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【roots2】 《11章》目を覚ませ!・2

オスカーとシャーロットはアリソンと畑仕事をこなしていた。
体を動かしていると力が湧いて来るような気がした。アリソンはそんな懸命な2人の姿を心配しながらただ黙って何も聞かずに働かせてくれていた。
家族の皆も温かかった。
オスカーはたまに空を見上げてしばらくジッとする事がある。オースティンを思っているんだなとシャーロットは切なくなった。

1カ月ほど経った頃、夕飯を済ますとオスカーが「オースティンは大丈夫かな?」と初めて口に出した。シャーロットが優しく小さく微笑むと
「今まで、口に出したら悪い事が起きるような気がして…」とオスカーが言った。
「オーウェンが助けてくれているわ。大丈夫よ」
「家が…燃えたって言ってたね」
「誰も居なかったからって。オーウェンを信じて」とシャーロットが言うとオスカーは遠い空を見たまま「本当に戻れる所が失くなったって事だよね」と言った。シャーロットは力を込めて
「オスカー!」と叱った。
「父さんの言葉を忘れたの?また一緒に暮らそうって言ってくれたじゃないの!家だって、父さんが建てた家よ。あなたが建てた家じゃない!違う?どこにいたって家族だって言ってくれたじゃないの…」最後は涙が堪えきれなかった。私ではダメなのかとシャーロットは悲しくてたまらなかった。
「ごめん…疲れて…つい」オスカーは小さくなった。
「負けないでオスカー。どうしてここにいるのかわかってる?」
「…そうだった。また皆んなで暮らすために来たんだ。家も畑も…オースティンも奪われて…シャーロットまで失ったら僕は本当に何も無い…」
「オスカー!しっかり私を見て。あの日私を抱えて走ってくれたここで。こうしてまたあなたと頑張れて。私はここでの生活を楽しいと思ってる。」シャーロットの強い瞳が久しぶりにあの日の白猫を思い出させた。
「シャーロット。僕は弱くて。自分の事しか見えなくなって…情け無いよ。君を気遣ってやる事も出来なくて…まるで。あの日のままだね。自分を探して旅している途中だ。40も近いって言うのに。僕はシャーロットとオースティンがいてくれないと…本当にダメだな」
オスカーがせめてもとシャーロットの涙を拭こうと手を伸ばすとコンコンとドアをノックされた。
シャーロットの涙をそっと拭いて
「はい、どちらさま?」とオスカーがドアを開けるとオースティンが笑顔で立っていた。
「相変わらず自分の良い所が見えないんだな」とオースティンが言うとオスカーは思い切り抱きしめてワァワァ声を上げて泣いた。

「シャーロット一人で大変だったろう。僕が騙されたばっかりに…本当にすまない!」とオースティンが頭を下げた。
「どうして僕にじゃないんだ」とオスカーが言うと「シャーロットがいなかったらどうなってる?支えてもらってる事にも気付けないほど下を向いてたんだろ?」とオースティンはオスカーを叱った。
「そうだ…今その話をしてたんだ。独りよがりで悲しませてたって」
「だろ?2人でシャーロット孝行しような」
一気に明るさが飛び込んで来てホッとさせてくれた。

「この1カ月、オーウェンとデイブとルビーと4人で過ごして三人の絆に感動したよ」とオースティンが言うと「2人は元気?状況はどう?」とシャーロットが心配そうにした。
「これはデイブさんから」「こっちはルビーさん」2人にそれぞれ2通の手紙を渡した。
2人はしばらく嬉しそうに眺めた。
オスカーへの手紙には負けないための愛の言葉が、シャーロットへの手紙には感謝の言葉が溢れていた。
2人は涙を流して読み手紙を胸に抱いた。
言葉から温度が伝わって体に染み込んでゆくようだった。
「さぁ、手を出して!」とオースティンが言うと三人で手を重ねた。
「ここで三人で頑張って。父さんたちの助けになろう!安全に暮らせる場所を作って迎えられるように頑張ろう!!」「オー!!」
高く手を掲げた。
「ありがとうオースティン」シャーロットは肩の力が少し抜けて、やっとホッとした。
家を出てから2カ月。張り詰め通しの毎日が終わった。

to be continue…
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自分は愛されて育ったという確信が持てないとすぐに孤独感に飲み込まれる。
わかるよ、オスカー😢頑張れ!
📙☕️

毎週水曜日更新📙✨

ワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀
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