「天使なんかじゃない」のキャラ別イラスト投稿数を調べました

昔から矢沢あい「天使なんかじゃない」を読むたびに気になっていたこと、
・・・それは
『晃よりケンのほうが当時の読者には人気だったのでは?』
ということです。
なぜかというと、晃の魅力は小学生女子にはわからないはずだ!と思ったからです。。

少女まんが館で当時の本誌を読むことができたので、晃とケンの人気を検証してみることにしました!

しかし当時のりぼんは、特定の作品に人気が集中したり、特定の意見が力をもたないようにするための配慮なのか(推測です・・・)、なんと連載作品への感想などの投書コーナーが一切ありませんでした。。
投書コーナーがあっても「ふろくファンルーム」というふろくについての話題しかしないコーナーと、漫画と一切関係ない話題の投書コーナーのみ。
読者層である小学生女子の年齢層を考えると、たしかにこれくらい情報統制されていたほうが自分が好きな作品を好きなままでいられる・周りの意見に流されない、という利点があるのかな~と思いました。
掲載順やカラーの多さで人気の有無は読者にもなんとなく伝わるのだけども、華やかな人気作品を好む子もいれば、地味だけども味わい深い小品を好む子もいる。『好きなもの・キャラを推し、アピールする』文化が当たり前になった今となっては、この『好きなものを好きと表明する必要性のない時代』の牧歌的な読み方がなんともうらやましいのでした。。


それはさておき、キャラ別人気を調べる手がかりが他にないか本誌を探してみたら、「天ない」の連載第12回目(1992年8月号)から本編柱に読者からのイラスト投稿コーナーが出現!
もしかしたら第12回より前にイラスト投稿コーナーが始まっていたのを見逃しているかもしれませんが前に戻って読み返す時間が無かったため←
あと第12回以前にはケンが登場していなかったため
第12回以降のイラスト投稿コーナーをもとにキャラ別イラスト数をカウントし比較してみることにしました!

イラスト投稿掲載作は編集部が抽出したものなのでキャラ別のほんとうの投稿数が測れないのが惜しいですが、前号の見せ場を次の号で描いて送ってきている読者も多く、これはこれでリアルタイムな読者の反応だなと思ったのでこのイラスト投稿コーナーを調べることにしました。

以下、数字です。(重複や抜けがないか見直す時間がなく一発撮り的な集計です、、)

◆28話分(1992年8月号〜1994年11月号)
◆280イラスト(1話に10イラストが掲載されていました)
◆描かれたキャラ338人(=単体総数)(ペアで描かれている場合も各々を単体でカウント。集団で描かれているものは単体に含めず)(晃とスドーザウルス、瀧川とタキガワマン、ケンとサルのケンは別々にカウント)


【単体】
翠158
晃50
マミリン37
瀧川7
文太6
ケンちゃん22
マキちゃん10
広子11
将志7
しの8
マコ5
ジミー2
セブン1
タキガワマン2
スドーザウルス7
サルのケン1
とんこ1
事故起こした人1
ラビ1
ジミーの彼女1 

【ペア】
翠と晃20
翠とマミリン6
翠とケン4
翠とサルのケン1
翠としの1
翠と広子3
翠と文太1
翠ととんこ1
翠と将志1
マミリンと瀧川3
マミリンとしの2
マミリンとケン1
晃とマキちゃん1
文太とマコ2
マキちゃんと広子1
マキちゃんと将志1
晃と瀧川2
タキガワマンとスドーザウルス1
翠と中学の同級生1
タキガワマンとマミリン1
スドーザウルスと翠2

【集団】
どーものポーズ1
生徒会1期4
生徒会2期1
キャンプの集合写真1
バスの中1
翠と晃とケン1
翠と晃と広子1
ケンと翠たち(ライブハウス)1
翠の誕生日会1


🌻調べてみてわかったこと
圧倒的にケンより晃が人気だった。。
ケンが登場した回を控えておくのを忘れましたがケンのイラストが送られてくるのが1992年11月号以降なのでたぶん1992年の9月号か10月号が初登場だったのではないかなと思います。
↑で集計したのは1992年8月号以降のイラスト数であるため1、2か月分ほど晃のイラストが多いにしても、ケンのイラスト数の伸びが思っていたほどではなかった、、、というのが正直な感想でした。

今回、大量のイラストをみていて気づいたのは、
読者の少女たちは主人公の目線で漫画を読むんだな
ということです。

多くの少女たちは翠に感情移入し、翠が大好きな晃を好きになる。それくらいふつうに晃のイラストも翠と晃のペアのイラストも多かったです。

ケンやマミリンを好きな少女たちももちろんたくさんいたと思うのですが、圧倒的に無党派層(=ふつうに主人公とその相手役が好き)が多かったのではないでしょうか。
翠や晃など主人公格のキャラ人気は、そのキャラがどんな人格・性質かよりも、見せ場があり、愛をもって描かれていることによるものな気がしました。作者がこめた魅力が、こだわりの無い素直な読者に伝わっている感じ。

