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青天を衝け第39回/『尽未来際』で再び蘇る平岡円四郎

そんな単純なものではない
これは『父よりよほどあなた様の生き方に憧れる』と言った
篤二くんに対して慶喜公が言った言葉。
戦から逃げ出し徳川幕府を潰した最後の将軍として
世間から冷たい視線を浴びせられていた徳川慶喜公。
日本をすべて捨てて逃げた
と思わず口にしてしまった篤二だけど
それに対しても同じく
そんな単純なものではない
と慶喜公は答えたかったんじゃないだろうか。

なぜ慶喜公が戦わない選択をしたのか?
という疑問が本来あって然るべきなのに
世間てやつは目に見えてわかりやすい事象からのみ
その時の感情の赴くまま安直に判断してしまいがち。
そこには熟考どころか思考の「し」の字も存在していない。
特に非難・批判がまず先に出てくる人たちは
何時の時代も同じ傾向にあるんじゃないかと思う。
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世の中の理はもちろん、人の想いも考えも単純じゃない。
いつも傍にいてその人がどんな理想を持ち
どんなことに悩み苦しみながら
何を夢見ていたか知らない人間が
どうしてその人の一大決心を読み解くことができるのだろう。
その真実は本人が語らない限りわからないのに。
そもそも将軍職はその時たった一人しかなれない日本のトップで
徳川家だって15人しか経験していない。
その責務の重さも決断の難しさも
間違いなく経験者にしかわからないはずだ。

だからこそ渋沢栄一は慶喜公に真実を語ってほしかったわけで。
誰よりも尊敬する慶喜公の名誉回復はもちろんだけど
批判をするのは勝手だがまずは真実を知ってからにしてくれ!
とでも世間に言いたかったんじゃないのかな
なんて思ったりしている。
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今回は栄一が倒れて瀕死の状態に。
わりと元気に91歳まで生きていたのかな?
なんて呑気に考えていたから
前回襲われた話も今回の病気の話もびっくりしっぱなし。

そして療養中の栄一の元へ慶喜公がお見舞いにやってきて
慶喜公の言った言葉がエモすぎた。
尽未来際生きてくれ、生きてくれたら何でも話そう。
こんなこと言われちゃったら死んだフリすらしてられない。
そりゃ栄一の体調もみるみる回復するに決まってるw

それにこの『尽未来際』という言葉は
第16回『恩人暗殺』にも使われた言葉だ。

第16回といえばそうです
平岡円四郎が暗殺された回。

この回では、栄一は一橋の兵を集めるため
喜作と共に関東へ出立しようとしていた。
そこへ平岡円四郎がやってきて妻・やすへの言伝を頼む。
俺が息災だと伝えてくれ。
何かおかしろくもねぇ時は掛け軸の小鳥にでも話しかけろってな。

そして
もとは武士じゃねぇってことも忘れんなよ。
無理に死ぬのを生業にするこたねぇってことさ。

なんてことを栄一に対して投げかけつつ
昔見かけた若造の思い出話に耽りながら
(これ当時初めて江戸を訪れた栄一なんだけど二人とも気づいてはいない)
おめえはおめえのまま生き抜け。必ずだ。いいな。
と栄一に生き続けることを誓わせた回でもある。

第16回は語りだしたら止まらないぐらいエモさ満点な回で
自分の中では最も悲しいけど最も好きな回。
今見返すと円四郎の一言一言にとても意味を感じて
更にストーリーに深みが増してくる。
だから忘れちゃった人は見直してほしい。必ずだw

ちなみに自分は何度か見返してるけど
その度に泣いてしまう……。
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で、話がちょっと横道に逸れたけど
尽未来際』の話に戻ろう。

尽未来際』は
慶喜公と平岡円四郎の最後の会話の中で使われたのが多分最初。

当時慶喜公は自己評価と周囲の評価のギャップに苦悩していて
過大な評価が原因で多くの人々の命運をも左右してしまっている
と平岡円四郎に吐露する。
そして『自分はただ謹厳実直に天子様や徳川を守りたいだけだ
という慶喜公に対して平岡円四郎は
過分に持て囃されることを嫌がる慶喜公を
東照大権現さまのご再来』とさらに持ち上げつつ
この平岡円四郎が尽未来際
どこまでもお供つかまつります。

