背中合わせ

悲しみは大切な誰かを失った時にだけ起こる感情じゃない。誰かを、自分を、助けたいのにどうにも出来ない時、出来る事には限りがある現実に生きている、それだけでたくさんの悲しみに出くわす。

オセロ。今も昔も白か黒。

白は幸せ、黒は不安。白は悲しみ、黒は憎しみ。対戦ではいつもまけてばかりのぼく。コツも知らないし頭も悪いから仕方ない。

先読みだよ。相手の考えを咲きに読むのさ。人生も同じ。金も人も操れればこっちのもん。それが出来ない奴らが操られる。潰されたくなきゃ戦うしかないぜ、一緒にどうだ?

なるほど。先読みや人読みが出来れば金儲けが出来る。ふうん、そりゃあいいな。一人でやれよ。

ぼくはひとりの時、ボードを真っ白にする。長い間分からなかったぼくの幸せは、安心した気持ちを得ることだった。赤ん坊の時のように、みんながぼくを覗き込み優しく微笑んでくれる。ぼくはすっかり安心して温かい安らぎの中で眠る。安心した幸せでぼくの全部を包みたい。

現実は誰を憎めばいいのかわからない事ばかりが押し寄せる。歳を重ねて、ぼくなりに偉そうに言えるほど様々な経験をしてきた。そのぶん成長したかって? いや、ただただ疲れただけだよ。だから無条件に愛される赤ん坊に戻りたい。大声で笑うことは出来ても、もう大声で泣くことは出来ないんだ。戻れない事はとても切ない。仕方なく朝からのため息にケリをつけて、あごの力を抜き奥歯のかみ締めを緩める。まぶたを閉じ、長く深い眠りを待つ。

これで終わりでもいいんだと感傷的になりながら。

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