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【roots2】 《8章》燃えたもの

数日後。
オスカーの家が燃やされた。全焼だった。
居ないと知って火をつけている。
何かメッセージみたいなものを残していないか
デイブはくまなく探していた。
「探しているのは俺か?」とあのまとわり付くいやらしい声がした。
サッと振り向くと男が立っていた。幻か。陽炎のように揺れている。
「チェイス」
「俺が証拠を残すとでも?」ニヤニヤ話す。
「そうだな」
「引越した後で良かったなぁ。ぜーんぶ燃えちゃって」嬉しそうに笑いが止まらないと言った様子。デイブは腹を立てるのも馬鹿馬鹿しく。
「何しに来た?」と冷静に聞いた。
「お前の泣きっ面を拝もうとさ」
「残念だな。泣きはしない」
「おやおや?そうかなぁ?泣くさ。覚えておけ」
ボッと炎になって一緒で消えた。

「泣く?」と言う事は、直接僕じゃない。誰だ?
誰に何をするんだ…。
デイブがテクテクと考えながら歩いて木の家に着くとオーウェンが顔色悪く待っていた。何事かと駆け寄ると
「デイブ…オスカーの家から焼けた…竜が」
「え?今さっきは何もな…い」まさか!!
「ミアが焼かれた?」デイブは全速力でオスカーの家へ戻った。オーウェンも続いた。
さっきと同じ焼けた土の上に。さっきは無かった。黒く大きな焼けた骨が竜の型をしていた。
「ミ…ミア。ミア!ミア!ミア!!」デイブはまだ煙の上がる焼け跡へ入って行き、膝をついて座り込み「なぜ!なんでだ!!」と叫び声を上げた。

家の少し離れた所にある焼け残ったポストの中に手紙が入っていた。

デイブへ
今回会いに来てくれなかったのはなぜですか?
私があなたをだましたから?
ルビーだと嘘をついたからですか?
ここの人たちはデイブといられるのに、
なぜ私は会えないの?
デイブ。私もこの家で過ごしたかった。
もう2度と会えない道を選ぶわ。
待つ苦しみはもうたくさん。
あなたが来てくれなかったから。
この家を燃やして。もうあなたと2度と会えない死を選びます。
私は忘れるけど。あなたは忘れないで。
決して忘れないで。
あなたと共にミア

自殺したのか?僕が会いに行かなかったせいで。
ヤケドの後、すぐにルビーに会いに行って。ミアを探すことをしなかった。でも、ディランもキツネも同じように探していなかったんだけど…。
デイブは真っ黒な頭蓋骨にそっと触れて涙を流した。

オーウェンは手紙を読んで「ミアが?そんな馬鹿な」と呟いた。
「ちゃんと埋めてやりたい」デイブはオーウェンから手紙を受け取るとポッケにしまった。
「そうだな。道具を取って来るよ。待ってて」
オーウェンが走って行った。
その姿を見送って、デイブはミアの上に体を寄せて泣き崩れた。「ミア、ミア…」可愛いらしいミアの姿が思い出された。
顔も体も真っ黒になりながら、オーウェンと2人で墓を作った。野に咲く小さな花をそなえて手を合わせた。

「デイブ歩けるか?」
「あぁ…帰らなくちゃ」
オーウェンが手を貸してなんとか立ち上がる。
「うちで風呂に入っていけよ」
「あぁ、ありがとう」
デイブは心を失っていた。
「洗ったか?」オーウェンの声がして我に帰った。浴室にいた。
「あ、ごめん。これから」と急いで答えると
「洗ってやろうか?」とやんちゃな声がした。
「いや、大丈夫。ありがとう」
デイブはサッパリと綺麗になって風呂から出て来た。オーウェンの泥だらけの顔を見て
「先にありがとう。入ってきて」と言って椅子に座った。正気に戻ったデイブを確認して、オーウェンも風呂に入った。
風呂から上がり部屋に戻るとデイブが見当たらない。急いで外に出るとデイブは森を眺めてボーッと佇んでいた。
「湯冷めするぞ」と声を掛けると
「あぁ」デイブは囚われ易くなっている。こういう時が一番危ない。急いで連れて帰らなければ。

「どうだった?家は?」ルビーは階段を降りながら質問してきた。デイブのあまりの様子を目にすると「ベッドへ」と案内した。
デイブをベッドに寝かせて布団を掛けると頭を撫でた。デイブは一言も発さず目をゆっくり閉じると涙を流した。オーウェンがドアの外へでて
「ルビー、ちょっと」と言った。
ルビーが静かにオーウェンの元へ行くとオーウェンは屈んで
「ミアが焼かれたんだ。あの家で。一瞬の事だと思う。墓を作って来たんだ。手紙があって…なんだか怪しい内容だった。デイブを惑わす作戦だと思う。ずっと側にいて。頼んだよ」と小声で伝えた。
「わかったわ。ありがとう」ルビーはドアを閉めてデイブと一緒にベッドに入った。
真っ直ぐに上を向いて涙を静かに流すデイブの髪を撫でると。涙の量が増えポロポロと粒だって流れ出した。ルビーはデイブの頭を自分の胸に抱きしめると、顔をルビーの胸に埋めて声を出さずに泣き続けた。
何時間か経ち、胸に抱かれたままデイブが「ルビー」とかすれた声を出した。
「なぁに」
「一歩も外に出ないで」強い口調で言った。
「わかったわ」
「ずっと僕と手を繋いでいるんだ」
「ずっと?無理よ。食事も…トイレもお風呂もあるのよ」と笑うと
「そんなのいいよ」
「あら?急に6歳?弱虫は大歓迎よ。デイブこそ私っ離れないでいられるの?」
「もう….何もしない」悲しそうに言った。
「約束よ。忘れないでね」ルビーがそう言うとデイブの背中が赤く光った。
「うっ」痛みに顔をゆがめた。
「何?どうしたの?」
「背中が…背中」息苦しい声をあげた。
「見せて…」ルビーが勇気を出して服をめくると背中中に血が滲んでいた。
「薬を塗りましょう。傷に擦れたのかな?」
ベッドサイドの薬箱から塗り薬をだして背中に塗った。
「喉が乾かない?取りにいきましょう」ルビーはデイブに鎮痛剤を飲ませるために水が欲しかった。デイブはうなづいてゆっくり立ち上がり寝室を出た。

to be continue…
*******

ショックだよね。
じわりじわりと追い詰められる…


毎週水曜日更新📙✨

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