「世界でいちばん大嫌い」1巻~13巻 日高万里

🌷「世界でいちばん大嫌い」1巻~13巻 日高万里

少女まんが館で久しぶりに一気読みしてきたのでその全巻分のざっくりとした感想。繰り返し読んできた漫画なので、懐かしさで悶絶!とかは無く、そういえばこんな話だったな~という感じでした。


「せかきら」は少女まんが館の中では新しめの漫画です。
「せかきら」を女ま館に寄贈した人はいつ頃「せかきら」を読んだのだろう?と気になって1巻の奥付の日付をみると、1998.3.25の第1刷でした。もしかして連載リアタイ世代で、コミックスを同時進行で買ってた人だったのかなー。ちょっと年齢が近い気がするし、知らない人ですが勝手に親近感を覚えました。


「世界でいちばん大嫌い」のすごいところは、
・連載序盤で主人公が髪型をセミロングからショートに変えるところ!
・連載中主人公の髪が伸びるのがわかるとこ!!
こまかい!

私は「せかきら」を7巻くらいから読み始めたので、回想シーンにでてくる昔の万葉の髪が長くって驚いたものでした。。
ほかにも、少し伸びた髪、切りたての髪、の描き分けを作者がしている。ちなみにこれに近い漫画表現だと私が勝手に思っているのが、すっぴんとフルメイクの描き分けです。矢沢あいといくえみ綾がこれを得意とします。(私調べ)


私にとって「せかきら」で地味に印象深かったのが、進路の話です…
万葉は6人兄弟の一番上なので高卒で就職することを彼女は最初から決めており、進路といっても就職先の話。
平たく言うと万葉は美容師を目指すかモデルの仕事を始めるかを連載終盤で悩むのです。連載を読んでいた頃の単純な私は万葉がなぜ迷ったり悩んだりするのか分からなくて、「美容師なりたいならなればいいじゃん」と思ってました。。

万葉がショックを受けた杉本の言葉↓

万葉ちゃんには
色々な可能性があるのよねぇ

「世界でいちばん大嫌い」12巻 p181

この言葉をなんで万葉がそこまで気にするのかもよく分かりませんでした。
読み直してみると、「杉本は万葉が美容師になりたいのを知っているはずなのになぜ支持してくれないのか。なぜモデルなど『他の道』を示唆するのか」というのが論点だったみたいなんですけど、当時の私にとっては「なんで美容師になるのに杉本の支持が必要なんだろ?」みたいな点がよく分かりませんでした。
でも今はだいぶ理解できるようになりました。たしかにそうだよね…反対する理由がないはずなのになぜ積極的に支持しないのか、ってことに、あれ?って違和感を覚えるのと、あと美容師の道が万葉にとって未知数だからこそこういう言葉が気にかかるんだというのもの今はわかります。

モデルが云々というくだりですが、これも今の方が微妙な感じを読み取れる。
万葉はモデルの仕事をお試しでやってみたことがあるんですが、その際の周囲の評判がかなり良く、周りから「将来はモデルになるの?」とか「モデルにならないなんて勿体ない」と言われ始めるのです。
これも子供の頃の私は「万葉は美容師になりたいんだからモデルの素質があろうと関係ないだろう」と思って読んでたので、なぜ周囲からの言葉に万葉がもやもやするのかわからなかったんですが、今思うとたしかに「やりたい事」と「できる事」を天秤にかけたら、まだ社会に足を踏み出す前の状態じゃ「できる事」の現実的なうまみってすごく大きいよな…というのがやっと頭で理解できるようになりました。

↓悩みどころを分かりやすく整理した万葉の言葉

いいよね 杉本は
必要とされてる所がやりたい仕事で
私はどうしたらいいのか解らない
杉本はさ 私がモデルになった方がいいと思うの?

「世界でいちばん大嫌い」13巻 p64

この問題は結局、「誰かに道を決めてもらうのではなく自分の意思で決めるのが大事」という結論に落ち着きます。
ですが、この↑万葉のセリフも、大人になった今聞くほうが、「そ、そうだよねー…そう考えるよね」とリアルな実感がわく。
とはいえ今回「せかきら」を読み返すまで、向き不向きと実際にやりたいこととの相違について私はあんまり考えたことがなかったです。

人によるかもしれないけど、やりたいことじゃないと絶対できないと私は思う。私はここ1~2年で、出来もしないのになぜか「やりたい!」と強く思う事柄に出会ったんですけど、あの感覚は本当に不思議でした。誰もが一度は味わえるといいなと思います。「やりたい!」と思うことにはきっと理由があるんだと思います。出来る出来ないにかかわらず、自分がやるべきことなんだと思う。


