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【roots2】 《10章》逃げろ・2

オスカーはデイブに連絡する電話番号を知らなかった。オーウェンの新聞社に電話をかけた。
「もしもし!オーウェン?僕だよ。オスカー」
「オスカー!どうしてる?どこにいる?」
オーウェンが心配していてくれた。オスカーはそれだけで胸が詰まったが、すぐにたずねた。
「家、い、家が燃えたって?」
「誰に聞いた?」
「チェイスが現れて」
「大丈夫か?」オーウェンが前のめりになったのが判る。オスカーは心配かけないようにと深呼吸をして出来るだけ冷静に話した。
「うん。すぐに居なくなったから…それより、ミアって人の骨が出たの?」
「違う。大丈夫だよ。チェイスの話は嘘ばっかりだ。」ミアじゃない。なら本当にオースティン…?
「でも、オースティンと入れ替わってたかもしれない。オースティンが燃えたって…」
「嘘だよ。大丈夫。骨は人じゃない。竜の骨だ。」
「竜?現代に⁈」
オスカーは驚きと安堵で言葉が止まった。
「チェイスがどっかから連れて来たんだろうな。」
「オーウェン、オースティンを探して…助けてやって」
「わかった。すぐに探すよ。オスカー、今どこにいるんだ?」
「アリソンの家で、電話を借りてる。逃げてきたんだ」
「そうか。良かった…頑張ったな。シャーロットの声を聞かせてくれよ」オーウェンが言うと電話を代わった。
「もしもし、オーウェン?」
「シャーロット!頑張ったな。手紙勇気がいったろ?ありがとうな。さすがオスカーの案内人だ。」オーウェンはシャーロットを労った。
「私は何も…」嬉しい言葉に喉に言葉が詰まって涙が出そうになった。
「シャーロットにしか出来ない事をしてるよ。男はこう言う時まるでダメだから。頼むよ」
「はい」そう答えるのが精一杯で涙を浮かべて受話器をオスカーに渡した。
「オーウェン、デイブとルビーは?」オスカーの心配そうな声にオーウェンは
「仲良くて困ってる」と笑った。
「良かった、元気なんだね。」
「あぁ、リリーも見つかったよ」
皆んなが元気にしていると聞いてオスカーの心は落ち着いてきた。
「良かった。僕も、頑張るよ」
「あぁ信じてる。またな」

オーウェンは電話を切ると自分の元の家に向かった。くまなく探して。まさか!と地下のあの扉を開けると手足を縛られたオースティンが倒れていた。1か月近くも閉じ込められていた事になる。
ただ、ここの時間経過は変動的だった事から命はなんとか保たれていた。
病院で入院させると言われたが、オーウェンは自宅でと申し出た。
「オースティンの介護は慣れてるんだ」と明るく言って張り切っている。
「守り番がいなくて2人は大丈夫なの?」とルビーは心配したけれどオーウェンが「シャーロットが賢いから大丈夫さ」と答えた。
「オースティンに火傷がないか体をよく見てね」
とデイブが言うとオーウェンは
「あの銃だよ。あそこでもうやられてたんだ」
とチェイスがつけた印について話した。
デイブの火傷と同じように、事前に印をつけるのがチェイスの手口なのか。
「じゃあ、明日サイラスに聞きに行ってくるよ」とデイブが言うと「頼むよ」とオーウェンは言って三階に降りて行った。
中庭から三階の電気が消えたのが判る。
付き添うためにすぐに寝室に入ったのだ。
「オーウェンの息子だもんな、守ってやらなくちゃ」デイブが下を見て呟くと
「明日私も一緒に行っても良い?」とルビーが言った。「もちろん!でも木を触らない方がいいと思うよ」とデイブが言うと、つまらなそうに「どうして?」と聞いた。
デイブはどうして?にびっくりして、
「だって、長生きの木の全てが見えたら大変な事じゃない!!」と身振り手振りでバタバタと大きな木を表して大真面目に言うデイブにルビーは思わず笑って「何日もかかりそう」とからかった。

次の日サイラスに会いに行った。
「こんにちは、また来ました」デイブの手が木の幹に触れるとザワザワと葉が揺れて声がした。
「やぁデイブ。今日は美人と一緒だね」
「彼女は僕の妻で、手で触れると…」
デイブが言いかけると「わかるよ。長くなるから彼女にも聞こえるようにしようか。2人手を繋いで」サイラスが汲んでくれた。
「ありがとうございます」デイブがルビーに片手を差し出すとルビーは良いの?と聞いてデイブの手を掴んだ。
「ルビーようこそ」サイラスの声がルビーにも聞こえた。
「初めまして!サイラス」

サイラスの葉がサワサワと揺れて低い声が聞こえてきた。
「またずいぶんと大変なことになってるね。厄介な奴に付き纏われてるんだな」
「そうなんです。怪しい力を使って、僕の人生を操りたいみたいなんです」
「うむ。まずはこの若者を助けたいな」
「はい」
「随分と長い魔術を使われているな」
「見えるの?」ルビーが弾んで聞くと
「君と同じ力があるからね」と微笑んだ。
「そうなのね。私も見るだけじゃなくてサイラスみたいに癒したいわ」
「美人に褒められたのは1000年ぶりかな?ありがとう」サイラスは照れくさそうな声になった。
デイブが嬉しそうにルビーを見るとルビーは高い高いサイラスの天辺を見上げていた。
「そうだ、この間の葉はどうした?」
「息子夫婦に送りました」
「ほう。息子さん」
「息子みたいに大切な子って事、ね」とルビーが言うと。「うん」とデイブが微笑んだ。
「仲が良いな。気持ちが良い」サイラスがものすごく嬉しそうに言ってくれて2人は嬉しくなった。
「葉っぱは役に立っているかな?」
「チェイスと離れられたから素晴らしい護符です」
「それは良かった。また持っていって。若者の銃跡に当てるんだ」
「印が無くなる?」
「多分ね。家の周りにも撒いて」
「はい」「身にもつけるんだ」
「はい」「また2人でおいで」
「サイラス、ありがとう。また来るね」

2人はポケットから袋を出していっぱいに拾って持って帰った。
デイブはすぐにオースティンに持って行きオーウェンに
「銃跡に当ててみて」と葉をたっぷりと渡した。
顔色悪くうずくまって眠るオースティンの足に葉をかぶせた。葉の隙間から光が放たれた。
光が収まって。オーウェンが葉をそっとどかすと銃跡は消えていた。
「デイブ!ありがとう!」オーウェンが喜びのあまり大きな声を出した。
「うぅっ」オースティンから声が漏れた。
「オースティン!!俺だぞ!わかるか⁉︎」
オーウェンが声を掛けると静かに目を覚ました。

to be continue…
*****

サイラス🌲本当にありがとう


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