という誓いの言葉で締めくくるのだ。
カッコよすぎである。
この時の感想回でもしっかりメモに残しているお気に入りのセリフの一つ。

作中ではこれが慶喜公と平岡円四郎の最後の会話。
その後暗殺され動かなくなってしまった平岡円四郎の姿を見て
慶喜公は
尽未来際と……申したではないか、尽未来際共に……
と嘆き悲しむ。
間違いなく目を濡らさずには見れない名シーンの一つ。

今回栄一が病に倒れて死が近いかもしれないという時に
慶喜公はきっと、いや間違いなく
この第16回の平岡円四郎の姿が頭を過ったはずだ。
平岡円四郎の最期の誓いの言葉と
彼の無念さを忘れられないからこその
尽未来際生きてくれ
だったんじゃないのかなぁ。
しかも栄一は平岡円四郎が連れてきたわけだしね。
慶喜公が栄一に話す言葉の一つ一つが
栄一と円四郎を重ねてるように感じたのは
自分だけじゃないだろうと思う。

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それにしても今回の慶喜公の言葉は
全部覚えて心に留めておきたいなと思ってしまうぐらい
エモさや重みがずっしり詰まっていた。
篤二くんへの返答も栄一を見舞った時のセリフも
幕末当時のことを語り始めたときのセリフも全て。
演じているのは現代の草彅剛さんだけど
あの場には確かに徳川慶喜公その人が存在していたような気がする。
YouTubeの草彅剛さんとはまったく違うもの(笑)
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『青天を衝け』もいよいよ残りあと2回になってしまった。

正直に言ってしまうと
『青天を衝け』にはまったく期待をしていなかった。
1ミリも期待していなかった。
当時特に興味の無かった明治時代以降が話のメインなのかな
という勘違いも相まって
『麒麟がくる』から『鎌倉殿の13人』の繋ぎ程度にしか思っていなかった。

ところがです。

『青天を衝け』は今まで見た大河ドラマの中で一番面白い!
(さほど多く見れてるわけでもないけど見た中では、ということで。)
幕末時代以降の見方を変えてくれた作品だし
最も尊敬する歴史上の人物を塗り替えた作品でもある。
これは頭が固い方の自分にとって画期的なことなのです。
あ、でもまだあと2回あるから
そういう話はまた今度にとっておいた方がいいか(笑)

そういえばちょこちょこ見てる大河ドラマ『徳川慶喜』だと
慶喜公も平岡円四郎もだいぶ雰囲気が違って
平岡円四郎はちっとも『おかしれぇ』感じじゃない(笑)
個人的にはやっぱり『青天を衝け』の二人の方が好きだなぁ。(了)

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【青天を衝け視聴メモ】
悲憤慷慨
慶喜公に会う渋沢喜作と尾高惇忠
まあ……そんな単純なものではない
国とはどんどん大きくならねばならぬもの?
ロシア北方領土へ
富国強兵の強兵ばかりに
日露戦争始まる
父上は戦争の時に限って病になる
伊藤さんや井上さんに韓国の経営について助言したい
『僕も逃げたい』
『まだ死なぬ方が良いであろう』
尽未来際
『生きてくれたら何でも話そう』
東郷平八郎、バルチック艦隊撃破
日露講和条約、通称ポーツマス条約、小村寿太郎
人は誰が何を言おうと戦争をしたくなれば必ずするのだ
ひとたび敵と思えば憎み残酷にもなれる
光を消して余生を送ってきた
人には生まれついての役割がある
隠遁は最後の私の役割だったのかもしれない
私の道とは何だ?
今の日本は心のハリボテだ
実業界を引退する栄一
渋沢喜作、大勝神社、白金

【公式がつぶやく【#青天ナビ】からの抜粋】



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