他にも、バレンタインのエピソードの中で、「周りが皆バレンタインをやってるからって構えなくていい、周りに合わせなくていい」(ミハルちゃん)という言葉が出てきたりして、この漫画は「自分で決める」ということを大事にしてたんだなーと改めてしみじみ思いました。
が、この「自分で決める」という感覚が私には元々備わっている方だったので、子供の頃は「何を当たり前のことを」という感じであんまり感じ入りませんでしたが…。「自分で決める」ほどしっかりした子供では無かったけど、他人の意見がどうでもよかったんですよね。それは今もそうだけど…。

この進路の話も、たぶん作者が漫画家という進路を決めたときに色々考えたことや経験したことをもとに描いたものなんじゃないかなと今は思います。


ちなみに、「せかきら」13巻を読み終えて、ぱっと後ろの棚を振り返ると山岸凉子「舞姫 テレプシコーラ」単行本が入ってたんです。。
「ダ・ヴィンチ」で序盤だけ読んだので懐かしいなーと思ってぱらぱら読んだんですけど、千花ちゃんと六花ちゃんのお母さんが

踊りたい人がバレエを踊るのじゃなくて
選ばれた者のみが踊れるのがバレエなのよ

「舞姫 テレプシコーラ」1巻 p41

と言っていました。
そうだな………、それもそうだよな…
「せかきら」で得たものと正反対の真理をいきなり掴み取ってしまいましたが、手に取る漫画によっていろんな人生哲学が書いてあること自体、良い事じゃないか。

私は時々詩を書きますが、私の考えとしては詩は誰でも書けるものです。だから私も書いてるし。他人に対しても「詩は誰にでも書けるよ」って伝えると思います。でも、書けるなりに書いた詩と、誰にも書けない詩は、やっぱり違うなあ~…と思ってしまいますね。詩を全然書かない人でも、誰も持たない言葉を書く人もいるので、私はなるべくすべての人に詩を書いてほしい(だって書くことは誰にでも出来るのだから)と思いますが。詩は選ばれた者のみの芸術ではないけれど、誰にも書けない詩を書く人は詩を書いた時点で詩から選ばれてるのかもしれないです。



内容についての話を長く書きすぎてしまいましたが、なぜ「せかきら」のコミックス版を読みたかったかというと、柱や空きスペースの「日常天国」というおまけ漫画を読みたかったからです!
「日常天国」は日高万里先生とアシスタントさんたちの日常漫画が描かれています。文字だけのことも多いけど!

アシスタントさんたちは、クララちゃん(有田作郎さん)、純ちゃん、砂ちょ、杉野さん。10巻くらいからトモちゃんが加わります。
私は日常天国といえば純ちゃん!砂ちょ!って感じで、とくにこのふたりに馴染みがあります。

アシスタントさん紹介読んでて気づいたんですけど、↑にも書いたけどクララちゃんは有田作郎というペンネームで「花ゆめ」に漫画描いてました!絵も覚えてる!
復刊ドットコムみるとけっこうファンがいますね。
私、福寿草の話、覚えてる…。
復刊ドットコムに作品リスト載せてくれてる人…いや、神がいて、たぶん福寿草の話は「ちいさな福の物語」ですね!!
このリストをもとに、次回少女まんが館で読んでこようかな!
このリスト書いた人さあ、なんかの研究職とかじゃないよね。観点があんまりただの読者っぽくないし国会図書館と現代漫画図書館を駆使している。。


大地震が起きても自分は絶対死なないと言い張る砂ちょと日高万里先生の日常天国がおもしろかったのでよく覚えてるんだけど、今回なぜか見つけられなかった。
(そしてそんなおまけ漫画を懐かしく思い出していたら、現実に巨大地震警戒期間が始まるなんて…。)
子供の頃の私は純ちゃんに完全同意で、私は小さいころに阪神淡路大震災が起こった世代なので地震が怖くて、地震起きたら絶対死ぬ!って小さい頃から思ってたんですよね。なんで砂ちょとまるり(日高万里先生)は死なないって思えるのー?!と不思議だったが、大人になるにつれ私もいつの間にか「私は絶対に死なない」と思うようになっていた。。

あと「トーンを待つ女(砂ちょ)の図」(6巻)に笑ってしまった。

私が初めて本誌で「せかきら」を読んだのは7巻の、詠子さんとファッションショーの打ち合わせをする回でした。この回の扇子は無表情で無口なので、すっごいミステリアスな友人だと思ってましたーー

アシスタントの杉野さんも漫画家だったかもな、ちょっとメモし忘れてしまったけど、間違ってたらごめんなさい。



なんか、だらだらと長くなっちゃった。
おしまいです。

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