教育が始まります。

※ざっくりと年表
1968年
DSM-Ⅱ 
児童期の多動性反応(病患概念として初めて登場)
下位項目:多動が前面の分類

この時点では、子供たちに落ち着きのなさや気を散らすものを引き起こすと考えられていました。また青年期までに治る、あるいは軽減すると信じられていました。

1977年
ICD-9
 児童期の多動症候群として初めて概念化
下位項目:多動が前面の分類

1980年DSM-Ⅲ 
通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害。注意欠陥障害の中で、1)多動を伴うもの、2)多動を伴わないもの、3)注意欠陥障害残遺型を規定。
下位項目:不注意が前面の分類
この時点でADHDの状態・症状についての理解が深まったと言えます。しかしまだこの当時はADHDとは呼ばれておらず、APA(アメリカ精神医学会)は、多動性の有無にかかわらず、注意欠陥障害(ADD)と名付けていました。

1987年
DSM- Ⅲ-R 
行為障害、反抗挑戦性障害とともに破壊的行動障害の中の位置づけ。1)注意欠陥多動性障害、2)識別不能型注意欠陥障害を規制。14項目の症状リスト。
下位項目:不注意、衝動性、多動を区別しない
ここで名称がADDからADHDに変更されました。

1992年
ICD-10 
小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害。その中の多動性障害として1)不注意、2)過活動、3)衝動性を規定。

・症状の該当項目:不注意症状は6/9項目、過活動は3/5項目、衝動性は1/4項目で該当

1994年 DSM-Ⅳ 
2000年 DSM-Ⅳ-TR
注意欠如および破壊的行動障害。その中の注意欠陥/多動性障害として1)不注意優勢型、2)多動ー衝動性優勢型、3)混合型の下位項目に分類。

・症状の発現:「7歳未満」

・症状の該当項目数:「6項目」

ASDと併存の場合は自閉症を優先的に診断(ASDをADHDの上位概念、対立概念として捉える)
この時点でADHDの診断や症状の細分化が明確になりました。
ADHDの症状は、不注意優勢型、多動衝動優勢型、2つの型両方の症状が現れる複合型の3種類に分けられました。

2013年
DSM-5 
神経発達症/神経発達障害。注意欠如・多動症と名称変更。

・症状の発現:「12歳未満」に変更
・症状の該当項目数:「17歳以上は5項目」に軽減

自閉症スペクトラムとの併存を認める

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○ADHDの中核症状
主に多動・衝動・不注意です。

不注意は,持続的集中,迅速な反応,視覚的および知覚的探索,持続的に話を聞くと,これらを要する課題に患児が取り組む際に現れてくる傾向がある。集中力がないという表現が当てはまらないこともあり,好きなことには集中できます。まとめると,注意の分配や持続が苦手ということになります。

衝動性とは,悪い結果に至る可能性がある行動(例,小児では周囲を確かめず道路を走って横断する,青年および成人では結果を考えずに突然学校や仕事を止める)を指す。事の顛末を想像するよりも先に行動に移してしまう。

多動性は,過度の運動活動を伴う。患児は,静かに座っていることを期待されている場合(例,学校や教会で)になかなかそうできず,幼児では特にその傾向が強い。学童期では,授業中椅子をガタガタしたり,キョロキョロしたりとじっとしていられなさがある。

不注意と衝動性は,学業技能ならびに思考および推理方略の発達,登校意欲,社会的要求への適応などを阻害する。不注意優勢型ADHDの患児は,実体験による学習を好むことが多く,持続的なパフォーマンスや課題の完遂が要求される受動的な学習状況において困難を抱える傾向があるとされています。

○併存する他の障害
全体としてADHD児の約20~60%に学習障害がみられるが,不注意(そのために詳細を忘れてしまう)および衝動性(そのために熟慮せずに質問に答えてしまう)のため,ある程度の学業不振はほとんどのADHD児でみられる。
併存する障害としてASDも忘れてはならない。ADHDだけでは説明のつかない部分においては、併存している可能性を考えて見立てを行っていかなければならない。

○二次障害
また養育歴により,欲求不満耐性の低さ,反抗性,かんしゃく,攻撃性,社会的技能の低さおよび友人関係構築の拙さ,睡眠障害,不安,不快気分,抑うつ,気分変動などが明らかになることがある。
これは、特性により社会に適応出来なくなった状態と言える。

○薬について
コンサータ
ストラテラ
インチュニブ
ビバンゼ

代表的なものはこれらの薬です。
薬についてはまた別の項目で。

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