「6月4日 月曜日」里中満智子

東京都あきる野市にある少女まんが館へ訪問した際に読んだ漫画の感想をすこしずつあげていきます!
記憶や印象で書いているためちょっとあやふやです。。


🌼「6月4日 月曜日」里中満智子(1975)

収録作品:6月4日 月曜日、ママの子もり歌

「6月4日 月曜日」は余命一年の病となってしまった少女が、風船売りのおじいさんなどと交流し自分に残された時間に向き合う話。

冒頭、主人公の少女が朝少し早く目覚め布団の中でのんびりと考えを巡らせる場面から始まるのですが、物語の書き出しなのにこんなにゆったり始まっていいんだ!このスローさが画期的!と思いました。しかもこういううだうだする時間あるよねーとなんだかリアリティがあって好きでした。

そのお布団の中の幸福な時間に、居間でこそこそ話す両親に気づいてしまい…その話の内容から自分の病のことを知るのです。

少女漫画なのに、と言ったらあれですが、年齢や立場の近い友人たちではなく公園の風船売りのおじさんと会話するなかで自分の病気と残された時間への考え方を変えていくところが印象的です。。
しかも通りがかりの大人の女性の身の上話も聞き、『死による別れがおとずれようとも、きっと亡くなった人だって残された人に幸せにいきていてほしいはず』という考え方に出会うんですよね…

里中満智子先生は2022年5月の日経新聞「私の履歴書」で連載をされて、そのエッセイの中で先生は 涙を流す女の子ではなく問題に対して考えていく姿を描きたかった といったことを書かれていましたが、この漫画を読んでこういうことか!と思いました。

ラストは、ここで終わりか…!とすこし寂しく、せっかくいろいろ気持ちを整理していたのでそのあとも見届けたかったけど、残り時間は1年だったかもしれないし1年じゃなかったかもしれない。穏やかな時間を過ごせたかもしれないし、なにか突発的なトラブルが起こってあわただしい残り時間を過ごしたかもしれない。それは時間が経ってみないとわからないものですよね。
そしてどんなふうに過ごしたってきっと彼女はやっぱり寂しかったかもしれないし、この話のなかで描かれているように美しく終われなかったかもしれません。
でもこの話が切り取った時間の中で彼女が彼女なりに考えたことが大切なんだな、と思いました。。号泣。

主人公の女の子が余命を知って、大学生になりたかった…こんな職業に就いてみたかった…と思いを巡らす場面の女の子のファッションや髪型がすごくかわいかった!!
この主人公の女の子の普段の髪型も、ふんわりしたボブでかわいい♡ 真似したい…


「ママの子もり歌」もいい話でしたーーー(´;ω;`)
こちらは小さいうちからシングルマザーの母と離れ離れに暮らしていた女の子が高校生になってようやく母と東京で暮らせるようになる、という話。

お母さんはながらく娘を兄弟に預け、自分は東京で働いて仕送りをしていたのでした。
お話は主人公の女の子が母と暮らすことへの期待と不安をこめた作文を発表する場面から始まります。親孝行とはどういうものかわからない…、親子で暮らすとはどういうものなのか想像して思いを巡らすだけである…、でもいってらっしゃいやおかえりを言い合える暮らしとはきっと良いものだろう…というような感じの作文で、この、ここにこめられた母への思いや生活へのあこがれがあとからじわじわ効いてくるんですよね……うおー(TロT)

いろいろ割愛しますが←
お母さんターンも泣けた…!
東京のお母さんの暮らしぶりが良いので水商売で出稼ぎしていたんだなというのはわかるのですが、その事情を娘が受け入れてくれた時
 そうよね、どんな仕事だろうと一生懸命働いていれば同じよね
 お母さんはお母さんのままでいいのよね
 ああ、ほっとしたら眠くなっちゃったわ
というようなことをお母さんが言うのです。お母さん…

お母さんは苦労したのでお金に困らない生活こそが幸せだと思っていて、それを娘にも同じように幸せだと思ってほしいのです。
でも娘は贅沢なくらしなどしなくていいので、ご飯を一緒に食べ、生活をともにする母との暮らしを望んでいたのです。

たしかに、とくに今の時代に読むと主人公が母に求める母親像は画一的すぎないか?とも思えるんですよね。いつも家にいてほしい、あたたかいご飯を作ってほしい、…など。でもそれを疑問に思う読者って当時いたのかなあと思えるくらいこの主人公の女の子の母親観って当たり前のものだったのではと思います。
それなのにこのお話のなかで主人公はちゃんと、『自分の望みをお母さんに押し付けすぎているのかもしれない』と気づくのです…!!やっぱりきちんと作られたお話って、時代を超える……!(自論)

母娘のあいだをとりもつ父(お母さんは娘に「死別した」と伝えていたが実は離婚しており健在だった)の言葉を引用します。

おまえののぞんでいるしあわせと
ママののぞんでいるしあわせのかたちがちがうからって……
理解しあえないっていうのはかなしいことだよ

(「ママの子もり歌」より。ページ数控え忘れ。すみません)

ラストの母娘の姿にも号泣…
ありがとう…(お礼を言いたい気分)

里中満智子さん、初めて読んだのですがひとつひとつの場面から
先生はほんとうに愛情深い方なのだな…と感じました。
お気に入りだったのは「ママの子もり歌」で、学校から帰ってきた主人公が玄関にある、母の脱いだばかりの靴に手をあて温もりを感じる場面です。
母と対面する場面のほうをドラマチックに描くのが一般的かもしれませんが、母に実際に対面する前にこうして靴に残った温もりから母の存在を実感するなんて…なんて、情緒があるんだ…!と思い、泣けました。

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