というか今回ざっと「天ない」本編も読み返してみて思ったけど、晃の描かれ方とケンの描かれ方がけっこう違う…!ケンは登場した最初っから最後まで、晃には遠く及ばない、友達という存在のケンとして常に描かれている…!ということがよく分かりました。
自分は「天ない」を読んだのは中学生のときで全4巻の完全版で読みましたが、当時は晃とケンを男性キャラとして対等に読んでいたつもりだったし、そう思っていました。晃を好きかケンを好きかは単なる趣向の問題なのだと。
しかし大人になってみて表現の端々に目が行くようになると、ケンの扱いってやっぱり軽いんですよね… 会話がかみ合わなかったり、一緒に過ごすとたのしいんだけど決定的なロマンスが欠けていたり…。
こういう表現の差に意識の上では気づかずにいた中学生当時は「なんで翠はケンを選ばないんだろう…」と思っていた。でもサブリミナル効果のように表現上の晃とケンの差が読者心理にもしずかに確実に浸透していて、無意識下では晃とケンのキャラクター上の格の違いをやっぱり理解していたのではないでしょうか。自分は晃には釣り合わないと卑下する気持ちが少しでもある少女たちはケンを理解し、かっこいいものや美的なものが好きで自信をもっている少女たちは晃を追ったのではないでしょうか。。。

っていうのはちょっと拡大解釈しすぎかもしれません。

とにかくこの当時のりぼんはオタクっぽさが皆無でした。
オタクは自分の読みたいように読むじゃないですか。。自分の好きなキャラだけ追って。その見方に慣れきっていたためにこのりぼんっ子たちの普通の読み方(=主人公目線で読む)が逆に新鮮で、そうなのか…と衝撃でした。
たしかに自分もりぼんから花とゆめに移行した頃の体感として、白泉社勢のほうがオタク度高かったように思った気がする。。


【単体】の「事故起こした人」っていうのはイギリスで晃に車ぶつけそうになった女の人です。その後将志の行き先の手がかりを教えてくれます。
「ラビ」は司祭とかじゃないです。インドで晃がお世話になる少年です。っていうかラビのイラスト投稿するとか渋すぎ〜

将志のイラストが多いのはちょっとおもしろかったです。
大人の男性キャラを描く楽しさって少女たちの間ではかなり通好みだと思うのです。

文太も多いです。
イラスト投稿あるあるですが、矢沢あいは絵がうまいので読者としては真似して描くのが大変な作家さんなのです。だからギャグタッチの場面を描いたイラスト投稿もそこそこ多かったです。ギャグタッチの絵は描きやすいし、文太も描きやすいのです。

あきらかにトレースしたイラストも編集部は不採用にしていた可能性があります。めちゃくちゃうまいイラストはあんまりなかったからです。
りぼん編集部はしっかりしてるな~と思いました。

イラストに描かれた場面もなかなか良い場面をみんなチョイスしていたんですよね…
たとえば↑では翠と晃のペアとして同じくくりにカウントされてますが、表紙絵の仲睦まじい翠と晃を描く人もいれば、空港で翠を置き去りにした晃や、翠と晃のシビアなすれ違い場面などなかなか「重っ!」な場面をチョイスする人もいて、
なんていうんですかね、その場面が幸福そうかどうかにかかわらず、きっとイラストを描いた子はその場面が心に強く残っていて、描きたいとつよく思ったんだなあ…としみじみ思いました。
マミリンも本編にいい場面がたくさんあるキャラなので、たとえば翠のネックレスを見つけた次の号ではその場面が投稿されたりして感動的でした。。


ちなみにですが、ほんとうは「天ない」連載当時の本誌を読んで、手っ取り早くキャラ人気投票結果を調べるつもりだったんです。でも90年代にはキャラ人気投票という概念がまだなかったようで、全然開催されている気配がなかったんですよね。※本誌しか確認できていないため、コミックスの企画に人気投票があったかどうかは未確認です。

キャラの人気投票がおこなわれたり、バレンタインにあわせてキャラ宛のチョコレートが編集部に届いたり・・・漫画人気と並行してキャラ人気が沸騰していくのは冷静に考えれば00年代以降のことだったかも。
キャラを「推す」文化に慣れきっていたせいか、当時キャラ人気投票が公式に存在しなかったというのは盲点でした。。


今回は↑を調べるだけで開館時間のほとんどを使ってしまい、コミックスまで調べられませんでした!(たまにコミックスのおまけページで読者からのお便りをもとに人気投票している漫画があるので。。)

今度「天ない」コミックスも調べてみて、何かわかったら付けたそうと思います!


🌻おまけ
↑の調べものをするために1991年~1994年のりぼんを(ちなみにリアタイはしていない)読んでいて、いろいろとおもしろい発見があってよかったのですが、いちばん驚いたのは

「へそで茶をわかす」の茶畑るりが、13歳、投稿時から「へそで茶をわかす」を描いていたこと…!!!

「へそで茶をわかす」はりぼんの長期連載ギャグ漫画ですが、13歳の時から描いてたの?!っていうか投稿作も「へそ茶」だったんだ!

編集部の評価は絶賛で、ネタのセンスがいいし、何より4コマの本数が30本と多いのがすごくよかったんだそうです。わたしもいつか4コマ作品をどこかの媒体に投稿する必要がでたら本数だけはたくさん描こう…(?)
課題は画力だけど作品をたくさん描くうちにうまくなるであろうと激励されていました。


あとは、高須賀由枝が漫画投稿欄でシーズンベスト賞をとっていました。
そして一条ゆかりがりぼんに連載していたことに驚き…「女ともだち」を最終話のひとつまえと最終話をふつうに読んでしまったために時間が足りなくなったんだろうな…と思います。

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