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【roots2】 《10章》逃げろ

オスカーはまた移動していた。
でも、アリソンと会ったあの風車の風景とはほど遠い。ごみごみとした街のアパートの一室にいた。
オスカーには、もはや意志はなく。オースティンの言うままに移動して。毎日ただ小さな窓から、小さな空を眺めるだけだった。

シャーロットは自分の無力に嘆いていた。
2人の間に通っていたはずの確かなものも、もうわからなくなっていた。こんな時、ルビーならどうするだろう。とオスカーの横で小さな空を見上げて途方に暮れていた。
シャーロットは、夜中に起きてルビーに手紙を書き、誰にも見つからないようにこっそりとポストに投函した。
いつまでここにいるかめわからないけど、いる間にルビーからの言葉が聞けますようにと願いを込めた。

ディランがデイブの家のポストから手紙を持って来てくれた。
シャーロットの悲しみが伝わる手紙だった。何かがおかしい。心が囚われてしまうとチェイスに入り込まれやすくなってしまう。デイブはサイラスから貰った葉を封筒に入れた。ルビーがあのスープのレシピを書いていれて速達で返事を出した。

次の日、シャーロットの元にルビーたちからの手紙が届いた。デイブの葉をお守り袋に入れてオスカーの枕の下といつも着ている上着に縫い付けた。そして、夕食にあのスープを作って出した。
オスカーは一口食べてシャーロットを見た「これ…」シャーロットはオースティンに気づかれないようにうなづいた。
デイブからの手紙に、心を囚われないように。オースティンの様子がおかしければ2人で行動することと書いてあったからだ。

夜そっとオスカーに手紙を見せた。オスカーは少し心を取り戻した様子だった。
「シャーロットありがとう」
隣の部屋にいるオースティンに聞こえないよう声を抑えて話した。
「私は何も。してくれたのはあなたの父さんと母さんよ」と微笑んだ。
「いや、君が危険を覚悟して父さんに手紙を…」
オスカーはシャーロットの手を取り
「ここを出よう。僕は目を覚せなかった。いつまでも…いい歳をして…いじけて…」
「やっとまた会えた父さんだもの。寂しくて当然よ。わかるわ」
オスカーはシャーロットの変わらない優しさに自分の不甲斐なさにやっと目が覚めた。
「シャーロットがいてくれるのに。ごめんよ…悲しい思いをさせたね」
「私こそ、案内人の役目を果たせなくてごめんなさい」
2人はお互いの瞳をしっかりと見つめた。
いつぶりだろう。
「大変な思いをすると思うけど、いいかな?」
「そんなこと。気にしないわ」
「ありがとう。じゃあ、行こう。行ける時に行ける所まで」
その晩オスカーとシャーロットは手を繋いで寝た。上にデイブとルビーの手が重ねられている気がして力が湧いて来た。

次の日オースティンが出かけたらすぐに家を出て電車に乗った。
「行き着く所まで行こう」
3時間ほど揺られると景色が変わった。丘に風車が見えた。
「次、降りよう。アリソンの街だ」
見覚えのある丘を目指して歩くとあの林へやってきた。オスカーはシャーロットの手を取り繋ぐと
「チェイスが来るかもしれない」と手に力を込めた。
「よくわかったなぁ」チェイスだ。
「オースティンをどこにやった!?」
「どこって?」チェイスは2人の頭上をくるりと周った。
「いつからオースティンとすり替わってたんだ?」オスカーの言葉にチェイスは冷たく
「そんな事問題か?」と言った。
「僕はお前に用はない」とオスカーが強気に出るとチェイスは鼻で笑って「俺もないよぉ」といやらしく言った。
「じゃあ、俺たちに構うなよ!」
チェイスは腕を腰に当てて、空からオスカーに顔を近づけた。
「デイブがさぁ、お前んちが燃えちゃって〜中からミアが骨になって出てきたもんだから。泣いてないて大変だよ」
「え?家?」オスカーが動揺した。
「本当かどうかなんてわからないわ!」シャーロットが言った。オスカーは堪えて
「家はカラなんだし。ミアってなんだ。僕たちとはまるで関係ない!」
チェイスはオスカーの動揺ぶりをニヤニヤと見つめた後何かに気づいて後退りした。
「お前さぁ。変なもんつけてんな」と渋い顔をして「まぁいいや。家が燃えて出て来たのはオースティンもしれねぇな」と嫌味たらしく言った。
「うちに?オースティンが?」
「有り得ないわ、オスカー」シャーロットがピシャリと言うと
「お嬢さん。あんまりうるさいと火を着けるぞ!」とチェイスは怒鳴りつけケケケと笑って消えた。
オスカーは立ちすくみ考え込み出した。
「オスカー、確認すればすぐに嘘だとわかるわ。信じないで!!」とシャーロットが両腕を掴んでオスカーを見た。
「…そう、そうだね。行こう」
2人はとにかく歩いて風車の丘へ出た。
丘を降りると変わらないアリソンの家があった。

あれから20年ほど経っている。僕が判るだろうか。元気にしているだろうか…。心配しながら
オスカーは声を出した「ごめんください」
すぐに「どなた?」と元気にかけてくるアリソンが見えた。
「アリソン!僕は、オスカーです。20年ほど前にこちらに…」話す途中でアリソンから満面の笑顔が溢れて
「オスカー!おかえり!」と抱きしめてくれた。
「あの。電話を、、電話を借りても良いですか?」オスカーのただならぬ雰囲気に「入りなさい」と言って招き入れてくれた。

to be continue…
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オスカー行動してくれてよかったな🍀

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ワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀
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