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【roots2】 《20章》目じゃなくても見えるもの

ディランがルビーに「サイラスの所へ行かないか?」と誘ってくれた。ルビーは「デイブを1人にして行けないわ。ディランからよろしく伝えて」と言った。

ディランは1人サイラスの元へ行き、幹に手を当てた。「ディラン久しぶり」サイラスの低く優しい声が聞こえた。
「サイラス…大変な事になったよ」
「悪の契約は簡単に破棄できないからな」
「目は…不自由なままなのか?」
「少なくとも今は…」
「そうか…そうやってデイブを食い尽くしてゆくつもりじゃないだろうな」
「…わからないな。デイブが望んで目を差し出してる。次は耳、口と条件を出して来るかもしれない」
「どうにもしてやれないのか?」
「勝つ時が来たら…デイブが正義としてこぶしを振り上げてくれると良いんだけどな」
「勝つ時か…なかなか難しいな。頑固だからな」
ディランが肩を落とすと
「連れてきてくれたらな」とサイラスも心配して
くれた。「やってみる。外に出てくれたら連れてくるよ」そう言って森を後にした。

ディランは何の解決法も見つからないまま帰宅した事を申し訳なくルビーに伝えると「いいのよ」といつもの笑顔を返した。

ルビーはそばでデイブの世話が出来て喜んでいた。心を開いてくれた事だけでホッとしていた。
「ルビー」「はあい」声のする方へ飛んで行く。
「デイブどうしたの?」
寝室てデイブは着替えをしていた。
「わぁ!すごいわ。きちんとしてる!」
「そう?」デイブが嬉しそうに小さく微笑んだ。
「白いシャツに青いズボンよ。決まってるわ!」ルビーが加えて褒めると照れ臭そうに「良かった」と言った。
「あ、靴下がわからなくて」
「出してあげるわ、自分で履く?」
「うん、やってみるよ」
「じゃあ…何色がいい?」
「色か…靴下の色なんて今まで考えたことなかったな。色って素晴らしいね。じゃあ、白。白にするよ」白ねとルビーが探して渡した。
デイブは器用に履いた。
「出来た!散歩に行こうか?」とデイブが明るくルビーを誘った。ルビーは、こみ上げて来る物をぐっと抑えて「うん!行きましょう」とデイブの腕にしがみついた。

2人は森をゆっくりと歩いた。可愛いらしい鳥が鳴き日差しが柔らかだった。
「風が気持ち良いね」とデイブの髪が風に揺れた。癖毛で軽くパーマをかけているように柔らかくウェーブがかかり、長さはいつの間にか肩近くまで伸びていた。
「デイブは風に当たるのが好きだってものね」
ルビーが懐かしく答えるとデイブはうなづいて
「ルビーに謝らないと、と思って」と改って続けた。「意地悪く言って…辛く当たってごめんなさい」と頭を下げた。
ルビーは首を振ったが、デイブには見えないんだっけと気付いて。
両手でデイブの頬をギューっと挟んで「今回は許してあげましょう」と笑った。
デイブも両手を上げたのでルビーは自分の顔を挟ませてあげた。
「顔が小さいんだな。おっとごめん、目だね。痛くなかった?口だね。あ、笑ってる」デイブも笑顔になった。
「もしも、ルビーが辛くて閉じたくなったら言って」
「わかった。デイブも隠さず言ってね」
デイブはルビーの頭を撫でて「うん。一緒に行こう」と言った。ルビーは頭を大きく振ってうなづくとデイブが微笑んだ。
「疲れない?今日は帰りましょう」
とルビーが言ってデイブの腕を取ると体の向きを変えてゆっくりと家に戻った。

エレベーターで4階に着くと同時に
「散歩か?」オーウェンが上がって来た。
留守にしたので心配していた様子。
「うん。風が気持ち良かった」とデイブが無邪気に答えると「顔が明るい」ホッとしたように肩を叩いて、ソファーに座らせると、
いきなり「困ってないか?」と聞いた。
デイブは、きっと気を使わないようにするあまりに、直球過ぎる質問になったんだと感じて笑いながら「何もかもに困ってるよ」と答えた。
ルビーが「でも、自分で選んで着替えたのよ!素敵でしょ」と嬉しそうに口を挟むと
デイブはニッコリ笑って「楽しんでるんだ。大丈夫だよ」とオーウェンに言った。そうか、とうなづくと
「ルビーは?専門の人に頼もうか?」とルビーにも聞いた。「2人で良い方法を見つけながらやるから大丈夫よ」と明るく答えた。
「そうか、それもいいな」とオーウェンが言うと
「目じゃなくて見えるものがまだまだありそうなんだ。」
「さすがだな。考え方が清々しい。デイブだな」
オーウェンは自分が一晩悩み、頭を抱えていた事が吹っ切れてホッとした。息をフッと吐くとデイブが気付いて。
「次は助けてってちゃんと言うよ」と言った。
「待ってる」とデイブの頭に手置くと髪をクシャクシャっとして立ち上がった。
デイブは手をバタバタと振り回して「やり返せないのが悔しい〜」と笑うと
「俺はいつでもクシャクシャだ!」とワハハと笑って下に降りて行った。

to be continue…
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ただひたすらに前を向いて行く。
デイブの人として尊敬する所です🍀
続きは月曜日に📙☕️

ワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀
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