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【roots2】 《16章》生き残るのは

チェイスとデイブは薄暗い部屋の中にいた。
かなり広そうだが、全貌は見えない。
デイブの周りをスルスルと逃げ回る様に飛び続けるチェイスのケケケ…という高笑いと、諦めないで手を伸ばして掴もうと駆け回るデイブのハアハアとした苦しい息遣いが響き渡った。

デイブは両膝に両手をついて止まった。
「チェイス、なんで僕がすんなりついて来たかわからないのか?」
「すんなり?」
「よっぽどしたい話があるみたいだからさ」
チェイスはケケケと笑い
「悪の世界へようこそ」と言った。
「悪の世界って、何があるのよ」デイブは床にあぐらをかいて後ろに手をついた。息が苦しくてもうやってられないと言った感じ。
恐怖も怒りもどこかに置いて来ていた。
チェイスはデイブの意外な態度に苛立ちながら
「何でも手に入るのさ」と自慢げに言う。
「何でも?僕はもう何でも手に入っているからいらないよ。愛に友情に。お金も豊かさも知ってる」デイブがあっけらかんと答えた。チェイスはイラッとして
「嘘や裏切りにまみれた仲間たちをか?本心を知っているのか?」嫌味ったらしく言った。
「僕はね。ちゃんと人を選んで真心込めて付き合ってる。仲間は信じられるよ」手でパタパタと仰いで汗を拭った。
相手にならないデイブの様子にチェイスは「アイツら今頃ルビーをどうしてるかな?」といやらしく言った。
「チェイス。君は本当に発想が貧困だな。この世界で人を騙して生きているなんて一握りだ。大体の人が誠実に生きているんだよ」
デイブは後ろに付いていた手を前に戻して
「人を騙したり、人を殺したり傷つけたり…確かにニュースになるけど。僕とは遠い世界さ、期待してるのかもしれないけど、そこには絶対に踏み入れない」と言った。
「お前さっき俺を刺そうとしただろ!」
「オーウェンが止めるって知ってたさ」
「じゃあ、アイツを騙したんだな!」
嬉しそうに言った。
「こういうのはね、騙すって言わないんだよ。敵を欺くにはまず味方からって。智恵だよ智恵」
「いや、殺す目だった!」チェイスは息巻いたが
「まあね。怒ってたさ。でもはなから刺す気はないよ」と笑った。
「お前の大事なルビーが、どうなってもか?」
「ルビーを殺さないだろ?閉じれなくなる。髪を切ったのは腹が立ったけどさ、ルビーは切りたがっていたから気にしてないよ」デイブはふふんと言った調子でチェイスと全く噛み合わない。
「たださ、チェイスの目的がわからないよ。仲間に入りたいのか?」と言った。
「はぁ?」チェイスは明らかにだんだんと怒りが沸騰していた。
「僕はもう揺さぶれない。言っただろ?」デイブはもはや、この話にも関心が無いといった感じで足を前に投げ出した。
「1000年!1000年お前に入り込む日をずっと待ってたんだ。お前を少しずつ喰いながらな!付けた印も消えたと思ったら大間違いだ。心の芯ではわかってるだろ?だんだんと俺になって行ってるってな」ギリギリと歯を噛みながらチェイスが言う。
「そりゃあ、僕だって。いつまでも何も知らない純真無垢ではいられないよ。普通の大人なんだからさ」
「お前は普通じゃないはずだ。清らかの君。そうだろ?」またいやらしい口調が戻ってきた。
「僕を食い尽くしてどうするの?どうして僕なんかにしつこくつきまとうのさ。何も特別な物は持ってないよ」と呆れると
「お前は1000年経ってもまだ知らないんだな。アホが!」チェイスが覆い被さって来た。
デイブはチェイスの強く首をつかんでニヤッと笑った。
ケケケ…「俺にのまれ…」デイブはすかさずチェイスの口にサイラスの葉を入れ口を塞いだ。
もごもごと暴れてデイブの手を噛み
チェイスがボッと炎になって姿を消した。
「逃げるのか?僕は来てやったのに」デイブが言うとチェイスが部屋に火を放った。
「僕が死んだらお前も消える好都合だ」デイブは一歩も動かず部屋の真ん中であぐらをかいたまま炎を見つめていた。
突然部屋の電気がパパパパと付いてスプリンクラーが回った。炎は瞬く間に消えて焦げた匂いと煙が残った。煙の中でデイブほ立ち上がり
「だから言ったろ?僕は善悪を知っているんだ。君を殺して僕は死んでも良い。この意味不明な戦いをもう終わりにするためについて来たんだから」と言うとカランとマスクがどこからか落ちて来た。
「2度と会わないね。さよなら」
部屋のドアを閉めて廊下に出るとドアノブを蹴り落とした。

するとドアも落ちたドアノブも跡形もなく消えていった。
これで終わった…?

to be continue…
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チェイスがしつこい理由。
何かあるんだよね📙☕️

毎週水曜日更新📙✨

ワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀
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