無責任な愛

最近見かけなくなった近所の野良猫
グレー毛の縞模様のせいか遠目で見ると黒い
雄だったのか体格は大きめ よくある丸顔の日本猫
尻尾が実に立派で長く美しく波打つ

とても人懐こく 歩く僕に近づいてくる
初対面の僕に「撫でてくれや」と身を寄せる
元は飼い猫だったのかな などと思いを巡らせながら
丸い背中を撫でる
「もっと撫でてもええで」と気持ち良さそうに
アスファルトに横たわり和んでいる猫
さらに撫でていると急に何か大切な用事を思い出したように
起き上がり
「ありがとうな、また会うことあったら遊んでやってもええで」
そんな風に歩き去った

猫をひたすら撫でた僕の手は
排気ガスと埃が混ざった黒い油でベタベタしていた
胸がしめつけられた
お前はどれほど息苦しい空気の中で生きているんだ

気まぐれに愛を求め歩く猫
気まぐれに愛する僕
僕の目に映るお前は十分に満たされた幸せな猫だった
間違っていたのか?
家に迎えてやる事がお前の幸せだったのか?

死ぬな
死ぬな

愛を求め続けるんだぞ
幸せな猫でいてくれ
頼むよ

感傷的な僕の為に

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