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さよならは言わない

私は小さな蕾をつけた。
いつ花開くか分からない、咲けるかどうかも分からない、草木の足元に小さく埋もれた名も無き蕾だ。

隣に咲く花を、早々と咲き誇っていく'仲間”を羨みながら、穏やかな季節に吹きつける”季節外れの風“に幾度となく耐えてみたりした。

いつか咲くんだと。
花開いてみせるんだと自己に言い聞かせながら。
むしろそれしかしてこなかった。
いつかの日を夢みながら、過去を肯定するために今を生きる。過去現在未来、区分訳はそんなもんだ。

明日のことは気にしない。

とは言えない。気にはするさ。過去の私が報われて欲しいから。でも今が楽しいが一番だ。運命という言葉に揺られながら過ごす今が一番だ。

分かってもらえるだろうか。

散り際に後ろ髪を引く桜のように、朽ちていく際にさえ心を掴んで離さない彼岸花のように。

私らしくいつか、花開ければそれでいいと。

散り際にさよならは言わない。
嫌いなんだ。
さよならは片道切符だから。
同じ速度で歩けない人生でも、道を違える日が来るとしても。

さよならだけは言わない。
言えるわけが無い。
ホントは別れたく無いのだから。
(2022/04/26)

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