「70年目の告白~毒とペン~」高階良子

少女まんが館さんのオーナーさんきっかけで知った漫画を読みました…!
自分が高階良子「昆虫の家」というモラハラ漫画(ホラー+サスペンスなんだけど手法がモラハラ←?)を読んで呆然としていた時期に、自伝的要素の強い本書をおすすめしてくださいました。2022年12月に3巻がでて、完結しました!ラストの一コマ、締めくくり方、、最高だった、、愛!!😭


🌷「70年目の告白~毒とペン~」高階良子

書誌情報:高階良子「70年目の告白~毒とペン~」全3巻(2021~2022、ボニータコミックス、秋田書店)
収録作品:70年目の告白~毒とペン~


なぜ「自伝的要素が強い」と紹介したかというと、この漫画に登場する人や会社は実在のものとは一切関係ないからです。
涼という名の、のちに漫画家になる主人公の人生を始まりから辿っていくお話となっています。

自分が読み始めたタイミングでは既刊2巻だったため、「黒蜥蜴」をこれから描く!といういよいよ本領発揮のところまでで終わっていて、つまりそれまでの非常に苦しい幼少期、自立期、下積み時代までしか読めていなかったんですよね。
先月ついに刊行された3巻でも壮絶な経験はあるにはありましたが、やっぱりたくさん稼ぐようになって以降の話は楽しかった・・・!( ˘ω˘ )ウーム…💰


結局自分はまだ「昆虫の家」「修学旅行殺人事件」(公式に書影がなかった)のコミックスしか読めていないのですが、「黒蜥蜴」「赤い沼」「マジシャン」「-クロノス- 漆黒の神話」…などを構想する場面も織り込まれている本書は高階良子作品ガイドのようでもありました!「-クロノス- 漆黒の神話」試し読みしたんですけど最初からおもしろい・・・

工場の仕事と同人会へ送る漫画制作を両立する時期からずーっとずーっと涼は漫画を描き続けるのですが(途中、出版社内のいざこざや過渡期か何かで仕事が途絶える場面はあったけどもそれも印象に残らないくらいとにかくずっとずっと漫画を描き続けている)、高階良子さんのWikipediaをみてもこんなに大量の作品を一人の人間が発表できるものだろうか?!と思ってしまうほどでした。。。
こんなに物語を考えられるところがすごい、しかもそれを漫画にするなんて…。


この「70年目の告白~毒とペン~」を読んでつくづく思ったのは、関わる人って大切だなあ…ということ。

序盤で若書房さんが、センスのいいすっきりした絵柄の漫画をみせて涼に言うセリフ、

言っとくけど これ
悪い例だからね
いくらきれいでもここまで手を抜かれちゃあ……
涼さんのほうがずっといいんだよ

2巻 p54

…に、感動しました。
ちゃんと「実力や伸びしろはどこに現れるものなのか」を見出している人が言う言葉だなと感じました。。
漫画一本で働くために工場を辞めるとき、涼のお姉さんが力になってくれたのもすごくよかった…😭

良い場面を挙げるときりがないのですが。。工場の上司が涼の漫画制作を気にかけてくれていたり、他の人にはない涼の感性を見抜いて期待してくれる編集長がいたり… 壮絶毒親描写に慄きながらもこういった関わりあいに癒されました。。


すごいな、と思うのは、涼は幼少期からどんな虐待を受けていても、外に憎しみをむけずに、ちゃんといつの年齢のときも友達がいたこと。友達とのコミュニケーションがちゃんととれていること。
でも、「子供のころから怒りを表すことが許されなかったから 我慢することに慣れすぎて」(2巻、p118)いたことで、そこにつけこんでくる性質の悪い人が寄ってきたりもして……

怒りっぽい自分としては、涼の、嫌な人を本能的に察知し、「怒り」という攻撃的な方法ではなく、断るとか疎遠になるなどの消極的な方法でしっかり避けることができるところをすごいなあと思ってしまう。
「怒り」とか攻撃性で相手に『手を下す』のってやっぱり自分自身にもそれなりの反動や重みが返ってくる諸刃の剣なのですが、その重みを引き受けるのと、外的要因によって元凶が消滅することを待つのとでは結果的に同じくらい体力を使ってしまうかもしれません。。
絶対に虐待は止められるべきだったし、涼ももっとはやく憎んで怒って、逃げてよかった、それは絶対にそうだと思います。



3巻の、ふたりの敏腕アシスタントさんとの出会いの話もすごくよかったんですよね。。
石森章太郎(当時)先生のアシスタントさんたちが助っ人に来た場面はこっちも冷や冷やしておもしろかった。。すごい巧いけど全然指示をきかずに勝手に描いて仕上げて帰っていくって凄すぎる…。
地方へ仕事場を移したあとも、ふたりの敏腕アシスタントさんたちが通ってまで涼の仕事場を離れなかったのは、涼の能力と人格があってこそなのではないかなあと思いました。他の仕事場には無いものがあったのだと思います。これらのエピソードは相手の心理までは深く描かれていないのですが、涼とアシスタントさんたちがお互いに認め合っていたからだろうなあって本当に思います。
第二の家族のようなアシスタントさんたちとの団らんシーンもすごく好き…😭(しかしそれと対になって毒親描写が…)


アシスタントさんや編集担当が常駐するような大所帯の仕事場になってからも、仕事場にまで入り込み口をだす母……
他人の親に対しては非常にコメントしにくいという理由からこのあたりは感想であんまり触れないようにしていたのですが、、(毒親描写はぜひ実際に読んで味わってみてほしいです)、高階良子先生はベテラン作家になってからもこのような状況で大量の仕事を捌いていたのか……と驚いてしまいました……
しかも大半の時間を同居していて… 何度も何度も、早く逃げて!と思いました。
モラハラの人が言ってる理屈の意味が分からない、というのはたしかにあるな~と思いました。
シンドバッドの冒険の話(道にうずくまる老人を助けたところ首に足を絡めてしがみつかれ、耳を引っ張ったり首を脚で締め付けたりしてシンドバッドを服従させ拘束する話)が例えとして紹介されていましたが、ほんと…状況に合いすぎでした…。っていうか世界説話がこんなふうに役立つ(?)なんて…

母が倒れて施設に入ったとき、すっと「何言ってるのか解からない」(3巻、P224)ととぼけることができてよかった……、ほっとしました。
お金はたくさん出しているのだし、それで大丈夫です。。。
兄弟姉妹と仲がいいのも素晴らしいことだと思う…😭

工場の人たちとか出版社の人たちとか漫画家仲間のあれこれが本当におもしろかったんですがあんまり紹介できなかった…読んでください!

噂を流していつも揉め事を起こす仕事仲間が縁もゆかりもない他人の婚約破棄に関わった話(3巻)は、被害者めっちゃ可哀そうだったし、こんなに悪意であふれてるなんて一体なにがそこまで不満なのだろう…!と驚きつつも、当時はTwitterがないから自分が周囲に電話で武勇伝を広めなきゃいけない…というところがちょっとおもしろかったです。今でいうと中傷や炎上に関わっている類の人なのでしょうか…。

漫画を読み耽るラストは感動しちゃった!うう😭


3巻が出たころにこのネット記事を読んで えーっ引退?!と驚いていたのですが、巻末のコメントなどを読むと 元気にゆっくり休んでいただきたい…!と思います。

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